データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 松永駐米大使・ベーカー国務長官往復書簡

[場所] 
[年月日] 1988年4月28日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,1159−1160頁.
[備考] 
[全文]

松永大使発ベーカー国務長官宛書簡

(4月28日付)

 FSX共同開発計画に関し,米国との照会に対して次のクラリフィケーションを行うこととしたい。

1.FSX開発計画が成功し生産段階に移行する場合は,FSXの生産が行われる前に,日・米間で生産段階のための了解覚書を含む取極が署名される。

2.上記の了解覚書が署名される場合には,生産段階における米国のワークシェアは,総生産額の約40%となろう。

3.FSX開発計画における技術移転に関し,

 (1)この計画における技術移転のための手続は,1988年11月29日に署名された取極により確立されていることが確認される。

 (2)日本側は,米側が入手することを希望する全ての技術を,既に合意された手続に従って,米側に移転する。

 (3)米側は,了解覚書で確立された手続並びにこの開発計画の過程における設計,試作機製作及び試験の各々の段階において参加を希望する米側人員の無償での参加を通じ,レーダー,電子戦装置(ECM),慣性基準装置及びミッション・コンピューター・ハードウェアを除く技術に対し十分なアクセスを有する。これら4つの技術は,上記(2)に従って,米側に移転される。

4.技術運営委員会をできる限り早期にかつ頻繁に開催する。

ベーカー国務長官発松永大使宛書簡

(4月28日付)

 米政府はFSX合意の検討を終了し,同合意は日米双方にとり最善のものであるとの結論を得た旨を貴使に確認することを喜ばしく思う。私は,我々が貴使書簡で提示されているクラリフィケーションを受け入れることを貴使に保証するとともに,日米間のFSX合意に象徴されている協調の精神に則り,我々の方からも一連のクラリフイケーションを提示することとしたい。

1.米国及び日本は,1988年11月の了解覚書の原則及び手続に従って,技術の双方向の交流につき固く決意している。この関連で,防衛庁は,日本がFSXの了解覚書の条件の下で,ミッション・コントロール・コンピューターを開発するために必要なソースコードに対するアクセスを受けることを保証される。

2.技術に対するアクセスに関して,米国は,了解覚書に規定される手続に基づき(貴使のクラリフィケーションの書簡の3.(3)に掲げられている)4つの技術に対し,十分なアクセスを有し,且つ,これを取得するオプションを有する。貴使のクラリフィケーションの書簡の3.(3)で掲げられている4つの技術のいかなるものについても,その開発にとって米国の技術の使用が本質的なものである場合には,了解覚書で確立された手続により決定されるところにより,本質的に開発されたものとみなされる。

 今回の書簡の往復において提示されたクラリフイケーションにより,我々は,米国内の要件に従い,米議会に対する通告を取り進めることとなろう。

 FSX計画の早期実施を期待するとともに,同計画が日米安保体制の目指すところの北西太平洋の平和と安全に対し重大な貢献をなすことを確信している。