データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中曽根内閣総理大臣のプレス・リマークス

[場所] ワシントン
[年月日] 1986年4月14日
[出典] 外交青書30号,449ー451頁.
[備考] 仮訳
[全文]

レーガン大統領と私は,週末をはさんだくつろいだ会談を行いました。

大統領と私は, 5月の東京サミットが,先進国,開発途上国を問わず世界の諸国民の将来についての明るい展望と自信を与えることになるよう協力することで意見の一致を見ました。また世界の平和と軍縮の推進,このための米ソ首脳会談の重要性と自由貿易推進のためのガット・新ラウンド交渉の促進が必要である旨再確認致しました。

大統領と私は両国の経済問題について率直な意見交換を行いました。

私は保護主義と断固闘っていくという大統領の強い決意を改めて伺い,私の確固とした支持を表明し,また,この共通の目的のため日本として果たすべき役割について話し合いました。

日本は自由貿易の原則を支持するものであります。私は大統領とこれまで日本市場アクセス改善のためにとられた措置について話し合うとともに,日本は引続きその目的に向かって努力するとの考えを伝えました。私と大統領は円とドルの為替レートにみられるこれまでの変化は日米の貿易関係の調整に貢献するであろうとの認識で一致しました。

私は大統領に対して,今後,日本は経常収支不均衡を国際的に調和のとれるよう着実に縮小させることを国民的目標として努力していく決意である旨表明いたしました。私はこのため日本が構造調整という画期的な施策に取り組み,日本経済を輸出ではなく,内需に依存し,輸入,とりわけ製品輸入が相当に増大することにつながるような経済構造に変えて行く必要があると考えています。先頃,私の私的諮問委員会がこの点に関し多くの貴重な提言を盛り込んだ報告書を作成しました。これらの提言を政策化して行くため,政府として近く作業計画を策定する推進本部を設置する予定でおります。構造調整はいずれの国にとっても容易なことではありません。しかし日本は歴史的転換をなさねばならず,私はこの試練を受けて立つ所存であります。大統領はこのアプローチを心から歓迎されました。

 同時に私は各国が構造調整を通じて自らのかかえる困難な課題の解決に取り組むことを希望します。各国の政府がより良き整合性をもつことこそが世界経済の活性化の鍵であります。大統領と私は構造問題に関し政府の高級レベルで二国間対話を行なうことが昨日合意されたことを歓迎しました。

私は,東西関係の安定と核兵器の大幅削減を目指す大統領の強い決意に敬意を払い,昨年の米ソ首脳会談により弾みを与えられた米ソ会談が今後着実に進展すること強く希望するものであります。大統領と私は,この問題に関して,自由主義諸国が引続き緊密な意思の疎通と強調を維持して行くことの重要性を再確認致しました。この関連で,私は,アジア地域に十分配慮しつつINFのグローバルな全廃を目指す大統領の努力を高く評価している旨表明いたしました。

 地域問題についての話合いで,大統領と私は,アキノ政権の下におけるフィリピンの発展と安定のための日米両国の一層の協力の必要性,及び中米等の諸国の安定,開発途上国の経済状況や累積債務問題について日米それぞれの貢献の必要性を確認致しました。

 私は大統領に対し,日米防衛関係がかつてない程良好な状況であることへの評価を表明すると共に,我が国としては,日米安保体制の信頼性を一層強化しつつ,我が国の自衛力の整備のための自主的な努力を更に進めて行く所存である旨申し述べました。大統領閣下,

 今回,新緑萌えるキャンプ・デーヴィッドに御招待頂き貴大統領と不動の友情を確認することができましたことを,心から感謝するものであります。私は,日米の協力関係は今日正に世界的な広がりと重要性を強めており,両国国民がおたがいを信頼しつつ各々の活力を生かし合って行けば,あらゆる障害を乗り越えて世界の諸国民の平和と繁栄に向かい多大の貢献をなし得るものと確信しております。