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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 自動車輸出自主規制継続問題,対米自動車輸出自主規制継続に関する村田通産相談話

[場所] 
[年月日] 1985年3月28日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,1054−1055頁.日刊自動車新聞,1985年3月29日.
[備考] 
[全文]

 一,通商産業省は,米国向け乗用車輸出について,米国自動車産業の再建努力を前提に自由貿易体制の維持・日米経済関係の一層の発展という大局的見地に立って,一九八一年度以降,一年間の経過的措置も含め四年間にわたる輸出自主規制措置を実施してきたところである。

 最近の状況をみると,米国自動車産業の業績は著しい改善を示しており,こうした状況を背景に,先般米国政府においても自由貿易の堅持を基本として日本側に現行規制措置の延長を要求しないとの決定に至ったことは周知のとおりである。

 私としても,自由貿易の原則の下に自動車貿易の分野においても基本的には市場原理が機能すべきものと考えており,四年間にわたる現行規制措置が関係者の努力とあいまって所期の目的を十分に達成し,本年三月をもって終了することを歓迎するものである。

 二,このような観点から,私はより自由な貿易の実現を通じ,有効な競争の増大,消費者利益の増進を図ることが重要であると認識するものであるが,他方,現行規制措置の終了直後においては,日本軍に対する需要が根強い中で米国向け乗用車輸出が急増し,米国自動車産業を巡る混乱を招くことが懸念される。このような事態が生ずることは,日米それぞれの経済において重要な地位を占め,また近年とみに相互の協力関係が進展しつつある両国自動車産業及び日米関係の長期的発展にとって,好ましくないことは明らかである。

 通商産業省としては,このような輸出急増の事態を回避しつつ,自由な貿易を実現するための過渡的措置として,わが国独自の判断に基づき,一九八五年度においては,節度ある米国向け乗用車輸出を確保するため,自動車企業各社に対し個別に慎重に輸出を行うよう指導することとする。

 三,現在,わが国は自由貿易強化のため,市場開放に全力を挙げて取り組んでいるところであるが,今回の決定はいささかも市場開放努力に影響を与えるものではない。私としては引き続き一層の市場開放のために最善の努力を傾ける所存である。

 (注) 各社に対する個別指導の方式は,過去四年間と同様の方式によることとする。本方式については米独禁法上,全く問題がないとの米国独禁当局の見解が確立されているものと理解している。