データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 福田赳夫内閣総理大臣とジミー・カーター米大統領との間の共同声明

[場所] ワシントン
[年月日] 1977年3月22日
[出典] 外交青書21号,82−84頁.
[備考] 
[全文]

1.福田総理大臣とカーター大統領は,3月21日及び22日の両日,ワシントンにおいて会談し,共通の関心を有する諸問題について包括的かつ充実した意見の交換を行つた。

  両者は,会議を通じ,日米両国政府の新しい首脳の間に自由かつ率直な対話と相互信頼の関係が築かれたことに満足の意を表した。両者は,両国政府が,共通の関心を有するすべての事項につき今後とも密接な連絡と協議を行うことに意見の一致を見た。

2.総理大臣と大統領は,日米両国が,先進工業民主主義国家として,それぞれの責任を認識しつつ,一層平和で繁栄した国際社会を実現するために努力するとの決意を表明した。この目的のために,両者は,先進工業民主主義諸国が,密接な協議を通じて,主要な経済問題に対して調和した立場を醸成することが緊要であることについて意見の一致をみた。さらに,両者は,政治体制,経済的発展段階を異にする諸国との対話と協調を維持し,発展させることが重要であることについて意見の一致をみた。

3.総理大臣と大統領は,日米両国の友好協力関係が,単に経済及び政治の交流のみならず,科学技術,医学,教育及び文化等両国民の生活のさまざまな分野で拡大を続けていることに満足の意をもつて留意した。両者は,これらのすべての分野について民間及び政府間双方における一層の協調を期待した。総理大臣と大統領は,民主主義の共通の価値観及び個人の自由と基本的人権の深い尊重に基礎を置く両国の提携関係を一層強化して行くとの共通の決意を確認した。

4.総理大臣と大統領は,諸国間の相互依存関係のゆえに,工業諸国が開発途上国を含む世界経済全体の必要を十分考慮しつつ,その経済運営に当ることが必要であるとの共通の認識を確認した。両者は,国際経済の安定的発展のためには,先進工業民主主義諸国の景気回復が不可欠であり,日米両国を含む経済規模の大きい諸国が,インフレの再発防止を図りつつ,それぞれの国の実情に見あつた形で,世界経済の浮揚に貢献して行くべきことに意見の一致をみた。両者は,両国政府が,この目的のために,引続き緊密に協議することに意見の一致をみた。

  両者は,世界経済の健全な発展のためには自由な世界貿易体制が緊要であることにつき意見の一致をみ,この関連において,多角的貿易交渉東京ラウンドの早期かつ重要な進展を図り,同交渉をできるだけ速やかに成功裡に妥結せしめるとの決意を表明した。

  両者は,日米両国を含む関係諸国が,南北関係において提起されている諸問題に建設的に取組む必要を再確認した。両者は,世界のエネルギー問題が引続き重大であることに留意し,エネルギーの節約並びに新規及び代替エネルギー源の開発のために,一層の措置をとることが重要であることを再確認した。両者は,国際エネルギー機関における消費国間の協力を強化する必要があること及び石油輸入国と産油国との間の協力を引続き促進する必要があることにつき意見の一致をみた。両者は,両国政府が,これらの諸問題に対する積極的な解決を見出し,促進するために引続き努力し,国際経済協力会議閣僚会議を成功裡に終了せしめるよう,努力することに意見の一致をみた。

  総理大臣と大統領は,主要国首脳会議が,5月にロンドンにおいて開催されることを歓迎した。両者は,同会議が,協調と連帯の精神に基づいて,世界経済が直面する諸問題についての建設的かつ創造的な意見交換の場となることへの期待を表明した。

5.総理大臣と大統領は,現下の国際情勢を検討し,アジア・太平洋地域における永続的平和の維持が,世界の平和と安全のために必要であるとの認識を再確認した。

  両者は,友好と信頼の絆で結ばれた日米両国の緊密な協調関係が,アジア・太平洋地域における安定した国際政治構造にとつて不可欠であることにつき意見の一致を見た。両者は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約は極東の平和と安全の維持に大きく寄与してきていることに留意し,同条約を堅持することが両国の長期的利益に資するものであるとの確信を表明した。

  大統領は,米国が,太平洋国家として,今後ともアジア・太平洋地域に強い関心をもち,同地域において積極的かつ建設的役割を引続き果すことを再確認した。大統領は,米国がその安全保障上の約束を遵守し,西太平洋において,均衡がとれ,かつ,柔軟な軍事的存在を維持する意向である旨付言した。総理大臣は,米国のかかる確認を歓迎し,日本がこの地域の安定と発展のため,経済開発を含む諸分野において,一層の貢献を行うとの意向を表明した。

  総理大臣と大統領は,東南アジア諸国連合の活動に注目し,自らの自主性と当該地域の強靭性を高めようとする同連合加盟諸国の努力を高く評価した。両者は,また,東南アジア諸国連合加盟国による地域的結束と発展への努力に対しては,両国が引続き協力と援助を行う用意があることを再確認した。

  両者は,インドシナ地域における事態に注目し,今後同地域が平和で安定した地域として発展して行くことが東南アジア全体の将来にとつて望ましいとの見解を表明した。

  総理大臣と大統領は,日本及び東アジア全体の安全のために,朝鮮半島における平和と安定の維持が引続き重要であることに留意した。両者は,朝鮮半島における緊張を緩和するため,引続き努力することが望ましいことにつき意見の一致をみるとともに,南北間の対話の速やかな再開を強く希望した。大統領は,米国の意図する在韓米地上軍の撤退に関連して,米国が韓国とまた日本とも協議の後に同半島の平和を損わないような仕方でこれを進めて行くこととなろう旨述べた。大統領は,米国が韓国の防衛についての約束を引続き守ることを確認した。

6.総理大臣と大統領は,最も緊急な課題である核軍縮への第一歩として,あらゆる環境における核実験が早急に禁止されなければならないことを強調した。通常兵器の国際的移転につき,両者は,国際社会により,かかる移転を抑制する措置が緊急の課題として検討されるべきことを強調した。また,大統領は,核拡散防止に関連して,日本が昨年核兵器不拡散条約を批准したことを歓迎した。

7.総理大臣と大統領は,今日の世界において国際連合が果たしている重要な役割を認識し,同機構を強化するために日米両国が協力すべきことに意見の一致をみた。これに関連して,大統領は,日本が国際連合安全保障理事会の常任理事国となる資格を十分充たしているとの信念を表明し,かつ,この目的に対する米国の支持を言明した。総理大臣は,大統領のこの発言に謝意を表明した。

8.総理大臣と大統領は,原子力の平和利用が核拡散につながるべきではないことを再確認した。これに関連して,大統領は,一層効果的な核拡散防止体制を支援するような米国の政策を策定する決意を表明した。総理大臣は,核不拡散条約の締約国であり,かつ輸入エネルギーに大幅に依存する高度な工業国である日本にとつてその原子力開発利用計画の実現に向つて進むことが緊要である旨述べた。大統領は,米国の新原子力政策の立案に関連して,エネルギーの必要に関する日本の立場に対して十分考慮を払うことに同意した。総理大臣と大統領は,日本の関心にかない,かつ一層効果的な核拡散防止体制に寄与するような実効的政策を策定するために日米両国が緊密な協力を行うことが必要であることにつき意見の一致をみた。

9.総理大臣と大統領は,両国間の貿易,漁業及び航空問題を討議した。両者は,日米両国間で懸案となつている事項につき相互に受け入れうる公正な解決がえられるよう,両国政府間で今後とも緊密な協議と協力を行うことが重要であることに意見の一致をみた。

10.総理大臣は,カーター大統領夫妻の訪日に関する日本国政府よりの招待を伝達した。大統領は,この招待を深甚なる謝意をもつて受諾するとともに,日米双方の都合の良い時期に訪日することを楽しみにしていると述べた。