データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米漁業協定および付属文書

[場所] ワシントン
[年月日] 1977年3月18日
[出典] 外交青書22号,348−353頁.887−890頁.「官報」52.11.29.
[備考] 
[全文]

1.アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は,

 合衆国の地先沖合における漁業資源の合理的な管理,保存及び最適利用に関する両政府の共通の関心を考慮し,

 海洋法に関して新たな国際的な発展が見られたことを確認し,

 合衆国が,その距岸200海里の内側に,同国がすべての魚類に対して漁業管理権を行使する漁業保存水域を設定したこと並びに合衆国が,同国に属する大陸棚{だなとルビ}の生物資源に対して及び同国起源の溯河{さくかとルビ}性魚種に対してその全回遊域を通じて漁業管理権を行使していることを認め,

 また,日本国が合衆国の地先沖合における公海の生物資源の合理的な管理及び保存に協力してきたこと並びに日本国の国民及び船舶が伝統的にこの資源の開発及び利用に従事してきたことを認め,

 相互に関心を有する漁業に関する妥当な条件を確立することを希望して,

 次のとおり協定した。

    第1条

 日本国政府及び合衆国政府は,合衆国の地先沖合における相互に関心を有する漁業資源の効果的な保存,最適利用及び合理的な管理を確保し,並びに合衆国が漁業管理権を行使する同国の地先沖合の生物資源の日本国の国民及び船舶による漁獲に関する原則及び手続についての共通の了解を確立することを約束する。

    第2条

 この協定において,

(1) 「漁業保存水域」とは,合衆国の領海に接続し,その外側の境界がいずれの点をとつても同国の領海の幅が測定される基線から200海里となるように引かれた線からなる水域をいう。

(2) 「合衆国の地先沖合の生物資源」とは,漁業保存水域内のすべての魚類,合衆国の淡水水域又は河口水域で産卵し,外洋水域に回遊するすべての溯河{さくかとルビ}性魚種(以下「合衆国起源の溯河{さくかとルビ}性魚種」といい,その回遊域のいずれの部分にあるかを問わない。)及び採捕に適した段階において海底面若しくはその下で静止しており又は絶えず海底に接触していなければ動くことができない合衆国に属する大陸棚{だなとルビ}の定着性の種族をいう。

(3) 「魚類」とは,ひれを有する魚類,軟体動物,甲殻{かくとルビ}類その他のすべての海産動植物(ただし,海産哺{ほとルビ}乳動物,鳥類及びその生活史の中で大洋の水域において広大な範囲にわたつて産卵しかつ回遊するまぐろ類を除く。)をいう。

(4) 「漁業資源」とは,保存及び管理のために単位として取り扱うことができ,かつ,地理的,科学的,技術的,リクリェーション上の及び経済的特性に基づき識別される1又は2以上の魚種をいう。

(5) 「漁業」とは,漁業資源の漁獲をいう。

(6) 「漁獲」とは,次の(A)から(D)までをいう。ただし,科学調査船によつて行われる科学調査活動その他の公海の合法的な使用は含まない。

 (A) 魚類を採捕すること。

 (B) 魚類を採捕しようと試みること。

 (C) 魚類を採捕する結果になると合理的に予想し得るその他の活動

 (D) (A)から(D)までに掲げる活動を直接に補助し又は準備するための海上における作業

(7) 「漁船」とは,次の(A)から(C)までのいずれかのために使用されているか,使用されるよう設備がされているか又は通常使用される種類の船舶その他の舟艇をいう。

 (A) 漁獲

 (B) 漁獲に関係する何らかの活動(準備,補給,貯蔵,冷蔵,輸送及び加工を含む。)をすること。

 (C) 海上において1又は2以上の船舶が(A)又は(B)の活動をすることを援助し又は補助すること。

(8) 「海産哺{ほとルビ}乳動物」とは,らつこ,海牛類,ひれ脚類及びくじら類を含む海洋の環境に形態学上適応している哺{ほとルビ}乳動物並びに北極ぐまのように主として海洋の環境に生息する哺{ほとルビ}乳動物をいう。

    第3条

 日本国政府及び合衆国政府は,この協定の実施,次条の規定に従つて合衆国政府が行う決定及び相互に関心を有する漁業の分野における協力の発展(相互に関心を有する漁業に関する科学的資料の収集及び分析のための適当な多数国間機構の設立を含む。)に関し,定期的に両政府間で協議を行う。

    第4条

1 合衆国政府は,合衆国の地先沖合の生産資源に関し,適当な場合には前条に規定する日本国政府との協議を考慮に入れ,魚種に影響する予見されなかつた事情により必要となる調整を行うことがあることを条件とし,毎年,次のことを決定する。

 (A) 入手可能な最良の科学的証拠を基礎として,かつ,資源の最適生産を継続的に達成するため,魚種の相互依存関係,国際的に受け入れられている基準及びその他のすべての関連要素を考慮して決定される各漁業資源についての総漁獲可能量

 (B) 各漁業資源の総漁獲可能量のうち,各年について,合衆国の漁船によつて収穫されず日本国の漁船による収穫に供される部分

 (C) 過度の漁獲を防止するために必要な措置

2 合衆国政府は,1の決定を時宜を失することなく日本国政府に通知する。

    第5条

 前条1(B)の規定に従つて日本国の漁船による収穫に供される部分を決定するに当たり,合衆国政府は,最適利用を促進し,かつ,特に,日本国の国民及び船舶による伝統的漁獲,漁業調査及び魚種の識別に対する日本の貢献,取締りにおける並びに相互に関心を有する漁業資源の保存及び管理に関する日本国の従来からの協力,並びに日本国の漁船が合衆国の地先沖合の生物資源を常習的に漁獲してきた場合にあつては経済的混乱を最小にする必要性を考慮に入れる。

    第6条

 日本国政府及び合衆国政府は,合衆国起源の溯河{さくかとルビ}性魚種が,その回遊域内の一部の水域で他国起源の溯河{さくかとルビ}性魚魚種と混交している事実にかんがみ,当該水域における溯河{さくかとルビ}性魚種についての必要な保存措置に関して協議を行う。

    第7条

 日本国政府は,次のことを確保するため,すべての必要な措置をとる。

 (A) 日本国の国民及び船舶が,この協定に従つて認められる場合を除くほか,合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲を差し控えること。

 (B) この協定に基づいて漁獲に従事するすべての漁船が,この協定に基づいて定められる条件に従うこと。

 (C) いかなる漁業についても,第4条1(B)にいう部分を越えないこと。

    第8条

1 日本国政府は,合衆国政府に対し,この協定の不可分の一部をなすこの協定の附属書Iの規定に従い,合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に従事することを希望する日本国の各漁船の識別及び操業に関する情報を提供する。

2 合衆国政府は,1の情報を受領したときは,日本国の漁船がこの協定の規定に従つて合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に従事することを可能にするため,合衆国の関係法律に基づく許可証の発給を含む必要な行政上の措置をとる。この措置は,この協定の実施を容易にし並びに合衆国の地先沖合の生物資源の保存及び管理を確保するための妥当な料金の支払の要求を含むことができる。

    第9条

 日本国政府は,日本国の国民及び船舶が,合衆国が締約国である海産哺{ほとルビ}乳動物に関する国際協定に別段の定めがある場合又は合衆国政府によつて定められた海産哺{ほとルビ}乳動物の混獲についての個別の許可及び規制に従う場合を除くほか,漁業保存水域内において,海産哺{ほとルビ}乳動物を脅かし,狩猟し,捕獲し若しくは殺し,又は脅かし,狩猟し,捕獲し若しくは殺そうと試みることを差し控えることを確保する。

    第10条

 日本国政府は,日本国の漁船が,この協定に基づく漁業を行うに当たり,第8条2の規定に従つて合衆国政府がとる行政上の措置に従うことを確保する。

    第11条

1 日本国政府は,この協定に従つて合衆国の地先沖合の生物資源を漁獲する日本国の各漁船が,正当に権限を有する合衆国の取締官による当該漁船への乗船及び当該漁船の検査を許容し及び助けること並びに取締行為が行われる場合にはこれに協力することを確保するため,適当な措置をとる。

2 合衆国政府の当局によつて日本国の漁船が拿{だとルビ}捕され又は日本国の漁船の乗組員が逮捕されたときは,日本国政府に対し,その旨が外交上の経路を通じて速やかに通告される。

3 拿{だとルビ}捕された漁船及び逮捕された乗組員は,裁判所が決定する妥当な供託金又はその他の保証を条件として,速やかに釈放される。

    第12条

 合衆国は,この協定又はこれに基づいてとられる行政上の措置に従わない日本国の漁船又はその所有者若しくは運航者に対し,合衆国の法律に従い,妥当な刑を科する。

    第13条

 日本国政府及び合衆国政府は,合衆国の地先沖合の生物資源の管理及び保存のために必要な科学調査の実施(相互に関心を有する魚種の管理及び保存のための入手可能な最良の科学的情報の収集を含む。)について協力することを約束する。両政府の権限のある機関は,この協力を容易にするために必要な取決めを行う。この協力には,情報及び科学者の交換,調査計画を準備し又びその進捗{ちょくとルビ}状況を検討するための科学者間の定期的な会合並びにこの協定の不可分の一部をなす附属書IIの規定に従つた統計上及び生物学上の関係情報の収集及び記録保管のための統一的体系の実施及び維持を含む。

    第14条

 この協定のいかなる規定も,内水,領海,公海又は沿岸国の管轄権若しくは権限(漁業資源の保存及び管理に係るものを除く。)の範囲に関するいずれの政府の立場にも影響を与え又はこれを害するものではない。

    第15条

 この協定の附属書は,公文の交換の形式による両政府間の合意により修正することができる。

    第16条

1 この協定は,それぞれの国によりその国内手続に従つて承認されなければならない。この協定は,その後日本国政府と合衆国政府との間で相互に合意される日に公文の交換を通じて効力を生じ,1982年12月31日まで効力を存続する。ただし,いずれか一方の政府が12箇月の予告をもつて終了の通告を行うことによりそれよりも早い日にこれを終了させる場合には,この限りではない。

2 この協定は,効力発生の2年後又は第3次国際連合海洋法会議の結果としての多数国間条約が採択された時に,両政府によつて再検討される。

 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 1977年3月18日にワシントンで,ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。

 日本国政府のために

   東郷文彦

 アメリカ合衆国政府のために

   ロザーン・リッジウェイ

2.アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定,附属書I

 合衆国の地先沖合の生物資源の漁獲に日本国の漁船が従事することを認める各年ごとの許可証の申請及び発給は,次の手続に従つて行われる。

1 日本国政府は,合衆国政府に対し,この協定に従つて漁獲に従事することを希望する日本国の各漁船のために申請を行う。この申請は,合衆国政府がこのために定める様式により行われる。

2 この申請には,次のことを明記する。

 (A) 許可証を求めている漁船の船名及び公式番号又はその他の識別材料並びに当該漁船の所有者及び運航者の氏名及び住所

 (B) トン数,積載量,速度,加工設備,漁具の種類及び数量並びに当該漁船の漁獲の特性に関するその他の情報であつて要請されるもの

 (C) 当該漁船が行うことを希望する各漁業の明細

 (D) 当該許可証の有効期間内に当該漁船が予定している魚種別の漁獲量又は漁獲トン数

 (E) 当該漁獲が行われる海域及び漁期

 (F) 要請されるその他の関連情報

3 合衆国政府は,各申請を審査し,漁業資源の管理及び保存に関連して必要となる条件及び制限並びに必要とされる料金を決定する。合衆国政府は,この決定を日本国政府に通知する。

4 日本国政府は,3の通知を受けたときは,合衆国政府に対して,3にいう条件及び制限を受諾するか又は拒否するかを通知し,拒否する場合にはその拒否の理由を通知する。

5 日本国政府によつて3にいう条件及び制限が受諾され,かつ,料金が支払われたときは,合衆国政府は,前記の申請を承認し,日本国の各漁船のために許可証を発給する。この許可証の発給により,当該各漁船は,この協定及び許可証に規定される条件に従つて漁獲することを認められる。この許可証は,個々の漁船に対して発給されるものとし,譲渡されてはならない。

6 日本国政府が合衆国政府に対して具体的な条件及び制限についての拒否の理由を通知した場合には,両政府は,これにつき協議を行うことができる。日本国政府は,この協議の後,修正した申請を提出することができる。

3.アメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定,附属書II

 この附属書に定める手続は、魚種の資源状態の評価及び漁業資源の管理の継続的な必要性にかんがみ、これに貢献するために定められている。しかしながら、標準的手段の変更又は特定の研究のための追加資料が随時必要となることがあり得る。また、漁業の形態も変化するであろう。このため、この手続は必要な変化に適応できるように十分に柔軟であることが必要となる。

 次に規定するすべての資料が、合衆国商務省国家海洋漁業局の指定された代表者に提出される。

1 漁獲量及び漁獲努力量に関する統計

A 大西洋岸

 各四半期の終了後三箇月後に、当該四半期に関して、三十分区画水域別の、かつ、二週間の期間ごとの漁獲量及び漁獲努力量に関する統計が、漁船ごとに報告される。この統計は、すべての魚種及び漁具の種類について、三十分区画のスタトラント二十一B型様式、磁気テープ、電子計算機カード又はプリント・アウトを使用して提出される。

 漁船の操業日誌中の資料は、選定された特定の共同評価研究に供される。また、2に定める標本の採集は、操業日誌に注釈として記入されるものとする。

B 太平洋岸

 次に掲げる年間の漁獲量及び漁獲努力量に関する統計が、翌年の五月三十日までに提出される。

 メートル・トンで表示される漁獲量並びに底引き網の曳網時間数で表示される漁獲努力量、はえなわの単位(鉢)で表示される漁獲努力量、かごの数で表示される漁獲努力量、はえなわ又はかごの沈説時間数で表示される漁獲努力量、デンマーク式の曳網回数で表示される漁獲努力量及び操業日数で表示される漁獲努力量

 これらの統計は、船舶階層別、漁具の種類別、月別、緯度三十分・経度一度の統計区域別及び次に掲げる魚種別のものとする。

こがねがれい

しゆむしゆがれい

アラスカあぶらがれい

うまがれい

ドーヴァーなめた

その他のかれい類

アラスカめぬけ

その他のめぬけ類

まだら

ぎんだら

すけとうだら

きたのほつけ

たらばがに

ずわいがに

にしん

千メートル・トンを超えて漁獲されたその他の魚類

その他すべての魚種

 これらの年間の漁獲量及び漁獲努力量に関する統計は、磁気テープ、電子計算機カードまたはプリント・アウトを使用して提出される。

 前記の年間統計報告に加えて、メートル・トンで表示される漁獲量及び漁場における操業隻日数で表示される漁獲努力量に関する暫定的な月間漁獲情報が、翌月の終わりまでに提出される。これらの情報は、漁具の種類別、船舶階層別、次の(1)に掲げる魚種別及び次の(2)に掲げる北太平洋漁業国際委員会(INPFC)の統計区域別のものとする。

(1)たらばがに

ずわいがに

すけとうだら

まだら

めぬけ類

かれい類

ぎんだら

にしん

その他

(2)ベーリング海(第一、第二、第三及び第四小区域)

アリューシャン海区

シュマギン海区

チリコフ海区

コディアック海区

ヤクタット海区

南東海区

シャーロット海区

ヴァンクーヴァー海区

コロンビア海区

ユーレカ海区

モンテリー海区

コンセプション海区

その他の指定海区

2 生物学上の統計

A 大西洋岸

(1)体長・年齢組成に関する標本

a 漁獲の行われる各月につき、全協定水域について三十分区画の区域別に、かつ、漁具の種類(着底びき網、中層びき網、きんちやく網等)及び海層(着底、中層等)の組み合わせごとに、標本が採取されるものとする。標本は、前記の分類の範囲内で、千メートル・トンごとに(千メートル・トンに満たない部分についてはその端数について)一の標本が採取されるものとする。

b 各標本について記録する事項

船舶分類(底びき船、まき網船等)

漁獲方法(中層びき等)

底びき網の具体的種類(その構造の説明又は縮尺による図面を含む。)

網目の大きさ

当該曳網による漁獲量中標本を採取した魚種のトン数

標本を採取した魚類の総重量

曳網時刻

日付

曳網位置の緯度及び経度

c 標本採取の手続

(i)魚種別に漁獲物を分類する場合

(a)漁獲別にそれぞれ約五十尾からなる四の標本を、一回の曳網から無作為に採取する。(一回の曳網につき二百尾に満たない魚種については、約二百尾が標本として採取されるまで曳網を通じて採取を続ける。)

(b)尾叉長を、センチメートル単位で測定する。その他の測定単位を使用する場合には、換算のための適当な情報が提供されなければならない。

(c)各魚種について、尾叉長が一センチメートル異なるごとに一尾の補助標本を採取し、適当な場合にはうろこ及び耳石を採取する。成魚については、性別を記録する。

(ii)魚種別に漁獲物を分類しない場合

(a)それぞれに約三十キログラムの二の標本を、一回の曳網から無作為に採取する。

(b)尾叉長を、魚種別にセンチメートル単位で測定する。その他の測定単位を使用する場合には、換算のための適当な情報が提供されなければならない。

(c)各魚種について、尾叉長が一センチメートル異なるごとに一尾の補助標本を採取し、適当な場合にはうろこ及び耳石を採取する。成魚については性別を記録する。

(2)体長・体重に関する標本

 各主要魚種(例えば、協定水域における年間漁獲量が五百メートル・トン又はそれを超えることが予想されるもの)につき、北西大西洋漁業国際委員会(ICNAF)の定める区域ごとに、かつ、月別に、一の標本を採取し、当該標本中の各個体についてグラム単位で体重を測定し、及びミリメートル単位で体長を測定するものとする。各標本は、体長が一センチメートル異なるごとに当該魚種の魚類十尾を含むものとする。各体長範囲の魚類は、必要な場合には、数日にわたる数回の漁獲により採取した魚類から集めることができる。小さい魚類については、海上での個体別の体重の測定が正確でない場合には、同じ体長級の適当数の魚類を集めて体重を測定する。成魚については、性別を記録する。

B 太平洋岸

 漁獲される個々の魚類の代表的な体長、年齢及び体重を決定するため、日本国の漁船による生物学上の標本採取が、日本国及び合衆国の科学者の間の協議を通じて作成され及び調整される手続に従つて行われ、標本の測定値がかかる手続に従い必要に応じて記録される。

 これらの標本が採取されたときは、日本国政府は、次のものを含む年別の生物学上の統計を翌年の五月三十日までに提出する。

(1)船舶階層別、漁具の種類別、月別、緯度三十分・経度一度の統計区域別、性別並びに年間の漁獲量及び漁獲努力量に関する統計のために1Bに掲げる魚種別の体長組成資料

(2)1BのINPEC統計区域別の各主要魚種(例えば、協定水域における年間漁獲量が五百メートル・トン又はそれを超えることが予想されるもの)の体長・体重に関する資料。科学的必要性がある場合には、年齢査定のため、うろこ又は耳石の標本を採取する。

3 必要とされるその他の統計

 分析のため更に統計が必要とされる場合並びに1及び2に規定するもの以外の魚種又は水域について漁業が行われる場合には、これについての資料の収集及び報告の手続が、日本国及び合衆国の科学者の間の協議を通じて作成され、及び調整される。

4.合意された議事録

 日本国政府の代表者及び合衆国政府の代表者は、本日署名されたアメリカ合衆国の地先沖合における漁業に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下「協定」という。)に関連して、次のとおり記録することに合意した。

1 日本国政府及び合衆国政府は、まぐろ類及び相互に関心を有するその他の高度回遊性魚種の保存を確保するため、適当な国際機構を含む地域的取極を設定する目的で、これらの魚種に関する科学的情報及び技術的情報を協力して交換するものと了解される。この交換は、まぐる類の漁獲及びこれに伴う漁獲に関する報告を含むものとする。

 更に、協定の始期から適当な時期まで、両政府は、前記の取極を促進するための科学的情報の基礎を確立するために、合衆国の地先沖合におけるまぐろ類の漁獲及びこれに伴う漁獲に関する統計を相互に提供するものと了解される。

2 合衆国政府の代表者は、漁業保存水域の外における朔河性魚種に関して合衆国の当局よりとられる取締行為は、日本国政府と協議を行つた後にのみとられることが合衆国政府の意図であることを述べた。

3 協定第十二条に関し、合衆国政府の適当な代表者は、協定に基づく漁獲活動から生ずるいかなる訴訟についても、裁判所に対して、漁業規則の違反に対する刑に禁錮その他いかなる形の体罰も含まれないよう勧告するものと了解される。

4 日本国政府は、協定で取り扱われている事項であつてその権限に属するものについては、日本国の地先沖合の生物資源の漁獲に従事することを希望する合衆国の国民及び船舶に対し、同様の場合に協定に基づき日本国の国民及び船舶に対して与えられる待遇よりも不利でない待遇を、相互主義に基づき、与える用意があるものと了解される。

5 合衆国政府は、協定に従つて漁獲に従事する日本国の漁船がえさ、補給品若しくは修理を行うため又は正当と認められるその他の目的のために合衆国の法律に従つて合衆国の港に入港することを認めることを約束する。

6 日本国の漁船の転載作業の実施に関し、合衆国政府の代表者は、転載区域は過去の慣行を考慮して提供されるであろうこと及びそれらの区域は許可証又はその他の関係書類に記載されるであろうことを述べた。

一九七七年三月十八日にワシントンで

日本国政府のために

東郷 文彦

アメリカ合衆国のために

ロザーン・リッジウェイ