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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フォード米国大統領発三木内閣総理大臣あて書簡

[場所] 
[年月日] 1976年3月11日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,81−82頁.
[備考] 参考資料
[全文]

 私は貴下の二月二十四日付書簡を受領した。私は、ロッキード社の日本における活動について申し立てられている疑いを遅滞なく解明したいとの貴下の願望を完全にともにしていることを確言したい。米国政府は本件の捜査をさらに進めようとの貴下の努力を引き続き支持するものである。

 国務省は、上院及び証券取引委員会が保有している日本に関連する利用しうるすべての情報に対する貴下の要請を、上院及び証券取引委員会に送付した。私は、貴国政府が上院多国籍企業小委員会からの提供を要請した資料のうち多くのものはすでに提供されていると信ずる。われわれは、証券取引委員会がその調査の過程で収集してきている情報を貴国政府と分ち合うための取極を行う用意がある。

 私は、そのような取極をつくるために、日米両国政府の当局者が遅滞なく会合することを示唆したい。このような手続は、日本からの法執行当局者が米国の法執行当局者と緊密に協力し、米国の捜査・調査機関の保管する関係情報を秘密扱いの下に入手することを可能にしよう。証券収引委員会の法的及び行政的慣行上、調査に関連するいかなる資料もその調査が完了するまで公開しないこととなっている。そのような情報が時期尚早に明らにされることは、その調査を害し、また、米国において究極的にとられ得る法執行措置を害することとなる可能性が十分あろう。そのことは、また、関係する個人が究極的に刑事訴訟の被告人となるか否かにかかわらず、その個人の権利を害することとなり得よう。米国の法制及び慣行上の前記の基本的要件は尊重されなければならない。もちろん、日本の法制及び慣行上の基本的要件が尊重されなければならないことも同様である。この諸原則が保護されるならば、私はわれわれが効果的に協力し得るものと確信している。

 私がここで説明しているような取極は、貴国政府が本件に関する調査を支障なく進めることを可能にするであろう。私は、このような取極が貴下にとり満足の行くものであろうことを希望する。

 総理大臣閣下、私は、本件ができるだけすみやかに解明されることが日米両国の利益にかなうものであるとの貴下の考えに全く同感である。私は、また、腐敗行為についての新しいルール作りが必要であると貴下が述べられたことを歓迎し、そのような行為の除去を目的とする国際合意を作るための米国提案を日本国政府が支特し得ることを希望する。総理大臣閣下、最後に、私は、この不幸な事件が、アジア及び世界の平和と進歩にとって引き続き極めて重要である日米両国間の基本的かつ恒久的な友情を損うことはないと確信しており、貴下もこのことを確信しておられるものと信ずる。