データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるフォード米国大統領あて書簡

[場所] 
[年月日] 1976年2月24日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,79−80頁.
[備考] 
[全文]

 去年の夏、われわれは、日米両国が永遠の友人であることを認め、民主主義の擁護と日米親善発展のために相協力することを誓った。そして、お互に信じ合って、率直に意見を述べ合うことを約束した。

 いま、日米両国は、ロッーキド問題という不愉快な問題に直面している。それゆえに、私は、この信頼の精神に立って本問題についての関心を表明したい。

 大統領閣下、昨日、日本の国会は、重大なる決議を行ったが、これを同封し貴政府に伝達する。憲法の定めにより、国権の最高機関とされている国会が、こうした異例の決議を行ったことは、それほど日本の国会が、今回のロッキード事件の事態究明を重大視しているからである。

 日本政府の関係者がロッキード社から金を受け取ったという米上院の多国籍企業小委員会における公聴会のニュースは、日本の政界に大きな衝撃を与えた。その関係者の名前が明らかにされず、この事件がうやむやに葬られることは、かえって、日本の民主政治の致命傷になりかねないとの深い憂いが、いまの日本に広まりつつある。私もその憂いを共にする。私は、関係者の氏名があればそれを含めて、すべての関係資料を明らかにすることの方が、日本の政治のためにも、ひいては、永い将来にわたる日米関係のためにもよいと考える。

 大統領閣下、只今、われわれは、日本においても真相究明に最大限の努力を払っているが、問題をさらに解明するために貴国側か引続き協力されることを希望する。私は、日本の民主政治は、本件解明の試練に耐え得る力を有していることを確信している。われわれは真実を究明する勇気と、そして、その結果に直面して行く自信をもっている。

 大統領閣下、私は、多国籍企業の行動についての国際間の新しいルール作りが必要との貴下の意見に同感である。これについては、今後両国間で緊密に協議して参りたい。

 大統領閣下、貴下の最近の御多忙なことは重々承知しているが、どうか私の真意を理解して下さって、アメリカ議会とアメリカ政府とが、日本の国会と政府の要請に応えて、真相究明に一段の協力を与えられるよう、貴下の御尽力を切望してやまない。