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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米繊維協定,日本国とアメリカ合衆国との間の毛製品及び人造繊維製品の貿易に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の取極

[場所] 
[年月日] 1972年1月3日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,843−845頁.外務省条約局「条約集・昭和47年二国間条約」,683−691頁.
[備考] 
[全文]

日本国とアメリカ合衆国との間の毛製品及び人造繊維製品の貿易に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の取極

(一九七二年一月三日)

前文 この取極の目的は,両国の繊維経済の健全な発展と合致するよう日本国から合衆国への毛製品及び人造繊維製品の輸出貿易の急激な増加を防止し,かつ,その秩序ある発展をもたらすことにある。

   この目的のため,及びこの取極の規定に従い,日本国は,合衆国への毛製品及び人造繊維製品の輸出の年間総増加量がこの取極に規定する水準をこえないように配慮してこれらの製品の輸出を行ない,合衆国は,この取極の実施にあたつて,日本国により前記の水準が完全に利用されることを確保するよう考慮を払う。

1(a) この取極の規定は,両政府により,それぞれ自国の関係法令に従つて実施される。

 (b) 日本国政府は,千九百七十一年十月一日から始まる三年間合衆国への毛製品及び人造繊維製品の輸出に対しこの取極に規定されている規制を行なう。

2 両政府は,関税及び貿易に関する一般協定に基づく両国の権利及び義務がこの取極によつて影響されるものではないことを確認する。

3(a) この取極の三年間における毛製品及び人造繊維製品の年間総枠{枠にわくとルビ}は,次のとおりである。

                     平方ヤード相当分

千九百七十一年十月一日から

 千九百七十二年九月三十日まで    九九七,五○○,○○○

千九百七十二年十月一日から

 千九百七十三年九月三十日まで  一,○四七,四○○,○○○

千九百七十三年十月一日から

 千九百七十四年九月三十日まで  一,○九九,八○○,○○○

 (b) (a)に規定する年間総枠のうち,毛製品の年間総枠は,取極第一年については四千二百八十三万三千平方ヤード相当分,取極第二年については四千三百二十六万一千平方ヤード相当分及び取極第三年については四千三百六十九万四千平方ヤード相当分とする。

 (c) (a)に規定する年間総枠のうち,人造繊維製品の年間総枠は,取極第一年については九億五千四百六十六万七千平方ヤード相当分,取極第二年については十億四百十三万九千平方ヤード相当分及び取極第三年については十億五千六百十万六千平方ヤード相当分とする。

4 3に規定する毛製品及び人造繊維製品の関係年間総枠の中で,ある種の種目群,種目亜群及び特定の種目の年間枠は,附表Aに掲げられ又はそれらに従つて決定されるとおりとする。

………

6(a)(i) アメリカ合衆国政府は,いずれかの取極年において,附表Aに掲げられていない種目の日本国からの輸入又は附表Aに掲げられている種目に属する特定の製品の日本国からの輸入が増加し,合衆国市場の攪乱{攪にかくとルビ}を起こし又は起こすおそれがあると認めるときは,日本国政府に協議を要請する。

   (ii) 日本国政府は,両政府の間で双方にとつて満足な解決が得られるまでの間,前記の協議が要請された種目又は製品の当該取極年における輸出を,それぞれ次の輸入水準を基準として,人造繊維製品については百五パーセント及び毛製品については百三パーセントの水準に制限する。すなわち,前記の協議が要請された月に先だつ最近の十二箇月の期間であつて両政府が関係資料を入手することができるものにおける当該種目又は当該製品の日本国から合衆国への輸入水準を基準とする。

 (b)附表Aに掲げられていない種目については,いずれかの十二箇月の期間における日本国からの当該種目の輸入が,千九百七十一年三月三十一日に終了する十二箇月の期間における当該種目の輸入水準に対し人造繊維製品にあつては十パーセント及び毛製品にあつては三パーセントの率を各取極年につき複利で乗じた水準まで増加したときはいつでも,(a)にいう協議が要請される。

 この(b)に基づく協議は,いずれの種目についても,日本国からの輸入が,衣料品以外の人造繊維製品にあつては各種日あたり五十万平方ヤード相当分,人造繊維の衣料品にあつては各種日あたり三十五万平方ヤード相当分及び毛製品にあつては各種目あたり十万平方ヤード相当分をこえない限り,要請されない。

 この(b)に示されている水準において前記の協議が要請された場合においては,両政府の間で双方にとつて満足できる解決が得られるまでの間,日本国政府は,当該取極年における当該種目の輸出を協議要請の基礎となつた日本国から合衆国への輸入水準に制限する。

 (c) この6に規定するいかなる協議も,迅速に行なわれ,かつ,迅速に結論を見出すものとする。アメリカ合衆国政府は,協議の要請にあたつては,その要請の理由及び正当性に関する詳細なかつ事実に即した説明書(第三国からの輸入についての関係資料を含む。)を提示する。アメリカ合衆国政府は,合衆国への毛製品及び人造繊維製品の輸出が規制を受けている他の諸国からの同じ種目又は同じ製品の輸入が増加しているときは,それらの政府に対し類似の協議要請を行なう。

7(a)(i) 取極第二年及び第三年においては,人造繊維製品の年間総枠,毛製品の年間総枠並びに附表Aに掲げる群,亜群,特定種目の年間枠及び内枠をこえて輸出を行なうことができるが,この繰越しは,前取極年における関係枠の五パーセント又は前取極年における当該枠内における輸出の実際の未達のいずれか少ない方を限度とする。

………

8 日本国政府は,この取極にいう規制の結果日本国が,合衆国への毛製品及び人造繊維製品の輸出が規制を受けている第三国に比し不公平な立場に置かれ若しくは置かれるおそれがあると認めるとき又は他のいずれかの輸出国からの合衆国への輸出の著しい増加等の要因によりそれらの国と比較して実質的に不利な立場に置かれ若しくは置かれるおそれがあると認めるときは,アメリカ合衆国政府に協議を要請することができる。この協議は,この取極に合理的な修正を加えること等の適切な是正措置をとることを目的として,迅速に行なわれ,かつ,迅速に結論を見出すものとする。アメリカ合衆国政府は,同協議において両政府が満足と認める適切な是正措置をとる。

9(a) この取極の有効期間中,通商産業省及び商務省並びに両政府の他の権限ある機関の専門家は,この取極の対象となつている繊維製品の日本国と合衆国との間における輸出及び輸入に関する最新の資料を交換し,取極の実施を詳細に検討し及びこの取極から生ずるあらゆる問題(弾力性の問題及び分類の問題を含む。)を検討するため,原則として毎月会合する。アメリカ合衆国政府は,前文に掲げる原則に合致する合理的な態度でこれらの問題を日本国政府とともに検討する。

………

12 この取極の有効期限は,千九百七十一年十月一日からの三年間である。両政府は,この取極の第三年目において,この取極をその後の期間まで延長することについて検討する。

13 各政府は,いつでも,この取極の修正を提案することができる。他方の政府は,そのような提案に対して好意的な考慮を払う。

(附表 略)