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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定署名式における佐藤内閣総理大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 1971年6月17日
[出典] 外交青書16号,496頁.
[備考] 
[全文]

 ロジャーズ国務長官閣下,マイヤー大使閣下,ご参列の皆様

 この歴史的な沖縄返還協定の調印にさいして,慶祝の言葉を申し述べることは私にとつて何よりも大きな喜びであります。

 ニクソン大統領は1969年11月の日米共同声明に明記された数々の決定を下すにあたつて,最高度のステーツマン・シップを発揮されました。爾来,両国政府は鋭意交渉を進め,ここに相互に満足すべき合意に到達したのであります。私は両国の立法府によつてこの協定が承認され,明1972年のなるべく早い時機に沖縄の祖国復帰が実現することを心から願うものであります。

 今回の沖縄返還協定は,日米両国間の信頼と友好関係をいままでのいかなる時期にもまして緊密にして強固なものとするものであります。同時に,日米両国が協力してアジア・太平洋地域ひいては全世界の平和と繁栄に貢献して行く新時代の誕生を意味するものであり,この協定の歴史的意義はまさにここにあるものと確信いたします。近年における日米両国の経済交流は史上空前の規模に達し,このためときには調整を要する問題が発生しておりますが,これはむしろ,両国関係のダイナミズムを象徴するものであると考えます。互譲の精神をもつてすれば現在直面している問題で解決し得ないものはなく,将来に予見される諸問題においても全く同様であると確信いたします。

 私は,沖縄返還において示されたニクソン大統領ならびに米国民の広い雅量と豊かな人間性に心から敬意を表するとともに,アメリカ合衆国のいつそうのご発展を祈つてやみません。

 沖縄の皆様,本当に永い間ご苦労さまでした。皆様を本土に迎え入れる日がいよいよ迫つてまいりました。こんごは円滑な復帰の実現と明日の明るい沖縄県づくりを目指して,本土の同胞と協力一致,まい進しようではありませんか。ありがとうございました。