データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
機密文書研究会 東京大学・法学部・北岡伸一研究室

[文書名] 沖縄返還問題(愛知大臣・マイヤー大使会談)

[場所] 
[年月日] 1971年6月2日
[出典] 外務省,いわゆる「密約」問題に関する調査報告対象文書(4.1972年の沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する「密約」問題関連),文書4-5
[備考] いわゆる「密約」問題に関する調査報告の際に公開された文書。公開されたものはタイプによる文書。漢字、送りがなの用法、誤記と思われるものも含めてできるだけ忠実にテキスト化した。欄外の書き込みの記録は本文前に記載しオリジナルの記載箇所を<>内に記した。
[全文]

<1ページ目 欄外上>

極秘 無期限 8部の内 7号{前11文字スタンプ}

極秘 無期限 写3部の内 1号{前12文字スタンプ}

<1ページ目 欄外右上>

7{前1文字手書き}

沖縄返還問題

(愛知大臣・マイヤー大使会談)

昭和46.6.2

アメリカ局北米第一課

 2日午後行なわれた愛知大臣・マイヤー大使会談概要次のとおり。(アメリカ局長、条約局長、赤谷大使、スナイダー公使ほか同席)

1.上院対策

 マイヤー大使より、最近来日のスコット上院議員から聞いたが、若干の議員が返還協定が否決されては困るので、上院に提出しないよう大統領に進言しようとしている由であり、自分としても憂慮している。ただし、沖縄と経済問題は絡ませたくないとの趣きを述べたので、愛知大臣よりも、上記議員の進言云々は初耳であるが、自分も上院通過を決して楽観視してはいないと述べた。(なお、マイヤー大使より、本2日夕刻総理大臣訪問の際上記につき申し上げるべき旨付言した。)

2.実質問題

(1)愛知大臣より、P‐3についてはただ今大蔵省から連絡があり、ジューリック特別補佐官が台北から柏木氏に電話で、ケネディ大使はP‐3を追加費用要求をやめてそのまま移転させるとの考えをACCEPTするに至つた趣なの{前50文字下線あり}で、これにて320、P‐3、請求権、第8項及びVOAについて全部実質的合意をみたというべく、これらの点につき確認をえたいと述べた。

(2)マイヤー大使より、320、VOA、第8項についてはそのとおりと{前1文字挿入(手書き)}確認した後、請求権については、日本案が妥当なる旨何度もワシントンに申し送つている(たとえば、先日アーヴィン国務次官、グリーン次官補日本通過の際もこの点を強く具申した。)が、ワシントンでは下院の本件に関する実力者を説得する要ありとして未だ回答をよこしていないと述べた。上記に対し愛知大臣より、折角1つのパッケージとして解決を計つてきたのであるから、是非日本案どおりにして欲しいと述べたところ、マイヤー大使は、よく理解しているので極力努力を続けるべき旨を明らかにした。

(3)マイヤー大使より、P‐3については初耳だが、本当であればまことに喜ばしいことである。ここだけの話だがジョンソン国務次官はこの点きわめて熱心に日本のために働き、軍部説得に大きな役割を果している。財政面についても同じように努力しているのではないかと思うと述べた。

3.残された諸問題

(1)愛知大臣より、パリでのロジャーズ国務長官との会談では協定の署名をドラマタイズするこ{前1文字挿入(手書き)}との協議に集中したく、難しい問題は是非その前に片付けたいと述べた上、協定自体に係る問題はほぼ結着したとみてよいかと質問、第Y条のPAYMENT SCHEDULE(条約局長より、本日中に日本案を提示の予定)、その他若干の細かな問題以外はしかり、ということであつた。

(2)協定そのもの以外の点については、マイヤー大使より、FEBC、航空及び弁護士(2、3の者が自分が加えられることを強く要求しており、トラブルを起しては困るのでなんとか解決したいと考えている。)の諸問題ありと指摘、愛知大臣;{;は手書きで挿入}マイヤー大使とも、これらすべてを片付けるべく来たる4日マイヤー大使の一時帰国出発前に再び愛知大臣・マイヤー大使間で会談することに一致した。

4.署名式

 愛知大臣より、なんらかの形でニクソン大統領が署名式のテレビに出られることを是非望む旨述べたところ、マイヤー大使はただ今国務省でこの点につき努力中なる旨答えた。

5.プレス対策

 双方協議の結果、(イ)マイヤー大使より、一時帰国の上ワシントンの各方面(議会を含む)と協議することを伝えた。(ロ)協定作成については、(外部との関係では)パリで継続討議されることとなつている項目(VOA、請求権、P‐3等)以外は進展をみせた。(ハ)署名の日取りはパリで愛知大臣とロジャーズ長官との間で決定されると説明することとした。

{本文中の数字、及び下線は手書きによる}