データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米首脳会談終了後の新聞記者会見における木村官房副長官の発表

[場所] 
[年月日] 1970年10月24日
[出典] 外交青書15号,410−412頁.
[備考] 
[全文]

 佐藤総理とニクソン大統領は本日午後4時15分から5時45分まで約1時間半にわたつて会談し,双方に関心を有する多くの問題を討議した。

 討議の内容の主なものには,一般国際情勢,特に中東方面及び東南アジアにおける国際情勢の推移,沖繩返還交渉,ニクソン・ドクトリンと東アジアの安全保障との関連,日米間経済問題及び環境汚染等の問題が含まれている。意見の交換は両首脳の多年の親交と日米両国間に存する共通の利害を反映して,卒直かつ友好的なものであつた。

(1) 一般国際情勢

 両首脳は昨年11月の会談以来,約1年間における国際的な平和維持と緊張緩和のための努力を検討した。中近東に停戦をもたらすための大統領の努力とジャカルタ会議への参加を通じ,カンボディアに平和を回復させようとする日本の努力も話題の対象となつた。

(2) 東南アジア

 一般情勢に関する意見交換において,総理は10月7日の大統領の和平提案を歓迎した。これに対し大統領は同提案に対する日本政府の支持と日本がインドシナ住民の福祉向上のための経済援助を強化し,もつて同地域の安定に資したいとの総理の考えを歓迎した。総理が10月21日の国連における演説において,日本は1975年までに国民総生産の1%を援助にふり向ける意向であり,また日本は二国間援助のみならず多国間援助にも関心を有する旨述べた。

(3) 沖繩返還交渉

 沖繩返還に関し,両首脳は1969年11月21日の共同声明の精神と内容に従つて返還交渉が現在まで円滑に進行していることに満足の意を表明した。

(4) ニクソン・ドクトリン

 総理はニクソン・ドクトリンがアジア諸国の自立への努力を促進するものであり,健全な政策であることに同意しつつ,同ドクトリンがアジアの安全を損わないように実施されることが重要であると述べた。大統領は総理に対し自由諸国に対する米国のコミットメントは確固かつ永続的なものであると確言した。

(5) 中国問題

 両首脳は中国問題につき,簡単な意見の交換を行なつた。この中で両首脳は日米両国が中国問題について十分その政策を調整してゆくことが必要であることを認め,将来の発展につき緊密な連絡と協議を続けるべき旨を合意した。

(6) 環境汚染

 両首脳は環境汚染が人類に脅威を与えていることに共通の関心を表明した。両首脳は大統領直属の環境問題諮問委員会ラッセル・トレイン委員長の訪日が公害に対処する共同努力のよき第一歩であつたと考える。共同計画立案検討のため,閣僚レベルで今後定期的に会合することが望ましい旨合意した。

(7) 両国間経済問題

 両国間経済関係の増進は日米関係全般および世界貿易の進展のためにきわめて重要であることが留意された。

 総理と大統領は日本の自由化措置の促進および米国の対日輸出の増加等最近の日米貿易関係の発展を歓迎し,多くの問題は発生しているが,今後とも自由貿易の増進と国際通商制度を強化するために相互信頼の精神に立つてこれらの問題の解決を図る意図を表明した。

 総理と大統領は繊維問題について合意に達するために両国政府間に交渉を再開することに意見の一致をみた。両首脳はまた,明年適当な時期に日米貿易経済合同委員会の開催について合意した。

{(1)は本文ではマル1}