データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 愛知外務大臣・ロジャーズ国務長官共同声明

[場所] ワシントン
[年月日] 1970年6月24日
[出典] 外交青書15号,407−409頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 日本国外務大臣,通商産業大臣は米国国務長官,商務長官と会談し,日米両国に共通に関心のある多くの問題について,過去数日間行なわれた討議のレヴューを行なつた。両大臣及び両長官はいくつかの分野については可成りの進展がみられ,このことは特に政治及び経済の分野における両国を結ぶ重要かつ緊密な関係を再確認するに役立つものであることに留意した。

 繊維問題については,両大臣及び両長官は繊維の対米輸入に関する懸案の問題につき合意に達することが可能でなかったことを遺憾とした。しかしながら,両大臣及び両長官はこの問題は広範な意義を有するものであることを認識し,この問題の解決に努力するため適当な時期に討議が継続されることについての希望を表明した。両大臣と両長官はこの時点で繊維問題が解決されなかつたことに失望の意を表明したが,日米両国がお互いに相手国の最大の国外市場となることを可能ならしめたことに示されるごとく,日米経済関係が全般的には成功していることを強調した。両大臣と両長官は,特に経済分野において両国が相互依存性をますます強めて来ており,従つて一方の国の政策と行動が他方の国に多大の影響を及ぼすことを理解した。

 相互協力及び安全保障に関する条約については,両大臣と両長官は,両国政府が6月22日この問題につき発表した声明に示されているとおり,両国が10年間成功裡に運用された同条約を継続することを決定したことに,満足をもつて留意した。

 沖繩に関しては,両大臣及び両長官は,その施政権の日本への返還に関する交渉が,1969年11月のコミュニケにうたわれているとおり東京で始められたことを認めた。両大臣及び両長官はこの交渉が順調に終了し,1972年に復帰が完了することができることを確認した。

 両大臣及び両長官はまた東南アジア情勢の検討も行なつた。愛知大臣は全ての外国軍隊のカンボディアからの撤退を求める先般のジャカルタ会議の決定を実行に移すため,日本がインドネシア及びマレイシアの代表とともに行なつている努力につき説明を行なつた。かかる努力が両国政府及び他のアジア諸国にとつて重要であることに意見が一致した。

 両国外務大臣は最後に両国間の密接な関係を強化し,またアジアの平和と安定のために最大限の貢献を行なうにあたり協力すべく日米の共同の努力をさらに強化すべきことに意見が一致した。ロジャーズ長官はこれらの事項を7月7日から9日までの東京訪問の際に話合うことを期待している旨述べた。