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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米国のアムチトカ島における地下核実験に関する申し入れについて

[場所] 
[年月日] 1969年9月16日
[出典] 外交青書14号,414頁.
[備考] 外務省情報文化局長談
[全文]

 米国政府は,近くアリューシャン列島のアムチトカ島において地下核実験を実施し,それに伴い,来たる9月25日から10月15日まで同島を中心に半径50海里の円形の区域を立入禁止区域(safety area)として設定する予定であるが,これに対し,外務省は,9月15日,在米大使館を通じ米国政府に対し,要旨次のとおりの申し入れを行なつた。

1.米国政府による本件核実験の実施および立入禁止区域の設定は,一般国際法上認められている公海の自由を著しく制限するものでもあり,これまであらゆる環境における核兵器実験は禁止すべきであるとの立場をとつてきている日本国政府として遺憾とするところである。

2.日本国政府は,右立入禁止区域がわが国の商業的船舶および航空機の通常の航路に当つており,また同区域を含む北太平洋の水域においてわが国漁業が相当規模で行なわれている事実にかんがみ,米国政府に対し,前記1.の日本国政府の立場に十分留意するよう要請する。

3.米国政府が本件実験を実施し,かつその措置または行動により日本国および日本国民が損害をこうむつた場合には,日本国政府はこれに対し妥当な補償を請求する権利を留保する。