データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第四回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1965年7月14日
[出典] 外交青書10号,26−29頁.
[備考] 
[全文]

一,第四回日米貿易経済合同委員会はラスク国務長官の司会の下に昭和四○年七月一二日,一三日,一四日ワシントンで開催された。会議では日米両国の二国間関係の観点からのみならず,世界的な視野から日米両国の貿易経済関係が全般的に検討された。委員会は,日米両国の経済が引き続き強力である結果,両国がより緊密かつ一層効果的に協力して,世界経済の分野で一層広範な責任を果すことが可能となったことを認めた。委員会は,低開発国,特にアジアにおける諸国の経済の発展を促進し,その福祉の向上を図ることが重要であることを確認した。委員会は,日米両国の貿易経済関係との関連における国際情勢の重要性の認識に基づき,まず国際情勢一般を概観した。

二,討議は貿易,経済の諸問題について広範囲にわたって行なわれ,次の諸点を含む多くの分野で相互理解に達した。

 (一) 委員会は,米国経済が長期間にわたって拡大を続け,今後ともこの拡大が維持されると見通されることに満足の意を表明した。委員会はまた,日本の驚異的な経済成長の記録をあらためて確認し,日本経済が再調整期をたどりつつあることを認めつつも,日本経済の着実な成長についての確信を表明した。従来の会議におけると同様,日米両国政府の間で,それぞれの主要経済問題と経済政策に関してより一層緊密な情報交換の必要があることが強調された。

 (二) 委員会は,日米両国における国際収支の着実な好転を歓迎しつつも,両国が未だその国際収支において問題をかかえていることを認めた。米国側委員は,利子平衡税の一部免除にふれ,米国が引き続き日本の財政金融上の問題に出来得る限りの考慮を払うべきことを約した。日本側委員は,米国の国際収支均衡回復の努力を可能な範囲内で支持したい考えである旨を明らかにした。

 (三) 委員会は,日米両国間の貿易が増加しつつあり,一九六五年には四○億ドルを越えると予想されることに満足の意を表明した。委員会は,貿易量の増大と貿易の多様化に伴なって日米双方に種々の問題が当然起り得ることを認めた。日米両国委員は繊維品貿易問題のごときこの分野での諸懸案について率直な意見の交換を行なった。委員会は,貿易の一層の拡大,経済活動の発展,生活水準の向上が,また,日米両国の政府産業界,および労働界の間の相互理解の増進が,貿易をめぐる諸問題の解決に貢献するとの見解を表明した。

 (四) 米国側委員は,米国政府が,より効果的な資本と技術の利用を通じて貿易の拡大,経済の成長および生活水準の向上に貢献する日本の民間投資の自由な流れを助長する政策をとっていることにふれ,米国の企業が日本で企業を設立し,またはこれを拡張するにあたって当面している種々の困難に言及した。日本側委員は,健全な外資を歓迎するとの日本の基本的態度を述べるとともに,大規模かつ急激な外資の流入がもたらすことのあるべき日本経済に対する悪影響を指摘した。委員会は,日米両国間での健全な直接投資を秩序ある,そして相互に利益となる形で促進することが望ましいことに意見の一致をみた。

 (五) 日米両国代表は,民間航空協定に関し,最近行なわれた非公式会談の進展に留意し,八月一○日東京で開始される正式交渉に期待する。

 (六) 委員会はまた,北太平洋漁業条約に関連した諸問題についても討議を行なった。委員会は,両国政府が東ベーリング海でのタラバガニ問題に関する一九六四年一一月の暫定取極を締結し,これにより両国間の諸懸案の解決においてさらに一歩前進したことを満足の念をもって想起した。現在休会中の交渉を早い時期に再開するため,日米両国が,米国,日本,カナダの正当な利益に基づいた合意が達成されうるような雰囲気をつくりだす上で必要な準備を行なうようそれぞれ努力すべきことに合意をみた。

三,国際経済関係の分野における日米両国間の緊密な協力の重要性が強調された。

 (一) 委員会はジュネーヴにおいて関税の引き下げと関税以外の貿易障壁の撤廃を目的として行なわれているケネディ・ラウンド交渉の成功が,日米両国にとって極めて重要であることを認めた。日米両国委員はケネディ・ラウンドにおける今までの交渉の進展を歓迎するとともに,交渉がスケジュール通りに進行することによって早期かつ成功裡に終了し,世界貿易の拡大がもたらされることを期待する旨を表明した。

 (二) 日米両国委員は各々の共産圏貿易に関する基本的な政策を説明した。日本の政策は共産圏諸国との関係において政経分離の原則に立っている。米国側委員は中共,北朝鮮,あるいは北越と経済関係を持たない理由,米国のキューバに対する禁輸の理由,また米国の共産圏向け長期信用供与への反対理由を説明した。米国側委員は米国は東欧諸国およびソ連との非戦略物資に関する貿易は,これら諸国との意思の疎通ならびに接触を増加させる一つの方法として真剣に検討中であることを指摘した。

 (三) 委員会は,低開発国の貿易問題についての組織だった討議の場として国連貿易開発会議が重要であることを認めた。日米両国委員は,低開発国のかかえている問題に関して,建設的解決を求めるべく今後も協力するとの両国政府の意図を確認した。

 (四) 委員会は,日本がOECD加盟後今日までの一年間にますます活発にかつ重要な役割を果して来たことに満足の意を表明した。

 (五) 委員会は,増大する世界貿易と投資活動をまかなうに足る国際流動性を長期にわたって確保することの重要性について意見の一致をみた。委員会は,米国の国際収支が均衡に近づくにつれて,流動性の供給が必要に応じて行なわれることを確保するため,国際通貨制度を改善することを検討し準備することが世界各国にとり必要となるであろうことを認めた。

四,委員会は,低開発国に対する経済援助の分野で,日米両国間の協力がますます緊密になってきたことに満足の意を表した。また委員会は,低開発国の開発のために必要な方途を生みだし利用するという問題を討議した。委員会は,ジョンソン大統領によってこの四月に提案され,佐藤総理により直ちに支持された東南アジア援助提案が実施されれば,これは東南アジア諸国の社会的,経済的発展に大きく寄与するであろうことに意見の一致をみた。両国委員はアジア開発銀行の創設が進捗しつつあることを歓迎し,同銀行の事業の将来性の大なることを認めた。委員会は,同地域の経済成長と開発のために供与される資金の効果を最大限とするのに必要な仕組みを策定するため,日米両国がその援助計画について他の国々とも密接に協力する必要があることに意見の一致をみた。委員会は,アジア各国の一層のイニシアティヴによりアジア地域諸国民の福祉の向上が可能となり,経済成長が刺激され,もって経済事情と経済の発展段階とが異なる同地域の数多くの国々がともに平和裡に生活しうるような環境が醸成されるよう希望を表明した。

五,(一) 日米両国委員は,日米両国間における労働関係者および職業訓練専門家の両交流計画が友好と相互理解におよぼす重要な寄与にかんがみ,これら両計画に満足の意を表明した。

  (二) 委員会は,天然資源の開発,利用に関する日米合同会議の報告を聴取した。委員会は,天然資源に関する日米両国の専門家および関係部局間における理解を促進する上において,この交流活動が大いに役立ったこと,またおおむね現在程度の交流を継続することが有意義であるとの結論に賛成の意を表した。

六,委員会は,合同委員会の第四回の会合が日米両国関係の強化に大きく寄与したことに意見の一致をみた。両国委員とも東京における次回会合での意見交換を期待している。

七,この委員会の米国側委員は,ラスク国務長官,ファウラー財務長官,ユードール内務長官,フリーマン農務長官,コナー商務長官,ワーツ労働長官およびアクリー大統領府経済諮問委員会委員長で,ライシャワー駐日大使,ロス通商交渉特別代表臨時代理,ベルAID長官ほか関係各省庁の随員が同席した。

  日本側委員は,椎名外務大臣,福田大蔵大臣,坂田農林大臣,三木通産大臣,小平労働大臣,中村運輸大臣,藤山経済企画庁長官で,武内駐米大使と牛場外務審議官ほか関係各省の随員が同席した。