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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 横路節雄代議士(社会党)の日米安保条約についての衆議院予算委員会における質疑

[場所] 
[年月日] 1960年2月8日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),998−1029頁.「官報号外」.
[備考] 
[全文]

○小川委員長 これより会議を開きます。

 昭和三十五年度一般会計予算,同特別会計予算,同政府関係機関予算,以上三案を一括して議題といたします。

 質疑を続行いたします。横路節雄君。

○横路委員 私は安全保障条約について,主として岸総理,藤山外務大臣,佐藤大蔵大臣,赤城防衛庁長官にお尋ねをいたしますが,まず最初に総理に,核戦争が起こったならば,人類は破滅するのではないか,こういうような世界の人々の全体がみな心配していることについて,岸総理はどういうようにしたならば核戦争というものが防止できるとお考えになっておられるか。まず第一番目に,この基本的な問題について,総理のお考えをただしたいと思います。

○岸国務大臣 御承知の通り,今日核兵器を持って対抗した形にあるものは,米ソを中心として,さらにイギリスその他の国がこれに参加しておる。今核兵器の発達の現段階におきまして,これがもしも使用されるということになれば,人類の破滅である,これを何とかして防止しなければいかぬ。それには,一つは東西間の問題を解決するのに,力によらず,話し合いで解決するという機運を醸成し,あくまでも国連を中心とし,あるいはその他の方法において話し合いの機運を醸成する。並びに核兵器そのものに対して,われわれは従来も強い主張をしてきておるのでありますが,これを含む軍縮を実現せしめるという方向に向かって,われわれは努力していく必要がある,かように考えております。

○横路委員 総理にお尋ねをいたしますが,本予算委員会におきまして,先般赤城防衛庁長官は,局地戦争が起きる危険がある,だから自衛隊についてこれを増強していかなければならぬのだという意味のことをお話しされ,そうして全面戦争が起きた場合には,アメリカの報復的な攻撃力を期待しているのだ,こういうように御答弁なされたわけです。この全面戦争が起きた場合における,アメリカの報復的攻撃力とは,これは何かと言えば,それはアメリカの核兵器を期待しているということです。私はこの予算委員会における防衛庁長官の答弁を聞いて,非常に驚いたのであります。総理もそういうようにお考えになっているのかどうか,やはり全面戦争が起きた場合においては,わが国はアメリカの報復的な攻撃力を期待しているのかどうか。報復的な攻撃力とは,それは言うまでもなく核兵器であります。その点について総理はどういうようにお考えになられているのであるか,総理のお考えをただしたいと思います。

○岸国務大臣 われわれの必要なことは,今も申し上げたように,核兵器を用いての戦争をなくするということであります。今日ソ連もアメリカも核兵器をいろいろと研究し,持っておるこの状況は,お互いがお互いのこの力を用いることを抑止する,いわゆる一方が一方に対してこれを用いた場合においては,相手方の報復によってこれは決して一国だけが滅亡するということでないということをお互いが認識して,そうして全面戦争を抑制しておるというのが,私は現在のこの状況であり,また米ソ両国の首脳部が考えておる核兵器についての考え方はそういう考え方であると思います。こういう意味においてこれを一方が用いるならば,相手方は,どちらが用いたにしても,直ちに報復して,そうしてそれに報いるぞ,従ってこれを用いることはお互いに抑制し合うという形において,今日一番核兵器における主導権を握っておる両国は,私はそういう考えに立っておると思います。こういう意味のことを赤城防衛長官が申したことであると思いますが,私はあくまでも全面戦争というものは,これはいかなることがあっても,いわゆる核兵器を用いての戦争というものは,これは先ほど私が申し上げたように,あらゆる方法によってそれを抑止していくということが今日われわれに課せられた義務であり,また米ソ両国の首脳部が最近話し合いの機運を醸成しておるゆえんもそこにある,かように考えております。

○横路委員 今の問題について,衆議院の本会議における総理の施政方針演説の中における今の平和への道をどう選ぶかという考え方と,藤山外務大臣が同じく衆議院の本会議で述べられた平和への道をどういうように歩むかという考え方については,基本的に違うと私は思うのであります。どういうように違うかということになりますと,総理はこうおっしゃっておる。今も大体そういう意味のことをおっしゃったが,「今世界の趨勢は,平和共存の方向へ向かっている,この機運は,東西の集団安全保障を背景とする軍事的均衡のもとにかもし出されているのであります。」だから総理は常に自由主義陣営と共産主義陣営との力と力との均衡がいわゆる平和的共存の方向へ向いているのだという。ところが藤山外務大臣はそうでない,藤山外務大臣は,平和的共存の方向へ向かうその話し合いの空気というものは,「人類の存亡にもかかわる科学兵器の異常な発達を背景としてかもし出されたのでありまして,これがいわゆる現段階における「雪解け」の実情であります。」こう言っている。藤山外務大臣のこの考え方は,世界全般の人の考え方,いわゆる常識的な考え方に立って,平和を求めるものは全部そういう方向で考えておる。ところが岸総理の考えはそうでない。東西両陣営の集団的安全保障,いわゆる軍事ブロックの対立によって力の均衡があるから,これが平和的共存の方向へいっているということになれば,ソ連がああいうように核兵器が異常に発達している。大陸間弾道弾が発達している。だからこの際われわれもアメリカとの安保条約を結んで,万一全面戦争,いわゆる世界戦争に発展する場合があるならば,防衛庁長官のように,当然アメリカの核兵器についても期待をしているということになるではありませんか。私はこれは言葉ではなしに,ちゃんと総理大臣と外務大臣の施政方針演説をたんねんに比較した。総理大臣はどうお考えになるのですか。それともその後衆議院の本会議や予算委員会において各委員から,そうではなしに,核兵器の異常な発達が人類の滅亡にかかわるから,平和的共存の方向へいっているのだという,一般的に考えているそういう世界の情勢に,だんだん総理も考えを改められたのかどうか,その点についてただしたいと思います。

○岸国務大臣 私は外務大臣の申し述べたことと私が申し述べておることとの間には,実は矛盾しておるとはちっとも考えておりません。私も先ほど来申し上げておるように,軍事科学の発達によって核兵器というものの非常なおそるべき威力というものが認識をされ,これが用いられることは世界的な人類の破滅を来たすので,これはどうしてもそういうものを用いさせてはいけない。従って全面戦争なんというものを引き起こしてはいかぬということの信念は,先ほど来申し上げておる通りであります。この気持は世界人類共通のものであって,その点においてちっとも外務大臣の言っておることと私の言っておることとの矛盾はないと思います。ただ世界の現実において,一方においてそういう非常な危険な様相をかもすとともに,それではこの両陣営がそういう武器を一切捨てて,そうして話し合いをしていくという態勢になっているかというと,そういうことではなくして,やはりそういうものの均衡の上に立って,話し合いというものはそういう両方が対立して均衡した状況にあるからこそ,両方がその威力のおそろしい事柄をお互いに認識して,そうして世界の雪解けといいますか話し合いを進めていこう,こういう情勢がかもし出されておるのでありますから,ちっとも両方の間には矛盾はないと思います。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,そうしますと,私が先ほど指摘しました防衛庁長官が本委員会で,全面戦争が起きた場合には,アメリカの報復的な攻撃力に期待している,そういうことはない,こういうようにお考えですね。

○岸国務大国 私は全面戦争というものに対して,米ソ両方が考えておることは,一方が用いたらばおれの方でそれに対してはそれにもまさる報復力をもって報いるぞという,この態勢に両国が立っておるということが,私は現実の状況であると思います。そのことを私は否認することはできぬと思いますが,日本自身の防衛としてわれわれが考えておることは,局地的な問題に対して,今日の状況からいえば,なお危険が全然ないというわけでない。また世界の大勢からいって,東西両陣営がそれぞれ協力関係を強めていき,安全を守るという態勢にある。そういう見地に立つことは当然であると思いますが,今申すように日本自身が直ちに報復力をどうするという考え方は私は持っておりません。

○横路委員 総理大臣にお尋ねをしたいのですが,率直にお話しをしていただきたいと思います。日本が報復的な攻撃力を持つというようなことについては今考えていない。もしもそういうことを考えたら大へんです。私がお尋ねをしているのは,防衛庁長官がここで,全面戦争が起きた場合にはアメリカの報復的攻撃力に期待をしている,こういうふうに答弁をされたから,アメリカの報復的攻撃力とは何かといえば,それは核兵器の持ち込みを期待しているということになるから,それは間違いでございましょう,だから総理大臣から,そういうことについては毛頭考えていないなら考えていないと,こういうふうにお話していただければ,私もそれでけっこうなんです。

○岸国務大臣 いかなる意味におきましても,米軍が日本に核兵器を持ち込むということについては,私はこれを拒否するということを明らかにいたしております。従ってそういう事態は将来においても,決して起こらせないようにいたします。

○横路委員 総理大臣にお尋ねいたしたいのでありますが,この安保条約は,今まで岸総理が組閣されましてから,あらゆる委員会で質問をされましたこれは集約だと私は思うのであります。ですから,経過をたどってちょっと質問をしたいのであります。総理は三十二年の八月十六日の参議院の内閣委員会で,安保条約,行政協定には,原子兵器持ち込みを断わる明文はない。こういうように答弁をされている。総理も今うなずいておりますから,これは間違いないと思う。明文はない。そうしますと,行政協定にかわる合衆国軍隊の地位に関する協定,この中の第二条の(b)項です。「合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は,両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」(a)とはいわゆる日本国内の施設及び区域については,「第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。」こうなっているが(b)の項では,「行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は,両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」こうなっている。そうするとたとえば横須賀にあるアメリカの海軍基地,アメリカの第七艦隊,これは旗艦が重巡洋艦セントポ−ルというので,一万三千六百トンがその旗艦である。そうして米海軍最大の空母七万トンのレインジャ−というほかに,巡洋艦,駆逐艦,潜水艦等がある。このうちの主たる戦力である艦上攻撃機のA4Dスカイホ−プ,これは普通爆薬の空対地のミサイルのほかに,原爆をもってやる攻撃力も持っている。世界最大最強の艦上攻撃機であるA3Dスカイウォリア−は,これは搭載量が二トンないし三トンで,核兵器など大型の爆弾を持っている。このことについては,今総理が御答弁されたように三十二年八月十六日の内閣委員会で,安保条約,行政協定には原子兵器,核兵器の持ち込みを断わることはできない。明文はない。従って横須賀にある第七艦隊では,この核兵器を持っている。このことについて,あとで私は事前協議についてお尋ねしますが,事前協議のときに,合衆国軍隊の重要な装備について変更があった場合には,事前協議になるが,この現在持っているものは事前協議にならないでございましょう。しかも,現在第七艦隊が核兵器を持っているかどうかということについては,政府は調査する権限がございますか。その点についてお尋ねしたいのです。

○岸国務大臣 詳しいことは防衛庁長官からお答えしますが,私の承知いたしております限り,今日まで核兵器を装備した艦隊が日本に入っているということは,そういう事実はないと私は確信をいたしております。

○横路委員 総理にお尋ねしますが,安保条約,行政協定には,核兵器の持ち込みを断わる明文はない,調査する能力もない。なるほど,総理大臣は,核兵器を持ち込まれていないであろうと信じている。それは,あなたの信じているという度合いだ。この点についてはどうなんですか。断わる明文はない。第七艦隊について,核兵器を持っているかどうかを調査する能力もない。そうすれば,行政協定の第二条の(b)項によって,この安保条約並びに合衆国の地位に関する協定が効力を発生したときには,そのときには,すでに持っていることになるではありませんか,その点はどうなんですか。

○岸国務大臣 私がお答えしておるように,現行条約におきましては,はっきり事前協議という明文がございませんから,しばしば国会で質問があったのにお答えするように,条約上の規定としてこれを拒否するという,あるいは相談を受けるということはないけれども,自分はあくまでもこの持ち込みは認めないということを申し,それから日米の間における私とアイゼンハワ−大統領とのこの前のなににおきまして,この運用については日米の間に委員会を作って,そうして日本の国民の利益と国民の感情に合うようにこれを運営していくという委員会が設けられております。いろいろな兵器の問題につきましても,ここにおいて話し合いが従来行なわれておりますが,その場合におきましても,アメリカ側はそういう核兵器を日本に持ち込んだ事実もなければ,実際持ち込んでおらないということが明瞭にされておりますから,私はそういう確信に立っておるわけであります。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,確信をしているというのは信じているということですか。この点については,それならばお尋ねしますが,第七艦隊について核兵器を持っておるかどうかということについては,調査する権限が行政協定でございますか。あるならばどこの明文であるのです。

○岸国務大臣 いわゆる調査する権限は私はないと思います。私は確信をするということは,アメリカ政府の言明も私が今申しておることと同じでございますから,その根拠に立っておるわけでありまして,調査したわけではございません。

○横路委員 それでは総理にお尋ねをしますが,今は調査したことはない,これは調査できないのですから……。そうすると,そういうことがないという確信をしていると言うのだが,そうすれば何か行政協定以上に,核兵器の持ち込みは行なわないということについて,総理とアメリカ側との間に正式に協定を結んだものが他にございますか。

○岸国務大臣 今までは正式な協定はございません。

○横路委員 総理大臣,それならば,正式の協定がなくて,ただ持ち込まないであろうということを確信しているというのは,アメリカの善意に期待しているだけです。私は,この予算委員会における議論というものは,全国民が核兵器が持ち込まれるのかどうか,今の安保条約,行政協定では,核兵器は持ち込まれているのではないかということを常に心配している。だから,今総理の私に対する答弁というのは,あわせて全国民に対する答弁でもある。協定がない。協定がなければ,核兵器持ち込みを拒否することはできない,調査する能力もない,権限もない。それならば,何で一体核兵器の持ち込みはないでしょうと答弁できるのですか。

○岸国務大臣 そういう現行の不備を補うために,今回の条約において事前協議としたわけでございます。こうして従来の事柄につきましては,私は国会を通じて日本国民の意思を内外に明らかにいたしておりますし,アメリカ側との話におきましても,アメリカ側がそういうことはしておらないということを言明しておりますから,これを私は信ずる以外には方法はないと思います。またそういうことはない,従ってそういう事実はないと思います。

○横路委員 今の総理のお話を聞いて,協定はない,調査する権限はない,ただ自分はアメリカの善意に期待して持ち込みがないであろう,こういうことにすぎないのであります。

 次に私はお尋ねをしたいのは,いよいよ三月の十五日には,十カ国によるいわゆる軍縮の委員会が持たれます。先般,中華人民共和国の陳毅外交部長が,中共の参加しない軍縮協定には拘束されないということを言明されている。それに伴ってアメリカの国務省は,その意向として,軍縮十カ国委員会には中共の参加はできないが,軍縮協定には参加させなければならないであろうという意向を声明された。これに対して総理は,この間のアメリカ大統領との共同声明,その直後におけるワシントンの日本大使館における総理と藤山外務大臣とが御一緒で記者団と会見された。総理からは,中共についての情勢,中共に対する日本の考え方を述べたが,大統領は別にお話はなかったという。そうしてアメリカが今後中共に対する政策の変更があれば,事前に協議することになろう,話をしてくれるであろうということを記者団との会見でお話をされている。この問題は,大統領との会見においては,軍縮十カ国委員会には中共は参加させないが,一般的な軍縮協定には中共は参加させないわけにはいかないであろうということは,その共同声明のときにはお話があったのですかどうなんですか,その点をお尋ねしておきます。

○岸国務大臣 私とアイゼンハワ−大統領との会談につきましては,その内容は両人の間の会談でございますから,共同声明以上のことを申し上げることはできません。ただこの軍縮会談というものは,御承知のように四カ国の間におきまして,四カ国会談できまりまして,パリティの共産圏が五カ国と自由国が五カ国,それで十カ国という,これは両方の首脳部において意見が一致したなんであります。これの間に一つの協定が結ばれるならば,これは言うまでもなく今世界の対立しておる東西両陣営がそれに縛られなければ,実は意味をなさないものであります。従って今日の状況において,まだ中共が国際社会の一員として全部から認められておらないという事情のもとに,直ちにそういう国際的な会議に入るというようなことは困難な事情があろうと思いますけれども,しかし軍縮の意義から申して,中共というものが,あの大陸がこれから除かれるということでは,われわれが期待しておるいわゆる世界の軍縮であり,また安心のできる軍縮が成り立たないことでありますから,アメリカとしてそういう場合において入れる−会議自体は両方でおのおの代表者を出して,両方が承認し合って出たのだからこれを変更するわけにはいかないけれども,協定ができた場合においてその効果がこの地域にも及ばなければ意味をなさない。従ってその状況を私はアメリカが言ったものである,かように思っております。また日米の間において,中国の問題さらにアジア全体の問題について両方において常時連絡し,また協議し合うということは,中共の問題を含めて,そういうことは共同声明に盛られておる通りであります。

○横路委員 私,総理大臣にお尋ねしておるのは,この軍縮十カ国委員会には中共は参加させないが,しかし一般的な軍縮協定には中共を参加させなければならないであろうということについては,お話があったのですかないのですかと聞いているのです。具体的に聞いているのですよ。あったのですか,ないのですかと聞いている。その点はどうなんですか。

○岸国務大臣 その点は,私最初に申し上げた通り,アイゼンハワ−大統領と私の会談については,共同声明以外のことは申し上げることはできません。

○横路委員 総理は,どうしてそういうようにのがれるのですか。あったのですか,ないのですかと聞いている。それが共同声明以上出ないということになれば,あなたは,十九日共同声明以降においてワシントンの大使館で,アイゼンハワ−大統領に言うた,中共についてはこうだ,日本はこれからこうしたいと思うが,その点についてはアメリカは何ら話がなかった,そうして大統領の意向としては,中共に対する政策は変更しないというようにわれわれは考えた,だから,もしも将来政策の変更があるならば,事前に話があるだろう,こういうように言われているではありませんか。だから,一体あったのか,ないのかと聞いている。なければない,あったのならあったと答弁していただきたい。一体どうなんですか。

○岸国務大臣 今申し上げた通り,私としては共同声明以上のことを申し上げることはできません。

○横路委員 総理,だからあなたは,いかに安保条約について対等だ,自主性だと言っても,何ら自主性を回復していないではありませんか。あなたは記者団との会見において言っているじゃありませんか。またあなたは,大使館において日本人の記者団に話したことは,日本人の記者は,あんなものは相手にならないから,そんな国内報道は全然信用できないとおっしゃるのですか。一体どうなんですか。こういうように,大事なところになると,口を緘して語らない。国民に真相を知らせようとはしない。これが安保条約に対するあなたたちの交渉の経過ではありませんか。どうなんです,一体。もしも言い分があるなら言ってもらいたい。

○岸国務大臣 私は,こういう外交上の首脳部の間の話というものは,いかなる場合におきましても,両国の間において責任を持って言うことはどの範囲だということを打ち合わせるのが慣例でございまして,その場合において,共同声明以上のことはお互いに言うまいということに話し合いがなっておりますから,それ以上のことを申し上げることはできない。これから・・・・・。(発言する者あり)安保条約の問題につきましては,いろいろお尋ね下さるならば,何事でもお答え申し上げます。今のなにについては,そういうことで御了承願いたいと思います。

○横路委員 私は,総理大臣のこの態度は非常に遺憾だと思うのです。しかし,総理大臣にこれ以上この問題について追及しても,あなたはがんとして共同声明以上は言えないというのなら,それじゃ次にお尋ねしますが,総理自身は一般的な軍事協定に中共が参加することは好ましいと考えているのですか,どうですか,その点は。

○岸国務大臣 私は,そういう一般的な軍縮協定ができた場合において,中国大陸がそれから除かれるということは好ましくないと思います。従って,日本としては,特に日本の立場から申しましても,そういう軍縮協定に入るべきことを強く望むものであります。

○横路委員 先ほど私は,核兵器について,核戦争についての全面的ないわゆる防止について,総理の所信を承ったわけです。今アメリカとイギリスとソ連との間には,核実験停止についての会議を持っている。しかしこの停止の会議が幸い成功しても,総理も御存じのように,ここ一年か二年の間には,中国もおそらく核実験をやるのではないか。そうすれば,アメリカとイギリスとソ連の核実験の停止の会議が成功したとしても,その査察その他は,中共を加えなければ私は意味がないと思う。この点については総理のお考えはどうですか。

○岸国務大臣 私も全然その点においては横路君と同じ考えを持っております。また現在三カ国の間の核実験を中止する話し合いのうちにも,アジアに対して非常に数の多い査察個所を設けるべきだということを提案しているようでございまして,私はやはり全世界がこれに縛られるようにならなければ意味をなさない,かように思います。

○横路委員 総理にお尋ねしますが,このアメリカとイギリスとソ連の三カ国の核実験停止会議というのは,これは国連の中で持っているのですね。そうすれば,今あなたが答弁されたように,中共をアメリカ,イギリス,ソ連の核実験停止会議の中に入れて,その協定に参加させなければならぬ,そういう考え方には同意をする。そういうことになれば,当然次の段階は,中共の国連加入ということが起きる。この点については総理のお考えはどうなんですか。今の私の質問に対する総理の答弁からいけば,当然中共は国連加入されなければならないということについて,私は総理は承認されたものと同じだと思うのです。その点はどうなんですか。

○岸国務大臣 十カ国軍縮会議におきましても,参加しない国をどういうふうにして拘束するか,また三カ国の核実験中止のこの協定におきまして,参加しない国をどういうふうに拘束するかという問題は,これはおのおのその必要によって考究しなければならぬと思います。私は,この中華人民共和国を正式に承認するとか,あるいは国連に加盟せしむるとかというようなことは,これは広く世界全体の,世界政治の上から考えなければならぬと思います。従って,ただ軍縮だけの意味からこれを論ずることは適当でないと思いますけれども,軍縮の問題で少なくともそういうことが取り上げられるようになってくれば,ますますこの問題に対しての検討をしなければならない,世界各国がそういう必要に迫られる情勢にあるということは,私は認めます。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,総理大臣は,この安保条約の提案についてこういうように言われているのですよ。国連憲章の精神に徹底して,しかも国連憲章の原則を厳格に実践して,国連憲章が真の意味において,世界の平和と安全が保障できるようになることを,あなたは期待している。それならば一体なぜ−そのアメリカ,イギリス,ソ連の三国の核実験停止会議に中共も参加することは,あなたは希望しこれに同意される。軍縮十カ国委員会が決定された一般的な軍縮協定への中共の参加は,期待し希望している。それであるのになぜあなたは,中共の国連加入については,今ここで期待し希望しているという,あなた自身のお考えを述べることができないのですか。中共については,軍縮,核実験停止会議についても,参加をあなたは希望し期待しているのに,国連を真の意味において世界の平和を達成できるような国連にするために,なぜあなたは中共の参加について期待し希望しないのですか。

○岸国務大臣 誤解があっちゃいけませんが,私は,十カ国会議に参加することを期待し希望するとか,あるいは三カ国会議に参加することを期待し希望するとかと言っているのじゃございませんで,その効果がこれを拘束することを,希望するなら希望すると,こういうことを申しております。また,国連の加盟問題については,従来御承知の通り,国連は中華民国を代表として,これを国連の安保理事会の常任理事国の一員にもいたしております。しこうして,いわゆる中国は一つであるという意味において,二つの代表を認めることに対しては,両政府ともこれは強く反対しております。そういう事情のもとにおいて,直ちにこれをそういう情勢を調整せずして,国連の加盟問題というものを決することは,国際上実際上私はできないと思うのです。従って,そういう意味において,今すぐ加盟を期待し,希望するというふうに言うことは,私は先ほど申しているように,世界政治の流れのうちにおいて調整し解決しなければならぬ問題を解決した後に,われわれの態度を明らかにすべきものである,こう思っております。

○横路委員 私は今の総理の御答弁を聞いて,いかに中国に対して,中国との国交回復について自主性がないかということを,私は明瞭に物語るものだと思うのです。

 藤山外務大臣にお尋ねします。私はこの衆議院本会議における藤山外務大臣の外交方針演説を聞いて,あなたは総理大臣とはだいぶ違うわけです。総理大臣はその施政方針演説の中では,中国との国交回復は一つも触れていない。なぜか一つも触れていない。一言半句ないです。しかしあなたはだいぶの時間を費やして,ここで書いている。そこで私はあなたにお尋ねをしたいのですが,あなたのお言葉の中に,「わが国独自の立場から,中共側の誤解を解き,現状の打開をはかることも必要と考えるのであります。」今総理の話は,それは世界の流れの中で解決しなければならぬと言うて,日本自身がどうするかということは一つもない。今あなたお聞きになったでしょう。ところがあなた御自身のこの施政方針演説の中では一間違うと困ると思って私は演説書を持ってきているのですよ。あなたはこの中で「わが国独自の立場から,中共側の誤解を解き,現状の打開をはかることを必要と考える」というのは,一体具体的にはどういうことなのですか。この点についてお尋ねをしたいのです。

○藤山国務大臣 中共との関係につきましては,大きな意味において二つの面があると思います。今総理が言われましたような国際的な環境の中における一つの問題と,それから日本と中共との関係という二つの面があろうと思います。中共と日本との関係におきましては,残念ながらはなはだ両国が近いだけにと申しますか,あるいは親しいだけにと申しますか,誤解が相当にあることは事実と思います。今回の安保条約の改正にあたりましても,私は日本の改正の真意をいうものが,必ずしも正当に中共側には伝えられていないというふうにも思います。従ってわれわれがやはり誤解を解くべきことは,できるだけ両国の間においてやって参らなければならぬと思うのであります。同時に,私は国際社会の一員としての日本としては,先ほど総理が言われましたように,現在いろいろな歴史的な事実もございます。従いましてそれらをほぐして参るということも,またその流れの中において世界各国がこれは努めていくことだと思うのでありますが,日本としてやはりアジアの一員であります以上は,西欧あるいは東欧圏の人々よりも,歴史的に見ましても,アジア人の気持ちというものをお互いに理解しやすいかと思います。歴史的に見ましても,イギリスの極東に対する考え方,あるいはアメリカの考え方というものが,必ずしも日本人が考えているような考え方を,何といいますか心持というものを理解し得ないところもあろうかと思います。そういう点につきましては,やはり自主的な立場に立ちまして,各国に対してアジア人というものはこういうものの考え方をするのだ,従ってそういう点についてはそういう言い方あるいは考え方をしても,それは必ずしも西欧側の考えているような意味の表現ではないのだというような点は,われわれ日本人が比較的理解しておるのではないかと思うのであります。そういう点につきましては,やはり日本が自主的に世界の各国に対して十分な理解を進めていって,そういて終局において中国大陸の問題が円満に解決をするように努力していくのが日本の務めではないか,こう考えておりますので,総理の言われましたことと違っておらぬと私は思っております。

○横路委員 藤山外務大臣,あなたはこの言葉の使い方を間違っていますよ。あなたはここで,「わが国独自の立場から,中共側の誤解を解き,現状の打開をはかることも必要と考えるのであります。」あなたは今何と言ったのです。アジア人の気持は日本がよくわかっているから,アメリカや西欧側に話をするのだ。そのことと,あなた自身が,わが国独自の立場から中共側の誤解を解くということとは違うではありませんか。一体何をおっしゃるのです。一体そういうことで国会の答弁になりますか。ならないではありませんか。だから私はあなたに聞いているのは,日本の立場においてアメリカの誤解を解くとかなんとかを聞いているのではない。あなた自身がわが国独自の立場から中共側の誤解一中共側の誤解だ,アメリカ側の誤解じゃないのだ,これは。だからわが国独自の立場から中共側の誤解を解くとはどういうようになさることですかと聞いておる。その点を具体的に話してもらいたい。

○藤山国務大臣 決して私の申し上げたことが,今の横路氏の御質問にそれて答えているつもりはないのです。前段の場合は日本と中国との関係を申し上げたので,それにつきましては,やはり二国間で日本に対する誤解もある,それは中共側が故意に誤解した場合もありましょうが,あるいは日本側の表現が中国側の誤解をもたらした点もあろうかと思います。前段にはそれを申し上げたつもりであったわけであります。

○横路委員 では外務大臣にお尋ねしますが,その二国間一その二国間とは日本と中共,その相互の誤解を解くというのだが,どういうことで解くのですか。正式に政府の代表でも北京に派遣をしておやりになるというのか,具体的にはどういうのですか。言葉の上ではないですよ,具体的に話してもらいたい。

○藤山国務大臣 むろん誤解を解くにつきましては,いろいろな方法が考えられると思います。従いましてわれわれとしては,そのときに応じ,そうしてそれらの手を打っていくということが必要であることは申すまでもないのでありまして,何か特定の方法だけを取り上げて言うというわけではございません。従って今後ともわれわれはそういう基本的な態度をもって進んでいきたいということを,外交方針の演説では申したわけでございます。

○横路委員 藤山外務大臣にお尋ねしますが,いろいろな案で,いろいろなやり方で一これはあれですか,中国に対してはあるいは藤山外務大臣みずから北京に訪れて誤解を解くというようなことも考えているとも言うのですか。あるいは正式に与党としては代表者を派遣しておやりになるというのですか。それとも社会党のそれぞれの主要なメンバ−に御相談されてあるいはやるというのですか。どうしておやりになるというのか。われわれが期待しているのは,ここにせっかくあなたがわが国独自の立場から中共側の誤解を解くというのは,少なくとも政府みずからの責任において中共の誤解を解くということでなければ,何で政権を担当している意味がありますか。何で外務大臣をしている意味がありますか。だから,政府みずからの責任でどういうようにしておやりになるのかと聞いておる。いろいろありましょうが,そのいろいろのうちの大事な点についてあなたにお尋ねするのです。

○藤山国務大臣 むろんこれらの方法については今お話し申し上げましたように,そのときそのときによっていろいろな方法があると思います。今日自由民主党の方々が中共に行かれましていろいろな実情を見ておられることも事実であります。また一般的に文化交流その他で相当行かれる方を通じて,そういうような素地を作っていくことも必要だと思います。私は,昨年の国会において,時期さえくればいろいろな点について大使級会談等もやってよろしいということを申しておるのでありまして,必ずしも政府の責任を逃げるわけではございません。しかし,それについて外交上の問題についてはおのずから時期,方法,そういうものがございまして,今からこういう方法でやるのだということだけを一つきめて参るというわけには参らぬのでありまして,いろいろなことを考えながら進めていくというのが外交の普通の方法だと考えております。

○横路委員 藤山外務大臣も外務大臣とされて対中国との国交回復についての基本的な方針をお持ちにならないで,ただいろいろな方法でいろいろな方法で,これでは一体どういうことになるのです。

 総理大臣に私はお尋ねをしたいのですが,総理大臣がアイゼンハワ−大統領との間の共同声明,その後の記者団との会見,それが国内に報道されますと,一月二十二日岡山市で三木武夫氏が記者会見を行なって,こう言っています。「岸首相,藤山外相が中共問題はことしの日程に上っていないというように受け取れる発言をしたのは不見識である。日本の立場からすれば中共問題はすでに日程に上っているものとして日本の意見を持たなければ,世界の政治に対して無責任ということになる。日本が前向きの姿勢で対処しようという心がまえを持たない静観主義というものは全くつまらない。」こう言っているのです。あなたのことを不見識だと言っている。どうですか。しかも与党の重要なメンバ−ですよ。この点についてはあなたはどう思うのです。あなた御自身も不見識と思うのか,三木武夫氏の発言は不届きだと思うのか,どっちなんです。

○岸国務大臣 私は私の考え方について,態度について,私及び外相の態度につきまして,不見識だとは思っておりません。

○横路委員 それでは岸総理にお尋ねしますが,今藤山外務大臣が言われたように,わが国独自の立場から中共側の誤解を解くということについて,あなたは責任者である総理大臣として,この安保条約がもしも発効された以降においては非常に困難になる,一体この中国との国交回復は,安保条約調印のときに中国との国交回復については考えておられるはずなんだ。もしもそれを何も考えていないということになれば,それは三木武夫氏の言われるように不見識だということになる。考えていれば不見識ではないでしょう。不見識かどうかは,三木武夫氏ばかりではなしに,これからのあなたの答弁によってわれわれが判断することになると思う。そこで,一体どうなさるのですか。調印をしたときは,中国との国交回復は困難になるであろうと,だれでも考えたことだ。それについてあなた自身は,ことしはどうやってわが国独自の立場で中国との国交回復をおやりになるのか,その点について明らかにしていただきたい。

○岸国務大臣 私はこの中国との関係を何も今年の日程に上してこれをどうしなければならぬというふうには考えておりません。私は長い歴史的な関係においてもまた民族的な関係においても,中国の現状の関係はこれは両国にとって不幸である,これを是正していくことは,しばしば申し上げているように,お互いがお互いの立場というものを十分理解し信頼し合うという基礎を作らなければならぬと思います。こういう考え方は私の一貫して持っていることであります。また安保条約によって日本があくまでも自由主義の立場を堅持し,日米との協力によって日本の安全と繁栄をはかっていくということは,私はこれは日本の進むべき基本の態度でありまして,これが他国に気に入らないからこれをどうするというような考えこそ不見識な考えであって,日本は自主的に日本の行くべき道,日本の安全と繁栄を求むべき道は,これは確固としてとる,この状態をやはりすべての国の人が理解し,認識し,またそれを尊重するということでなければ,私は真の平和であるとか友好関係というものはできない,こういうふうに考えております。

○横路委員 今日中共側の多くの誤解というのは岸総理個人の言動にあるのですよ。そのことについては何もお気づきになったことはありませんか。長い間の,先般の昭和六年以降昭和二十年八月十五日までの戦争,そのときにおける閣僚としての重要な責務を果たした岸総理,そうしておそらく,三十二年ですか,岸総理の東南アジアの歴訪のときには中共側もあるいはみずからあの戦争の責任をわびてこられるかと期待していたかもしれない。しかしその以降における台湾の台北における発言その他こういうものを考えたときに,中共の誤解は総理御自身の過去の言動に多くあると私は思うのですが,その点については全然反省なさっていないのですか。総理御自身としては,自分の過去の言動について,中共の誤解を招くことは絶対にない,こういうようにお考えになるのですか,その点についてお尋ねしておきます。

○岸国務大臣 中共側からは,今横路君の指摘されるように私の個人に対するいろいろな誤解であるとかあるいは私の言動に対しての批判というものが行なわれていることは,これは事実であります。私は,今日この政局を担当しておりますのは,自由民主党の総裁としてこれを担当しているわけであります。自由民主党の政策を私は忠実に実現しておるのでありまして,この点に関して私自身の個人に対する批判であるとか,個人を非難するというようなことは,私は両国の今後の親善関係なりあるいは友好関係を進めていく上から申しますと,お互いの国の個人を批判し,個人に対して非難を加える云々ということではなしに,やはりその国の政局を担当しておる基礎になっておる考え方自身を私は批判し,あるいはそれが気に入らない場合においてこれに対して批評を加えるということが適当である,かように思っております。

○横路委員 総理大臣,私はあなたにお尋ねしますが,自分は自民党の総裁として政治の責任をとっている。なるほどあなたが自民党の総裁として多数によって総理に選ばれたことも事実であります。しかしあなたは,総理大臣として,国民全体がどのように一体生活が豊かで,これからの日本が平和で安全であるかということについては,国民全体にあなたは責任を負っているではありませんか。それをあなたは今何です。私は自民党の総裁としてやるのだということは,それこそ不見識ではありませんか。

 さらにあなたにお尋ねをしたいのは,なるほどあなた御自身は自分の過去における言動については,中共側の誤解もあるだろう。しかし自分の過去における岸個人のそういう言動に対する中共側の誤解と,今自分が総理大臣としての自分に対する態度を同じように考えていることはいかにも不届きだという印象を受けたのであります。しかしあなたはやはり岸総理大臣なんだから,あなたは当然そういう立場においても,過去のそういう誤解を与えていた点があれば,そういう誤解をお解きになるというのが,総理大臣の責務だと私は思いますが,どうですか。

○岸国務大臣 私が先ほど申し上げたことは,私が総理大臣として施政を行なっていくのに,決して国民全体の福祉を考えない,党だけを考えているというような意味で申し上げたのではないのであります。言うまでもなく,今日の政党政治としてある以上は,その政策の基本というものは,岸個人が考えることではなくして,政党の政策を基準として考えて,これを行なっておるということを申し上げたのでございます。言うまでもなく,私は個人としてのなにに対する批判につきましては,私個人として考えて反省すべきこと反省していくということはこれは当然であると思います。しかし今いわゆる岸内閣の政策を批判するというような場合においては,やはり自由民主党が国民に対して公約をし,また国民に明らかにしておる政策や基本方針というものを実行しておるのでありますから,これに対してわれわれは政治上の責任をとっていく,こういう性質のものであろう,こういうふうに思います。

○横路委員 私は次の問題に移りたいと思います。

 総理にお尋ねをしますが,総理は憲法では戦力を持つことは禁止されている。このことは総理御自身もこれには同意をされると思う。まさか総理御自身が,憲法では戦力を持つことは禁止されてないのだなどとはおっしゃるまいと思う。しかし総理は,今までの国会における憲法解釈としては戦力はない,しかし固有の自衛権はある。従って戦力に至らざる最小限度の自衛力は必要だ,こう述べていらっしゃる。それで私はお尋ねをしたいのは,戦力に至らざる最小限度の自衛力というものは一体どんなものなのか,その点についてお尋ねしたい。これがまずこの条約の根本を流れている精神ですから,私はお尋ねをしたいのです。

○岸国務大臣 これは従来の国会においてもしばしば議論が行なわれた問題でございまして,具体的な標準を示すということは実際上は私はできないと思います。しかし,憲法の解釈として,九条の一項において自衛権が認められてるということは,だれも疑いを持たないのであります。また二項において戦力を否定して,持たないという明文があることも事実であります。その問題において,この自衛権というのは,ただ観念上の自衛権があって,何ら実力の裏づけのない観念上の自衛権であるかといえば,そういうことはだれも考えないと私は思います。そこで,自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力は,いわゆる二項にいう戦力には入らない,こういうふうに解釈するのが適当であるというふうに思っております。

○横路委員 総理大臣,今総理大臣の御答弁を国民全般が聞いたときに理解できますか。戦力は憲法では禁止されている,しかし固有の自衛権はある,だから戦力に至らざる最小限度の自衛力を持つ必要がある,言葉では表現できない,これは一体どういうことなんですか。総理大臣,これで国民は納得できますか。もう一度,戦力に至らざる最小限度の自衛力というのは一体何なのか,その点についてお尋ねします。

○岸国務大臣 先ほど申し上げました通り,従来の憲法論議におきましても明らかになっておりますように,この戦力と自衛権の裏づけとして必要最小限度の実力というものとの限界をどういうふうに考えているかという問題については,これを数字的にあるいは具体的に明らかにすることは,何人といえども困難であると私は思います。ただ問題は,そのときの国情から見まして,われわれが自衛権を裏づけるにこの程度は必要やむを得ないものであると考える程度を越すか越さないかということで判断していくほかはないと思います。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,今総理のお話しを聞いていると,戦力と戦力に至らざる最小限度の自衛力というものについては限界はないと言う。限界はなかったらだれが判断するのですか。それならば,国民から,いわゆる今日の最小限度の自衛力は明らかに憲法違反だ,こう言われても,あなたは何ら弁解ができないではありませんか。あなたは限界がないと言った。そんなばかなことはないですよ。限界があるはずですよ。その限界は何なのですか。

○岸国務大臣 私はその限界がないと申しておるわけではありません。限界を数字的にあるいは具体的に,何らかの形においてこれを示せと言われるならば,それは私は実際上できないと思う……。(発言する者多し)観念的に限界のあることは事実であります。

○横路委員 それでは私はあなたに具体的にお尋ねします。あなたは三十二年五月七日の参議院の内閣委員会で,「核兵器と名のつくものは一切が憲法違反だというのは言い過ぎだと思う。憲法第九条は自衛に必要な最小限度の実力を認めているものであり,将来科学兵器の発達とにらみ合わせて,他から侵略されることを阻止するための実力を持つことを考慮しなければならない」と答弁しているではありませんか。あなたは核兵器を持っても自衛隊は憲法違反でないと答弁しているではありませんか。それならば,一体それ以上の戦力というのは何なのですか。

○岸国務大臣 もちろん自衛権の範囲内ですから,他国を侵略するとか他国を積極的に攻撃するというような実力を持つことが許されないことは,言うを待たないところであります。あくまでも自衛の範囲内に限らなければならないことであります。そうして,私の参議院における答弁を引用されましたが,私の申し上げているのは,すべての核兵器が,核兵器という名前がつけば直ちに,これはどんなものもいけないというふうに憲法に規定しているというふうに解釈すべきものではない。もちろん自衛権の範囲内でありますから,原水爆のごときもの,あるいは大量殺戮,攻撃的なものを持つことのできないことは当然であるけれども,ただ核兵器という名がついたからそれは憲法に違反しているのだというふうに言うことは,これは適当ではなかろうということを申したのでございます。

○横路委員 そうすると,今あなたの御答弁では一核兵器というのは核弾頭のつくものですよ。核弾頭のつくものが核兵器ですよ。あなたは今,大陸を攻撃するようないわゆる長距離弾道弾だとかあるいは中距離弾頭{前1文字ママとルビ}弾だとか,そういう攻撃的なものは憲法違反だ,しかし自衛のためであるならば,核兵器を持っても憲法違反ではないということを,あらためてここで確認をなさったわけです。それでよろしゅうございますか。これは大問題ですよ。

○岸国務大臣 今日行なわれておる,実際にわれわれの承知しておるいわゆる核弾頭を持っておる核兵器というものが,われわれが考えておるいわゆる自衛を裏づけるに必要な最小限度の実力のうちに入るとは,私は思っておりません。しかし,将来核兵器というものの発達が非常に著しいなにであって,そういうことが可能であるかどうかは将来の問題でありますけれども,ただ核兵器と名前がついたから憲法違反だ,あるいはミサイルと名がついたからいかぬというふうな解釈をすべきものではなくて,そのときにおける実際の兵器の性質から論ぜなければならぬということを申したわけでございます。

○横路委員 今の総理の御答弁ではっきりしたわけです。今は持たない。現状のいわゆる兵器の発達の段階では持たない。しかし将来核兵器というものが発達をしてくれば,将来は持つ場合もあり得る,こうあなたは答弁された。そうすると,あなたの御答弁の中で戦力に至らざる最小限度の自衛力とは,結局相対的なものだ。絶対的なものではない。相手が核兵器を持てばこちらも自衛のために核兵器を持つ,それが中距離弾道弾程度になるならば,こちらも中距離弾道弾,こういうように,戦力に至らざる最小限度の自衛力とは相対的なものであるという点ははっきりしたわけですか,その点はどうなんですか。一法制局長官,何もあなたが指図しなくたっていいですよ。

○岸国務大臣 はっきりしていることは,言うまでもなくわれわれの持っておるのは自衛でありますから,それを裏づけるところの実力も自衛に必要なものでなければならないことは,言うを待ちません。他を侵略するとか,あるいは中距離弾道弾だとかあるいは大陸間弾道弾というようなものがいかに発達しましても,それを持つというようなことは,これは自衛権の内容としては私はあり得ないと思います。ただ具体的に,ミサイルが発達して,そうして地対空のミサイル,短距離のミサイルというようなものがずっと開発されていく。核弾頭は用いないけれども,普通の弾頭において,そういうものを全然無視して,ミサイルは一切持たないというようなことは,私は言うべきものではない。そういう点においては相対的という−いろいろな科学兵器の発達なんかとにらみ合わしていかなければならぬことは言うを待ちません。しかし本質的に,われわれの持つものはあくまでも自衛であって,決して他を侵略するような性格のものを持つものではないということは明瞭にいたしておきます。

○横路委員 総理にお尋ねしますが,私はこの問題はもう一度聞いておきたいのです。核弾頭のついたものであっても,自衛のためであるならば持つことはあえて憲法違反ではない,それはもちろん将来にわたることではあるが……。そうですね。核弾頭がついても,それが自衛のためであるならば憲法違反ではない,今持つか持たないかは別だ,これですね。一つはっきりしておきたいと思う。もう一ぺん御答弁願いたい。

○岸国務大臣 間違ってもらってはいかぬと思いますが,憲法論と政治的の問題とは別であります。持つか持たないかという問題と憲法の解釈論とは別であるということを前提にはっきりしておきます。憲法論としては,自衛のために持つところのいろいろな兵器は,目的が自衛であり,またそういう性格の兵器であるならば,ただそれが核兵器であるというために憲法違反であるという解釈は憲法の解釈として適当でない,かように思っております。

○横路委員 今まで三十二年以来,内閣委員会,予算委員会,本会議等で論議をされました今の問題,あくまでも憲法上の解釈に従えば,自衛のためであるならば核兵器を持つことはあえて憲法違反ではない,この点がきょうの総理の答弁ではっきりしたわけです。

 次に,私は,今まで基本的な問題について触れましたから,安保条約の内容についてこれからお尋ねをしたいと思うのです。

 まず第一番目に第五条の問題ですが,第五条には,御承知のように,「いずれか一方に対する武力攻撃が,自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め,自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とある。私は言葉ではっきり聞いていきたいのです。「武力攻撃が,」とあるが,この安保条約は,国連憲章五十一条に基づいて,これは総理がたびたび言われているいわゆる個別的集団的自衛権ということで一国連憲章五十一条には「武力攻撃が発生した場合」と規定されている。それで私がお尋ねしたいのは,この条約第五条の「武力攻撃」というのは,国連憲章五十一条にいう「武力攻撃が発生した場合」というように限定してあるのかどうか,それ以上にほかの意味があるのかどうかお尋ねしたいのです。

○岸国務大臣 私は同じ意味だと思います。

○横路委員 私はその点が疑問なので,今総理にお尋ねしたのですが,総理は同じ意味だと言う。

 次に私がお尋ねしたいのは,「自国の憲法上の規定及び手続に従って」というのは何を意味しているのですか。今の憲法には,いわゆる宣戦布告の件についてとか,あるいは出動命令についての手続とかいうことは規定されていない。それをわざわざここに「自国の憲法上の規定及び手続に従って」とうたっているのは何を意味されていますか,その点をお尋ねします。

○岸国務大臣 もちろん憲法に直接規定のあるもの及び憲法に基づいて作られておるところの法律というものを含めておると私は解釈いたします。

○横路委員 それでは総理大臣にお尋ねしたいのですが,憲法上の規定及び法律上の手続という,その憲法上の規定とは何ですか。それから法律上の手続とは何ですか。その点についてお伺いいたしたいと思います。

○岸国務大臣 憲法上は,先ほど来論議されております憲法九条の解釈の問題だと思います。それから憲法に基づく規定については,自衛隊法,いわゆる自衛隊が防衛出動する場合のなにについての規定がございます,それらを含めて申したわけであります。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,そうすると,自衛隊法の手続に従ったわけですね。それは間違いございませんね。それも含まれておるわけですね。

○岸国務大臣 日本の自衛隊の行動に関しては,日本の自衛隊法に従うということであります。

○横路委員 わかりました。今総理から,条約第五条にいう「武力攻撃」とは,国連憲章五十一条による「武力攻撃が発生した場合」と同じである,こういうようにお話しがあった。しかも,それは,自国の憲法並びに手続上−手続とは,自衛隊の出動は自衛隊法に従うという。そこで,私は,総理大臣から今そういう御答弁を得たので,自衛隊法第七十六条出動命令について,総理も御存じだと思いますが,お読みしてみたいと思う。「内閣総理大臣は,外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)」ここが大問題なんですよ。私がお尋ねしたいのはそこなんです。総理大臣は,国連憲章にいう武力攻撃の発生した場合だけこういうふうに限定すると答弁された。しかしあなたが今おっしゃった憲法並びに国内法の手続に従っては,自衛隊法第七十六条出動命令については,「内閣総理大臣は,外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して,わが国を防衛するため必要があると認める場合には,国会の承認を得て,自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」そうするとおかしいじゃありませんか。この点は,条約の第五条は,武力攻撃の発生した場合と規定し,自衛隊法第七十六条は,外部からの武力攻撃のおそれがある場合を含むと規定しているが,これは矛盾しておりませんか。非常に危険な条文ですからお尋ねしているのですよ。

○岸国務大臣 私は,その点については,条約と自衛隊法とは関係ないと思いますが,条約においては,武力攻撃が現実に起こった場合において,両国が行動する場合のことを規定したのであります。いわゆる自衛隊が自衛隊として行動することに関しては,そういう武力攻撃が現実にあった場合のほかに出動することもできますし,あるいは内乱の場合にも出動することができますし,その他のいろいろな場合にも出動できるのでございまして,それと条約とは関係がございません。

○横路委員 総理,私は今条約の第五条を聞いているのですよ。第四条を聞いておるのではない。第四条はいずれ聞きますが,第五条は「各締約国は,日本国の施政の下にある領域における,いずれか一方に対する武力攻撃が,自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め,」云々となっておる。あなたは今この点については,自衛隊の出動はそれは別なんだ−私は第四条のことはまた別に聞きますよ。第五条について,あなたが内閣総理大臣として,七十六条に基づいて,自衛隊の全部または一部を出動させるときは,外部からの武力攻撃並びに外部から武力攻撃のおそれのある場合を含んで命令を下すというじゃありませんか。それでは今度自衛隊法のカッコの中はこの条約に従って修正するのですか,この点はどうなんです。

○岸国務大臣 この条約の五条によって日米両国が共同の措置をとる場合におきましては,現実に外部から日本に対して侵略が行なわれた場合であります。その行なわれた場合に,自衛隊を出動させるについては,今の自衛隊法の規定に従って,それぞれ国会の承認を求むべきものは求むるとか,その他の方法をとるべきものであると思います。ただ自衛隊がいかなる場合に出動するか,いかなる場合に行動するかということを広く自衛隊法は規定しておるのでありまして,条約と自衛隊法とが全部場合が重なっておるわけではないのでありますから,今のカッコの場合におきましては,いわゆる五条の範囲内には入ってこないと思う。しかしそれだからというて,それでは自衛隊法のそれを削るということは必要ないのであって,日本は日本の立場におきまして実際の出動命令を総理大臣として行なわなければならぬ場合があると思います。それは直ちに条約に来るというわけではない。条約に来る場合には,現実に侵略があった場合,そのときに立ち上がって,現実にいろいろな対抗行動をとる,こういうことになると思います。

○横路委員 わざわざ第五条に「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こういうふうに書いてあるから私は聞いたのです。すなわち,自国の憲法上の規定並びに手続とは,今日はこの自衛隊法による出動命令以外にないのです。だから聞いている。そうするとこういう解釈になるのですか。この第五条に基づく場合は武力攻撃の発生だ,しかし日本の自衛隊の場合には自衛隊法によって武力攻撃のおそれのある場合についても出動命令をする,しかし米軍は武力攻撃が発生した以外は出ないのですね。この点だけはっきりしておいていただきたいと思います。

○岸国務大臣 その通りでございます。

○横路委員 なお総理にお尋ねしますが,一昨日今澄委員の質問に答えて,実力で侵略されれば直ちに実力で排除するというのが自衛権の本質だ,だから,直ちに実力攻撃に対しては実力行動をやるのだ,こういうように御答弁されましたが,それが私は自衛権発動の全部ではないと思うのですが,総理は,実力で侵略があれば直ちに実力で排除するのだ,こういうお考えには依然として変わりはございませんか。

○岸国務大臣 ちょっと私の申し上げたことと今の御質問との間に,私の気持にしっくりしないところがあるのですが,私はこういうつもりで申し上げたわけです。実力の行使があった場合において,自衛権の発動としてこれを実力を用いて排除することは,当然自衛権の範囲内に入る。しかし日本の政治として,何か侵略があったら直ちに自衛力を用いて実力を行使するかいなかということは,またおのずから別な問題でありまして,自衛権の本質というものは,実力があったら,その実力が大きかったら発動し,小さかったら発動しないというものではないと思う。しかし政治的にどういう措置をとるかということはおのずから別に考えなければならぬという意味に申し上げたのであります。

○横路委員 それではお尋ねしますが,第五条の中で,共通の危険に対処するように行動する−政治的には自衛権の発動をして直ちに出動命令をするか,あるいは場合によっては平和的な解決による外交交渉に移すか,あるいは後段にはいわゆる国際連合の安保理事会に報告して,その決定があれば直ちに停止しなければならぬということもあるが,しかし平和的な交渉に移すという場合もあるでしょう。あるいは国連に直ちに提訴するという場合もあるでしょう。そういう場合の判断は日本とアメリカとのどこでするのですか。そういう場合の判断はどこでなさるのですか,政治的には。

○岸国務大臣 日本に対するところの侵略についての最後の決定は,私は日本がやるべきものだと思います。しかしいろいろな情勢については日米の間に機関を設けて常時協議もいたしますし,そのときの情勢判断等もいろいろ行なわれることだと思いますが,日本がどういう態度をとるかということは,日本政府が決定するす{前1文字ママとルビ}べきものだと思います。

○横路委員 藤山外務大臣にお尋ねしますが,今総理から常時の協議機関がある。あなたもこの間土曜日に御答弁されているが,簡単に軍事委員会といいますか,そういう御答弁だけだった。常時の協議機関とは一体どういう構成なのか,どういう権限があるか,その点を明らかにしていただきたい。

○藤山国務大臣 今回条約の運営にあたりまして日米間に委員会を作りますことは申し合わせができたわけであります。従って日本側におきましては私と防衛庁長官,アメリカ側におきましては駐日大使と太平洋軍司令官,日本に駐在しております米軍の司令官というのがこの構成メンバ−になっております。そしてこれらの機関というものは話し合いの機関でございますから,むろんその決定というものはその機関自身がするというよりは,それぞれ内閣が決定したものを話し合いに移していく,また決定する場合には内閣の承認を得て決定していくということになるわけでございます。

○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが,今言葉が小さくてちょっとはっきりしなかった。それは今まで持っておる機関と同じですか,それとも新たに設けるわけですか。

○藤山国務大臣 構成は今までと同じでございますけれども,安保条約が今度改定されましたので,新しくそういう機関を設けることにいたしております。

○横路委員 今の武力攻撃が実際に発生した場合における第五条の発動ということについてわかりましたが,これとの関連で総理にちょっとお尋ねをしておきたいのですが,竹島問題ですね。あれはこの条約が発効されてなお韓国があそこに武力でもっておるということは,いわゆる武力攻撃によってあれは占領されているという規定になりますね,今度は。そうしたらどうなさるんですか。条約が発効したあとは竹島問題はどうなさるのです。

○岸国務大臣 この問題に関しましては,従来日韓の間においての交渉も行なわれております。またわれわれとしては司法裁判所に提訴するようなことを提議もしておりますが,韓国側はこれに応じないというような経過になっております。私はやはりこの問題は,従来日本が考えてきているように,両国の交渉と,それから国際機関によるところの方法によって解決することが適当である,かように考えております。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしたいのですが,この条約が効力を発生した後において,なお韓国の軍隊があそこから撤退しない場合においては,あの竹島に発生している事実は,これは武力による侵略というように考えてよろしいわけですね。その点を聞いているのですよ。

○岸国務大臣 そういうふうに解釈すべきものだろうと思います。

○横路委員 次に総理大臣にお尋ねをしますが,事前協議の問題ですね。この点は去る五日,六日の河野委員並びに今澄委員によってだいぶ議論されたわけですが,私はこの問題について,拒否権があるとかないとかいう法律的なそういう言葉にはずいぶん問題があると思う。そこで私は総理にお尋ねをしたいのは,条約上は,法律的な用語としては事前の同意を要するというようになっているはずです。総理が言うようにノ−と言えば絶対に出動しないのだというならば,事前の協議の主題とするというあの問題について,事前の同意を要するというのが条約上における法律的な用語で国際上きちっとしている,それをなぜ総理は使わなかったか,おそらく私の推測ではアメリカからノ−と言われたのだろうと思う。それともノ−と言われたのではないのだ。条約上にはそういう用語はあまり使っていないのだ。だから事前協議ということにしたのだということか。どういうわけです,これは一体。常識的な論議ではないんですよ。条約上ですから,法律的な言葉としてなぜ事前の同意を要すると書かなかったのか。そういうものはないというのかどうなのか。

○岸国務大臣 これは事前協議という言葉によって問題になっておる。日本がノ−と言った場合に,それに反した行動をアメリカ側がとらない,こういう解釈であるということが両国の交渉されておる人々によって承認されて,そうして交渉が進められたわけでありますから,特に別に事前の同意ということを提案して拒否されて協議になったというような沿革ではないと私は承知いたしております。

○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが,そうすると初めから事前の同意を要するというような提案の仕方はしなかったわけですか。なぜしなかったのです。これは国際条約における一般的な法律的な用語ではありませんか。この国会においてもどう聞いてもわからない。法律的には拒否権という言葉はない,常識的に拒否権ということが言えるならば言える,こういうようなあいまいなことでなしに,将来武力攻撃が発生した場合に直ちに対処しなければならぬ,あるいは戦争に巻き込まれるかもしれないというこういうような問題について,なぜ明確に事前の同意を要するとしなかったのか。それともそういうことは国際上の言葉としてはないのですか,どうなんです。

○岸国務大臣 私,国際的の用語として同意ということを使っておる場合もございましょうし,そうでない場合もあるように承知いたしております。問題は,この協議の道程に,そのことをなす前に協議をして,そうして両方の意見が一致して初めてそういう行動が起こされるという意味に一体事前協議ということが解釈されない問題であるならば,今お話のように,その点は不十分であるという問題が起こったであろうと思います。しかしながら交渉の全過程を通じて,事前協議の主題とするという意味は,両方がそのことを行なう前に協議をして,意見が一致した場合においてそういう行動をとるのだという解釈のもとに,この事前協議という意味をとるということに両方の間において意見が一致して参ったのでございますから,そういう言葉を使って目的はそれによって達せられるわけでありますから,そういう文句を使った,こう思います。

○横路委員 総理にお尋ねしますが,これは条約の本文にはない。どこの条約も,事前の同意を要するというときには,必ず条約の本文に入れている。だから本来からいえば,条約第六条に事前の同意を要すると明確にすべきだ。それを条約本文にはうたっていない。交換公文については,これまた解釈に疑義が生ずるように問題がある。そこでやむを得ず共同声明のの中で,いわゆる日本の意思に反するような行動をしないことを保証したとある。もしも事前協議の中で今総理のおっしゃるようにノ−と言えば出動しないのだというならば,あの共同声明は再確認したというようになるべきです。総理が今私に返事しておると同じだ。それが再確認ではなくて保証と言うのは,その交換公文の段階ではあいまいだから,明確でないから,そこで共同声明で保証した,そうなんでございましょう。どうなんですか。私に今同意したではありませんか。

○岸国務大臣 問題は条約及び交換公文というものを通じての解釈の問題でございます。従って私とアイゼンハワ−大統領との間の共同声明というものは,その法律解釈をいわゆる再確認したという意義を持つものであって,これで初めて解釈するとか,これで初めてどうするという性質の一これで政治的にどうなったのだというような意味でない,私は話し合いのあるいはまた共同声明の趣旨から見まして,そういうふうに考えておるものだと思います。

○横路委員 総理大臣に私は申し上げたいと思うのですが,総理大臣,ここにございます日本とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定,現在の安保条約には,各条文に,日本の行為に対して,アメリカ側に対して事前の同意を要するとなっておるのですよ。だから日本がアメリカ側に対して協議をするときには,常に条約の本文に同意を要すると求められておる。今度は日本がアメリカに対する行為を求める場合には,条約の本文には求めないで,交換公文でもあいまいで,共同声明に譲っておる。どこに一体対等で,どこに自主的な条約だと言えますか。防衛援助協定その他には,明らかにこの点は,全部日本が行なう行為についてはアメリカに対して事前の同意を要するとなっているではありませんか。明らかに,今回政府が調印をしてきたこの条約は,何といっても不平等条約ですよ。対等ではないです。自主性はないですよ。あるならば,条約の本文についてなぜ日本とアメリカとの防衛援助協定やら現行の安保条約のように,条約の本文について事前の同意を要すると規定しないのです。なぜあいまいにしたのですか。

○岸国務大臣 私は条約とこの場合の交換公文とは同じ効力を持っておるものであって,いろいろな条約やあるいは外交上の交渉の場合におきまして,そのときのいろいろな慣例やその他によって条約の本文に入れる場合もありますし,交換公文とする場合もあるので,決してそれによって自主性云々が動くものではないと思います。

○横路委員 総理はそうするとあれですか。私は拒否権があるとかないとかいう言葉は,きょうは使わないつもりです。この点事前の同意を要するということと同じ意義ですか。そのことをはっきりしておきたい。事前の協議の主題とするということは事前の同意を要するという,そういう国際条約の上における法律的な用語と同じ意味ですかと聞いておるのですよ。そうならそうだとおっしゃっていただきたいし,それと違うなら違うと言っていただきたい。あとの説明は要らぬですよ。どちらですか。

○岸国務大臣 言葉は確かに同意と協議という字は違っておりますが,しかしながらその意義として,しばしば論ぜられておるように,両方の意思が一致しなければ協議が成立しない,協議が成立しない場合には日本の意思に反して行動しないということがこの解釈でございまして,それはこの交渉を通じてずっと両国の代表の間において了解されたことであり,またそれを声明において再確認しておるわけであります。だだ,今そういう意味において,言葉が違うのだから,言葉が違うということは違うと言わなければならぬと思います。しかしながらわれわれが問題としている要点については,この場合に事前の同意を要するとしたのとどういうふうに違うかといえば,私は結果的には違わないとこう思う。

○横路委員 総理大臣,私この間から総理大臣の御答弁を聞いていると,法律的な用語に基づいての論議ではなしに,いわゆる常識的な論議なんですね。常識的な論議というのはあとに問題を起こすのです。私が今ここで総理にお尋ねしましたら,総理は事前の協議ということと事前の同意を要するということとは法律上の言葉の違いはあるぞ,それは間違いござま{前1文字ママとルビ}せんね。それは違いはありますね。総理は半分ずつの話でなかなか大へんだと思いますが,その点はどうですか。よく相談されて答弁されてもいいですよ。どうぞゆっくり答弁して下さい。

○岸国務大臣 同意という言葉と協議という言葉は,私,日本語においても違っておりますし,英語においても違っているように承知しております。従ってそれの法律的な解釈がどういうふうに違いがあるかというようなことについては,あるいは法制局長官からいろいろな実例についてお答えした方がいいかと思いますが,ただ問題は先ほど来申し上げているように,事前協議とした理由,また事前協議という解釈が,両方の意見が一致して初めて協議がととのい,またそれによって初めて行動する。協議がととのわない場合においてそれに反した行動はしないという,この法律解釈が両方の間において一致しておるということであるならば,今問題になっておる,疑問とされておる事柄は解決しておるのであって,同意と協議が法律的にどういうふうに意義を異にしておるか。字が違っているが,それは全然同じかどうかという法律論については,むしろ専門家の法制局長官からお答えを申し上げた方が適当であろうと思います。こういうことです。

○横路委員 法制局長官に,これはいずれ他の機会に御答弁いただきたいと思いますが,きょうは限られた時間の中で,できるだけ私は総理,外務大臣に主としてお尋ねしたいと思う。これは……(「卑怯だよ」と呼ぶ者あり)卑怯ではないですよ。総理大臣,一番頭がいいのだから。総理大臣,実はこの防衛援助協定の第二項に「いずれの一方の政府も,他方の政府の事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。」あるいは第一条の第四項にも「これらの援助を供与する政府の事前の同意を得ないで,」やることはできない,こういうように安保条約についても同様,これが国際条約における法律的な用語をきちっと定めたものなんです。本来からいうならば,これは調印前にこういう委員会を開いてこのことを論議して,総理にも,なるほど将来これは問題がある,これならば問題がある,これならばアメリカと事前の協議ではなしに,事前の同意を要するというように直さなければならないと私にこう言われたら,よくおわかりになって,調印前なら,調印のときにそう直されたかもしれない。しかしおそらく総理はこういうことを十分に承知の上で,−これは全部アメリカ側の同意ですよ。今度は新安保条約における事前協議は,日本がアメリカ側の同意だ,一同意じゃない協議だ,そのときの同意について書いていないことは,何といってもこれは自主性のない不平等条約であり,これは対等な条約だとは断じて言えないと私は思うのです。その点だけ私は明確に申し上げておきたいと思う。これは私の考えですから。

 その次に総理にお尋ねをしたいのは,極東の地域の問題がさっぱりはっきりしないのです。これは何でしたら藤山外務大臣から一つ明確にしてもらいたい。極東の地域……。

○藤山国務大臣 極東の地域につきましては,フィリン{前1文字ママとルビ}ピン以北,日本の周辺というのが極東といわれるところだと思います。現在の条約においてもそうだと思います。

○横路委員 外務大臣,フィリン{前1文字ママとルビ}ピン以北,日本の周辺と言うのですが,これはどうなんですか。沿海州その他は含まれているのですか,どうなんですか,その点はっきりしてもらいたい。もっと言葉ですからはっきりしてもらいたいのですよ。

○藤山国務大臣 むろん日本の周辺でありまして,どこの地区をどうというふうに特定に指示することはいたさないことにいたしております。

○横路委員 藤山外務大臣,ほかの条約にそういう規定はないですよ。勝手に解釈ができるような,そういう範囲はないですよ。世界のいかなる軍事同盟についても,またいかなる防衛援助条約についても,全部適用範囲というものは明らかになっていますよ。もう一ぺん一つ答弁して下さい。もう一ペっんはっきりと。あなたは大事なところになるとごしゃごしゃと言ってだめですよ。

○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように,大体フィリピンの以北,日本の周辺でございまして,これが極東の地域でございます。この条約に言う地域でございます。

○横路委員 外務大臣,もう一ぺんお尋ねしますが,フィリピンの以北,日本の周辺,その日本の周辺の意味がはっきりしないから,沿海州まで含まれているのかどうかと言っておる。含まれていないなら含まれていない,日本の周辺とはどこまでだとはっきり言ったらどうですか。

○藤山国務大臣 大体今申し上げましたように,極東というものの観念についてはいろいろ過去にございます。(「いろいろとは何だ」と呼ぶ者あり)しかしいろいろ解釈がございます。いろいろ解釈があることは御承知の通りだと思います。われわれがこの話をいたしておりますときには,フィリピンの以北,日本を取り巻く周辺でございます。

○横路委員 藤山外務大臣に私はもう一つ聞きたい。藤山外務大臣にお尋ねしますが,あなたのここにおけるきょうの答弁は二つに尽きている。「いろいろな」,「大体」−何です一体。何です一体。私があなたに聞いているのは世界のいずれの,北大西洋条約にしても,あるいはその他米韓,米比その他にしても,その適用の範囲が明確でないなんという条約はないですよ。どこにありますか,そういう条約が。いろいろなんということを条約のどこにうたっていますか。だからあなたはフィリピンの以北,日本の周辺,日本の周辺とはどこをさすのか,ここではっきりしない限り,これは大問題だからあとは審議できませんよ。これははっきりしなさい。

○藤山国務大臣 御承知のように,今回の条約における条約区域というものは日本の施政下のあるところでありまして,今日この条約に極東とうたっておりますものは,施設の供与に伴いますその目的のためにきめたものでありまして,いわゆる条約の適用地域というものではございません。

○横路委員 藤山外務大臣にお尋ねしたいのですが,私はこの条約にないのならば聞かないのですよ。ところが第四条には「締約国は,この条約の実施に関して随時協議し,また,日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも,いずれか一方の締約国の要請により協議する。」とあるから,だから一体極東とはどの地域なのかと聞いておる。それならば初めから条約で消したらどうですか。あなたの与党だって意見があったじゃないですか。極東ということは消したらどうですか。ある以上は,極東とはいかなる地域かということをここで答弁するのがあなたの責任じゃありませんか。

○藤山国務大臣 御承知のように,今申し上げた通り……(発言する者多し)少し静かにして下さい。そう声が大きくては聞こえませんから。

 〔発言する者多し〕

○小川委員長 ちょっと委員諸君に申し上げますが,委員諸君もお静かにしていただきませんと,外務大臣の声は小さいから,お静かに聞いていただきたいと思います。

○藤山国務大臣 つまりここで極東と申しますのは,先ほど来申し上げておりますように,極東というのにはいろいろ議論がございます。われわれはフィリピン以北,日本の周辺を含むのでありまして,そういう意味においてわれわれは極東ということを申しておるわけでございます。

○横路委員 私は委員長に申し上げたい。今この条約になければいいですよ。しかもこれは自民党の与党の中でも,この極東の平和というのは非常に地域が問題で,しかもこれは本来からいえば,日本に対する防衛条約ならば,日本国の安全とだけとどめるものを,国際の平和と入れたところは問題だ,こうなっておる。だから私はこの際ぜひ一つ,極東の平和という極東の地域とはいかなるものかということについて,明確にしてもらわなければならない。だから一つ私は,この点はぜひ明らかにしてもらいたいです,委員長。こういうことで一体どうしてできますか,委員長。だから委員長,ここで一たん休憩なら休憩をして一こんなことでできますか。だから,ここで一たん休憩なら休憩して……。

○小川委員長 横路君の御質問に外務大臣は答えておりますが,なお,あなたが外務大臣の答弁が納得がいかないようでしたら,重ねて御質問して下さい。

○横路委員 委員長,私はあなたに聞いているのです。あなた御自身が聞いておかしく思いませんか。いろいろな,いろいろなでわかりますか。

○小川委員長 私は大体了解しております。

○横路委員 大体ですね。それでは藤山外務大臣,聞いて下さいよ。私の声は大きいからよくわかるでしょう。藤山外務大臣にお尋ねしますが,フィリン{前1文字ママとルビ}ピン以北,日本の周辺となりましたね。何でフィリピンの以北とフィリピンを限定したのですか。これはなぜ入れたのですか。それならば,日本の周辺だけでいいじゃありませんか。ちょうどものにたとえれば,下の方だけあって,上の方がないのですよ。そうじゃありませんか。ではあなたにお尋ねしますが,フィリピン以北と入れたフィリピンはなぜ入れたのですか。まずその根拠についてお尋ねしたい。

○藤山国務大臣 従来極東についてはいろいろな解釈があったと思います。これは非常に広範な地理的な名称でありまして,ある場合には政治的にイギリスが使ったり,いろいろしたと思います。南方につきましてはある程度の限定をすることは,この条約の中での気持といたしましても当然だと思います。従ってフィリピンの以北ということをわれわれは考えておるわけであります。しかし従来の極東という観念で樺太の北だとか,ずっと先まで入っているというようなことは,従来地理的にはございません。やはり日本の周辺,フィリピンの以北というのが適当だと思います。

○横路委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが,中国の沿岸は入るのですね。フィリピン以北,日本の周辺の幅だから,中国の沿岸は入るのですね。間違いありませんね。

○藤山国務大臣 今申し上げた通りフィリピンの北,日本の周辺でありまして,その中間地帯は大体極東の地域だと思います。

○横路委員 藤山外務大臣に聞いているのですよ。これは何べん言っても同じことだ。だから,私はフィリピンの以北,日本の周辺という間には中国の沿岸もあるが,これは含まれるのですねと聞いているのです。どうなんだ。それは含まれるのですか,含まれないのですか。フィリピンの以北,日本の周辺と言うが,中国の沿岸はどうなんだ。はっきり言ったらいいじゃないか。

○藤山国務大臣 今はっきり申し上げておりますように,フィリピンの以北,日本の周辺でありまして,その海域が入っておることは当然でございます。

○横路委員 藤山外務大臣,海域並びに沿岸も入りますね。沿岸はどうなんです。海域並びに沿岸,その点はどうなんですか。

○藤山国務大臣 今申し上げた通りで尽きておると思っております。

○横路委員 藤山外務大臣,だめですよ。中国の沿岸は入るのか入らないのかと聞いているのだから,入るなら入る,入らないと言ったらいいじゃないですか。どうなんですか,おどおどして−しっかり言いなさい。

○藤山国務大臣 別におどおどしているわけではございませんので,私はフィリピンの以北,日本の周辺,それを含む海域であることは,申し上げた通りであります。

○横路委員 藤山外務大臣は参議院,衆議院で年内の国会でだいぶ皆さんから質問されたので,だいぶ慎重にはなったようですが,しかし中国の沿岸が入っているかどうかということが問題ですから,ここで入っていないなら入っていないと答弁されたらどうですか。そう言うなら,言ってみて下さい。どうなんですか。−外務大臣,一つ言って下さいよ。入っていないなら,入っていないと言ったらいいじゃないですか。一体何ですか。

○藤山国務大臣 今申し上げた通りでありまして,フィリピンの以北,日本のあの周辺を含む海域でありますから,それではっきりいたしておると思っております。

○横路委員 総理大臣,今の答弁では私ははっきり答えてないと思う。だから,中国の沿岸が入らなければ入らないと答弁していただきたいし,入るならば入ると答弁していただきたい。私はどちらでもいい。それをはっきりと答弁していただきたいのであります。その点はどうなんですか。答えられないというのか。あいまいでなしに,入っておるというのか,入っていないというのか,どちらか。総理大臣にお尋ねしますよ。−委員長,何です。私が聞いておるのに,総理大臣と言ったらどうですか。相談するならしてもいいですよ。だめならだめで,あとでもいい。(「答弁できないなら,休憩しよう」と呼び,その他発言する者あり)委員長,暫時休憩して下さい。

○小川委員長 外務大臣から答弁があるそうです。

○藤山国務大臣 今申し上げましたように,極東というこの条約における適用−この条約の目的といたしますのは,極東の平和と安全ということなんでありまして,従ってフィリピンの以北,日本の周辺,そういう方面にいろいろな騒乱が起こりあるいは侵略行為があり,あるいは平和を害するような行為があったということをこれにうたっております。従って地理的概念として必ずしもぴたっと一致したものがあるわけでないことは当然でありまして,従ってそういう意味において中国大陸−常識的にはあるいはそういうふうに考えられるかもしれませんが,解釈的には私が今申し上げた通りでございます。

○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが,今あなたの答弁でますます問題になるのです。それはなぜなれば,この条約には極東の平和と安全を守るためにと,こうなっておる。その極東の地域とは概念的にいえばこうなっておる。これは大へんですよ,概念的にとは。あなたはこの間日本の平和は極東の平和とうらはらだと言った。そうすると日本の平和のためには極東の平和が大事なんだ。その極東の平和を守るためにはより一そう拡大された範囲において,戦争の脅威が生じないようにしなければならないということになる。一体今のあなたの答弁でわかりますか。

 そこで委員長にお願いしたい。ここに地図がありますから,地図を一つかけて,外務大臣にこうまるでやってもらいたいのです。どうですか委員長,この程度のことはどうですか。今の概念上という言葉で委員長わかりますか。だめですよ,これは。委員長どうですか。

○小川委員長 委員長は地図を掲げて一々説明することを必要といたしません。

○横路委員 外務大臣にお尋ねします。外務大臣にお尋ねします点は,ただいま御答弁になりました極東の地域に対してはいわゆる通念的に,概念的にそれはきまっているのだ,とこう言っておる。その通念的,概念的というのはそれぞれの人によってやはり違うのであります。そこで先ほどから,第一回目の御答弁はフィリピンの以北,日本の周辺,第二回目の御答弁はその間の海域ということになりましたが,私が明確にお答えをいただきたいと思いますことは,中国の沿岸は含むのかどうかということが第一点,第二点は沿海州は含むのかどうか。この二つの点についてまずお答えをいただきたいと思います。その点どうですか。

○藤山国務大臣 先ほど申し上げたように,また横路委員が言われておりますように,極東といういわゆる地理的観念にはいろいろな感じ方がございます。従ってわれわれとしては南の方についてはフィリピンの以北−大体これはこの条約が日本の平和と安全を守る範囲内,そういうところに紛争が起これば,日本の平和と安全が脅かされるということが主たる目的なのであります。従ってそれから日本の周辺であります。昔から極東という観念はそう北に延びているわけではないのでありまして,そういう意味からいいまして先ほどお話し申し上げましたように,北について特にうたわなかったわけでありますけれども,フィリピンの以北,日本の周辺,そうしてそれらのところにおいていろいろ何か日本の平和と安全を脅かされるようなことが起これば困るわけでありますから,そういう意味において,そういうふうに近くつながっているということにこの条約ではなっておるわけであります。

○横路委員 今のあなたの答弁は前のとまた違ってきた。フィリピンの以北,日本の周辺,その近くにおいて脅かされる場合においてはということになりますと,日本の周辺,それが戦争の脅威に脅かされる場合においては,その近くということになればもう一つ拡大されるわけでありませんか。今あなたはそう答弁したのですよ。だから,言葉でもって答弁するから間違いで,具体的に中国の沿岸は入るとか入らないとか,沿海州は入るとか入らないとか,こういうふうに答弁することが誤解を招かないことになる。あなたは何か心配しているのじゃないですか。今ここであなたが答弁したら何か起きるのでないかと思っているのじゃないですか。答弁したらどうですか,はっきりと。だめですよ,それでは。

○藤山国務大臣 別に私は何かいろいろ心配して答弁しているわけではございません。今申し上げましたように,今回の条約におきましては日本の安全と平和というものが乱されては困る。また同時に日本の周辺におきましていろいろ事が起こりまして,そうしてそれが日本に影響してくるということであっては困るわけであります。そういう意味において,極東という地理的観念にはいろいろございます。ございますが,しかしわれわれのこの条約に極東と用いました精神というものは,要するに日本の平和と安全につながりやすい地方をきめておるわけでありまして,そういう意味においてわれわれは極東という字を使っておるのであります。従って沿岸が入るとか入らないとかいうような問題は,われわれの今申したこととは全然違うのでありまして,われわれは今申したようなことから見て極東というものを解釈いたしておるわけであります。

○横路委員 外務大臣,私が聞いているのはそういうごたごたした話ではないのですよ。はっきりしているのです。中国の沿岸は入るか入らないか,入らないなら入らないと答えてもらいたい。沿海州は入るのか入らないのか,入らないならば入らないと答えてもらいたい。一体どちらなんです。私はその二つを聞いているのですよ。なぜ答弁できないのです。はっきり言いなさい。

○藤山国務大臣 はっきり申し上げておるのでありまして,日本の周辺及びフィリピン以北の海域ということをはっきり申し上げております。

  〔「それでは約束が違う」「答弁にならない」「休憩々々」と呼び,その他発言する者多く,離席する者あり〕

○小川委員長 それでは御着席願います。−御着席願います。

 ただいまの横路委員の質問に対して,政府の答弁との間に食い違いがございますので,理事会におきまして取り扱い方を協議するために,暫時休憩いたします。

 午後零時四十四分休憩

 午後二時十六分開議

○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際内閣総理大臣及び外務大臣より発言を求められております。これを許します。岸内閣総理大臣。

○岸国務大臣 極東の範囲についての御質問でありますが,この極東の意義につきましては,かねて外務大臣がお答えを申し上げておるように,フィリピン以北,日本の周辺という解釈でございます。ただ御質問がありまして具体的に問題になりました点についてお答えを申し上げますが,大体この条約は,いわゆる極東の地域において,平和と安全が乱されて,それが日本の平和と安全にも非常に密接な関係があるというようなことから,日米両国の関心の強い地域を示しておるわけでありまして,御質問の中国大陸や沿海州は,この意味において含まれないものと解釈いたします。

○藤山国務大臣 今,総理の言われた通りであります。

○横路委員 それでは藤山外務大臣にお尋ねをしますが,十一月十日の本会議におきまして,安保改定に対する中間報告で,あなたは竹谷源太郎議員の質問に答えて,こう言っています。私は速記を持ってきているのです。「第二に,極東の地域でございますが,先ほど御説明申し上げましたように,フィリピン以北,中国の一部あるいは沿海州,そういう,いわゆる日本を中心にいたしましたこの地方を,われわれとしては極東ということにいたしておる次第であります。」そうすると今,総理大臣の御答弁は,含まれていないということになっている。それであれば外務大臣が十一月の十日中間報告として本会議で同僚竹谷源太郎議員にお答えになった点は,それは間違いであったというようにここではっきりと訂正の御答弁をいただきたいと思います。

○藤山国務大臣 この問題につきましては,われわれも重要な関心がありますので,十分検討をして参らなければならないわけであります。先ほど申しましたように極東の定義につきましては,フィリピン以北,日本の周辺を含む海域と申したわけでありまして,従って海域と申しますれば陸に続いておるのですから,そういう意味においては沿岸に接続しておる,こういうことは申し上げられると思います。しかし同時にわれわれが最終的に確定いたしましたのは,総理が言われた通りであります。

○横路委員 そこで大臣にお尋ねをしますが,あなたは十一月の十八日の参議院の予算委員会において亀田君の質問にこう言っております。「この間,フィリピン以北,大陸の沿岸及び日本の周辺における沿岸ということを大体申し上げたつもりでおりますのですが,そういう意味において,むろん最終的には完全な打ち合わせをしまして明確にいたして参りたいと思っております。」今御答弁になりました総理大臣の御答弁は何かアメリカ側と最終的な打ち合わせをして御答弁ですか。その解釈について,なお大臣にちょっと言いますが,今,大臣の答弁は総理大臣とまた違っておるのですよ。海域は陸に続いておるのだ,その限界がはっきりしないのだ,こういうことを言うから問題がなんぼでも出るのですよ。この点はもう一ぺん,あなたはどこで最終的に打ち合わせをされて明確にされたのか。

○藤山国務大臣 今申しましたように最終的な打ち合わせをして明確にされたか……。

○藤山国務大臣 今申し上げましたように,最終的には総理の答弁通りでございまして,これはわれわれが話し合いをしている過程で,そういうふうに結論をつけたわけでございます。

○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが,今のは条約にうたわれている範囲ですね。しかし,行動の範囲は別ですね。今のは条約に規定されている極東の平和,安全という意味の範囲,しかし行動の範囲は別だ,私はそう思いますが,大臣のお考えはどうですか。

○藤山国務大臣 極東の平和と安全に対する関心という意味における極東は,今申し上げた通りであります。同時に,この条約の行動の範囲につきましても,おおむねこの範囲内であること,申すまでもございません。

○横路委員 そうすると,よくわからないのですが,今の大臣の行動の範囲というのは,おおむね一緒だという意味ですね。その点,はっきりして下さい。条約に規定されている極東の範囲と行動の範囲とはおおむね一致だ−もう一ぺん御答弁いただきたい。

○藤山国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。

○横路委員 総理,お聞きのように,外務大臣は,完全な一致とは言わないのです。おおむねなんです。極東の平和のためには,さらにその外側についてのいわゆる行動範囲がとられる。ですから非常に危険なんですが,私は総理にお尋ねをしたいのです。この日本周辺の中には,歯舞,色丹は入りますね。南千島の国後,択捉はどうですか。千島列島全体はどうなんですか。その点をお聞きしておきたいと思うのです。

○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように,日本の周辺,それは日本の周辺の海域を含むことは当然であると思います。従って,今御指摘になりましたような島嶼等は,日本に近接した海域として,入るものだと思います。

○横路委員 そうすると,今の総理大臣の御答弁で,千島全体をひっくるめて,極東平和維持のための極東の地域の海域であるということになったわけで,そうすると,大臣も,これは総理大臣から御答弁がありましたように,千島列島全体をひっくるむということになれば,沿海州まで含まれるのですよ。まさか千島列島の周辺だけが含まれて,その周辺がひっくるまれないということはないわけでしょう。地図をちょっとごらんになればわかるので……。だから,今の大臣の御答弁は,その点は,沿海州は含まないというようにお答えになったけれども,千島列島全体がいわゆる極東の平和の中の海域として含まれるということになれば,沿岸{前1文字ママとルビ}州も含まれることになるのですが,そう解釈してよろしゅうございますね。

○岸国務大臣 先ほどから申し上げているように,沿海州や中国大陸は含まないと,私ははっきり申し上げました。ただ,先ほど来外務大臣との質疑応答でも見まするように,海域ということになりますと,海岸線がどっちに入るかという,一方からいえば大陸の一部であり,一方からいえば大陸にすぐ接する,その接点が問題になるというようなこまかい問題は起こってきます。しかしながら,われわれは,その地域における平和と安全が乱されることが,日本の平和と安全に非常に密接に関係を生じてくる,従って,日米両国が共通の関心を持つという意味で,おのずからそこの限界は考えていくべきものである,かように思います。

○横路委員 十一月十日の衆議院本会議における外務大臣の中間報告の御答弁,それから予算委員会における外務大臣の御答弁と,きょうの総理大臣の御答弁とは,違うわけです。これは,ただいま午前中に問題になりました極東の平和及び安全に関する意味における極東の地域の問題は,これは非常に国際間に問題を起こすわけです。単にアメリカとの間におけるその防衛の地域がはっきりしないというだけではなしに,ソビエト並びに中国との間に,この極東の平和,安全に関する地域の問題は,非常に重大な関係を及ぼすのであります。私は,そういう意味で,総理大臣が,この予算委員会において,慎重な態度をとられて,こういう御答弁になられた,これは国際的な影響を考えてのことだと思うのです。しかし,これがここでの御答弁だけでなしに,はっきりと条約の中にそういうことがうたわれておれば,私はやはりソビエト,中国その他隣接している国に対して,誤解を与えないで済むと思うのであります。この点は北大西洋条約にしても,その他あらゆる防衛条約にしても,全部地域は明確にしているのであります。この点がこの安全保障条約における一つの欠点でありまして,こういう点については,私はいずれ他の適当な委員会においてなお追及しなければならないと思うのでありますが,きょうは残りの時間について制約もございますから,以上だけ申し上げて次に移りたいと思います。−何かありますか。

○岸国務大臣 今回の条約の条約区域というものは,きわめて明瞭に日本の領域内に限っております。従って他の条約のいわゆる条約区域という問題は,これは明瞭にされておるのでありまして,ただ極東という,そこにおける安全と平和が乱されて日本の平和と安全に非常な密接な関係を持っておる地域というものの解釈について,先ほど来お話しがありましたようなある種の不明確さを持っておることは,極東という言葉自身が,地域的な観念として従来いろいろに用いられておる結果がそういうことになっておるのでありますけれども,問題となる,非常に関心の深い,国際的な意味も深いところの中国大陸や沿海州は含まないということで,私は明瞭に御了解をいただきたい,かように思います。

○横路委員 今の総理大臣の答弁では必ずしも私は了解できないのです。なぜならば外務大臣も先般この委員会で,日本の平和と安全と極東の平和と安全はうらはらだとこう言う。だからもちろん条約の第五条において日本の施政下における領域とはなっているけれども,しかし極東の平和と安全が維持されなければ,日本の平和と安全は維持されないのだ,だから私どもは今極東のいわゆる地域について問題にしているのであります。ですからそういう意味で,私どもはこの問題については今の総理の御答弁には納得できないのであります。藤山外務大臣にお尋ねしますが,この間河野委員の質問に答えて,総理大臣はこう言われておる。在日米軍が極東の地域に出動する場合においては,米韓相互防衛条約,米華相互防衛条約,米比相互防衛条約のその条約に基づいて在日米軍が出動する場合においても,事前協議の対象になるとこう言っているが,それで差しつかえございませんか。総理大臣がそう言っておるのですよ。

○藤山国務大臣 日本におります在日米軍が基地から出ますときには,日本の施政権のあります区域以外に出ますときには,事前協議の対象になります。

○横路委員 そこで今お話は,外務大臣はこれを承認されたわけです。そうしますと在日米軍は,米韓相互防衛条約,米華相互防衛条約,米比相互防衛条約で出動する地域というのは非常に広範です。アメリカに対してもあるいはハワイに対しても,太平洋地域に対しても出動するわけですね。出動するわけです。これも対象になるわけです。それで私があなたにお尋ねをしたいのは,この,今総理大臣や外務大臣からの御答弁は,かつてダレスが日本とアメリカと韓国と,台湾の国民政府を入れたいわゆる東北アジア条約集団機構といいますか,NEATOというものを考えようとした,実質的に−形式的には違うけれども,実質的にはそういうことに明らかになる,私はそういうように考えるのですが,外務大臣としては絶対そういうことはないとここで言い切るのかどうか,その点についてお答えをいただきたいと思います。

○藤山国務大臣 今回の条約と米韓,米比なり米台なりの条約とは全然関係がございません。従って日本の基地から出ますときには事前協議の対象になるわけでありまして,いわゆるNEATO構想には何の関係もございません。

○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが,あなたは中間報告の中では作戦行動と言っている。今度は戦闘作戦行動と言っている。この間もこの委員会において,あなたは,空軍の基地から飛び出して直接向こうを攻撃するというのが戦闘作戦行動だ,しかし海軍のいわゆる基地等から出て行くのは,これは必ずしも戦闘作戦行動とは言えない,こういうように答弁された。それでよろしゅうございますか。海軍の基地から出て行く,これは戦闘作戦行動ではない,そこから艦上爆撃機が飛び立ったり,艦上攻撃機が飛び立てばこれは戦闘作戦行動だが,航空母艦がずっと出て行って,適当な地域から艦上攻撃機が飛んでいったときは,これは初めの出ていったのは作戦行動,あとのは戦闘作戦行動だから,最初の作戦行動については事前協議の対象にならないと答弁したが,それでよろしゅうございますか。

○藤山国務大臣 私は今お話しのような答弁をいたしておらぬと思います。日本の基地から直接戦闘作戦行動に出ていきます場合には,事前協議の対象になるわけであります。航空母艦等が作戦行動のために飛行機をどこかから出す,しかしそれは戦闘の目的で出ていきますれば,当然事前協議の対象になります。

○横路委員 外務大臣,空軍基地の場合は作戦行動と戦闘作戦行動というのは明らかです。しかし海軍の基地の場合ははっきりしないですよ。最初にただ作戦行動だ,補給部隊だといって出て行った,しかし出ていって,その中間においていよいよ戦闘が始まったというので戦闘作戦行動に従事する,その最初の場合が事前協議の対象になりますか。ならないではありませんか。その点一つはっきりしてもらいたい。

○藤山国務大臣 むろんこれは,今お話しのように戦闘作戦行動に参加して出て参りますものは,事前協議の対象になること当然でございます。従ってそういうことなしに,ただ海域を巡回して歩くというのは,これは対象にはなりません。しかし戦闘の目的を持って出て参ります場合には当然対象になります。

○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが,この間いわゆる日本国に対する米軍の移動,これは事前協議の対象になるが,撤退は対象にならないと言いました。そこで撤退について私はお尋ねしたい。撤退は何も本国にばかり撤退するのではない。韓国にも撤退する,台湾にも撤退する,あるいはフィリピンにも撤退する。その撤退は私の言うた場合も含みますね。韓国や台湾やフィリピンに行くのは撤退でないのだ,撤退とは本国だけだ,こういうふうに条約上きちっときまってますか,その点はどうなんですか。

○藤山国務大臣 もちろん日本から撤退します場合に,普通の移動でありますれば,これは事前協議の対象ではございません。ただ日本から出ていく場合に,それが作戦行動に関係しておりますれば,それはむろん事前協議の対象になります。

○横路委員 外務大臣,作戦行動はいいですが,補給のときはどうです。補給あるいは部隊の移動のときはどうなんですか。そのときは対象ではないですね。その点はっきりしていただきたい。

○藤山国務大臣 先般御答弁申し上げましたように,補給の場合には対象ではございません。

○横路委員 部隊の移動と撤退というものはどういうように解釈するのですか。部隊の移動についても,これは対象でありませんね。撤退についてもこれは何も本国ばかりでないのです。韓国や台湾や,あるいはフィリピンが安全でフィリピンに撤退する場合だってあるのですから。この場合には対象ではないのですね,その点だけお聞きしておきたいのです。

○藤山国務大臣 むろん配属がえをいたしますことは日本の関係でございませんし,従ってどこに配属がえをするかということは事前協議の対象にはならぬのでありまして,本国ばかりではむろんございません。

○横路委員 私は総理大臣にお尋ねをしたいのですが,実は条約の第三条によって,いわゆるバンデンバ−グ決議によって,日本は防衛力増強の義務を負った,総理大臣は負ったのではないというように言われるかもしれませんが,私は防衛能力についてこれを増強する義務を負ったというように考えるのですが,総理大臣もそうお思いになりませんか。

○岸国務大臣 防衛能力をどういうふうに増強していくかということは,あくまでも日本が自主的に考えるべき問題でありまして,私はこの条約によって新たな義務を負うたものとは思っておりません。

○横路委員 それでは私は総理大臣にお尋ねをしますが,日本とアメリカとの相互防衛援助協定,いわゆるMSA協定の中では,日本は防衛についての軍事的義務を負っているのですよ。それならば,今総理大臣がおっしゃるのであるならば,このMSA協定は当然破棄しなければならない。このMSA協定を置いておいて,なぜ一体防衛力について増強の義務を負わないというのですか。当然破棄すべきですよ。これは破棄するのですか,どうなんですか。

○岸国務大臣 MSA協定による義務の内容につきましては,法律的な解釈でございますから,法制局長官から答弁いたさせます。

○横路委員 私は……(「答弁を聞け」と呼ぶ者あり)あなたはやらしてもいいと言うけれども,長々そういう答弁を私の質問の時間に入れられてはかなわぬです。私は総理大臣にお尋ねしている。あとわずかしか時間がないですから…。MSA協定については総理大臣はよく御存じないようです。だから法制局長官に答弁させるというのですが,MSA協定は明らかになっている。この協定の第一条に,一九四九年の相互防衛援助法,一九五一年の相互安全保障法に基づいて,そうして当該援助に関する条件及び終了に関する条件に基づいて武器等を貸与している,その中にこの二つの法律がはっきりしている。どういうようになっているかというと,合衆国の安全保障が強化される場合,それから条約に基づいて日本が,自国が受諾した軍事的義務を履行する場合,こういうようになっているのであります。しかもこの中には,一総理大臣,時間もないですからよく聞いていただきたいと思う。自国というのは日本ですが,日本の防衛能力を発展させるための一切の合理的措置,こういうものが明らかになっているとき,しかも終了の規定というのは,援助をやめるときの規定とは何かというと,五十九条にこうなっています。もはや合衆国の国家的義務,利益もしくは安全保障に対して役立たない,こういうように考え得る場合においては,大統領の権限で援助を打ち切る。従って日本は,今総理大臣がお話しのように,防衛力について増強の義務を負わないというならば,この相互安全保障法に基づいてのMSA協定,相互防衛援助協定は当然私はこれを廃棄すべきだと思う。だから軍事顧問団は,この協定に基づいてアメリカから供与されたところの武器が,はたしてアメリカの国家的な利益,アメリカの安全保障に役立っているかどうかということを査察するために来ているではありませんか。それで明らかに一九五一年の相互安全保障法に基づいて,いわゆる援助の規定,しかも終了の規定まで設けてあるではありませんか。だから当然私は,今総理大臣からそういうお答えがあるならば,このMSA協定,いわゆる日米間の相互防衛援助協定は,当然これは廃棄すべきだと思う。これは存続するのでしょう。これは一体どういうことなんですか。

○岸国務大臣 MSA協定に基づいておる日米間の関係と安全保障条約の第三条のいわゆるバンデンバ−グ決議というものを取り入れて日本が防衛力の全体をどういうようにしていくかという問題とは,私は直接関係のない問題だと思います。なお法律的の構成につきましては,先ほど申し上げたように,一応われわれの方の法制局長官の説明を聞いていただきたいと思います。

○横路委員 私は聞きたいのですよ。しかしそれで時間を遷延されると困るから−それは与党の理事の諸君がそういうことなら聞きますよ。それではどうぞ一つゆっくり答弁してください。しかし時間の制約は受けませんよ。

○林(修)政府委員 御承知の通りの,この日米の相互防衛援助協定第八条をさしておっしゃっていることかと思うわけでありますが,この場合も日本は防衛力の増強につきましては,政治的,経済的ないろいろな条件を考慮してやるということになっております。これについてどこまで増強するというような義務を具体的に負ったものでないことは,当時においても明らかでございます。それからこの条約の中で日本が負っておる軍事的義務を確認し云々という言葉がございますが,これも当時の御説明で御承知だと思いますが,これは現行の安保条約の第二条でございますか,いわゆる第三国に対する基地不貸与の義務,こういうことを確認したのだということを当時も御説明しているはずでございます。

 今度の安全保障条約とこのMSA協定との関係でございますが,これは交換公文にも今度やっております通りに,相互防衛援助条約は今後も存続させるわけでございますが,従来の安保条約の引いております点を今度も読みかえたような交換公文をやったわけで,効力を存続させるわけでございますが,この条約に基づいて日本が負っている問題,それから新しい安保条約の三条に基づいて日本が負っている問題,これはただいま総理が仰せられたように別個の問題でございまして,この第三条に基づいて何らか新しい防衛力増強の義務を実質的に負担したことはないということは,従来の政府の説明の通りでございます。

○横路委員 総理大臣,実は相互防衛援助協定の最終には,一年前に通告してあれば自動的に廃棄になるのです。今度の安保条約は十年の期限があるじゃありませんか。この矛盾はどうなさるのですか。当然この条約に関して,この関係条約としてもしもお出しになるならば,当然ここに十年間の条約の期限をつけて出さなければならないのです。一年前に予告すれば廃棄できるようなこの相互防衛援助協定について,もしもこのまま存続するというならば,なぜ一体一緒に出さないのですか,これは。

○岸国務大臣 安保条約とMSA協定とは本質的に私は違うものであると思います。期限の点を御指摘になりましたが,従来,御承知の通り現行法の安全保障条約は無期限でありました。そのもとにおいてMSA協定というものが結ばれておるのであります。従って今度の新しい安保条約において十年としたからといって,MSA協定がそれと同じでなければならぬという理由は少しもないと思います。

○横路委員 私はこの点は総理大臣と見解を異にします。現行の安保条約は決して無期限ではない。これは暫定的な措置,いわゆる暫定的な期限ですよ。この点が根本的に違うのです。しかし私は他の一,二の問題について大蔵大臣にお尋ねをしたいので次に移りたいと思うのです。