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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安全保障協議委員会の設置に関する往復書簡

[場所] ワシントン
[年月日] 1960年1月19日
[出典] 外交青書4号,244−245頁.
[備考] 
[全文]

拝啓

 本大臣は,本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及したいと思います。両政府は,同条約第四条の規定に基づいて,条約の実施に関して随時協議し,また,日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも,いずれか一方の政府の要請により協議することになつています。条約第六条の規定に基づく交換公文は,日本国政府との事前の協議の主題として一定の事項を掲げています。

 このような協議は,両政府が適当な諸経路を通じて行なうことになります。しかしながら,同時に,本大臣は,両政府間のこれらの協議のために時宜により使用することができる特別の委員会を設置することが非常に有益であろうと思います。この委員会は,いずれか一方の要請があるときはいつでも会合するものとし,両政府間の理解を促進することに役だち,及び安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するような問題で安全保障問題の基盤をなし,かつ,これに関連するものを検討することもできるでありましよう。

 この提案によれば,千九百五十七年八月六日に日本国及び合衆国政府が設置した「日米安全保障委員会」は,この新しい委員会によつて代わられることになりますが,この委員会は,「安全保障協議委員会」と呼称することとしてはどうかと思います。本大臣は,また,この新しい委員会の構成を「日米安全保障委員会」の構成と同じにすること,すなわち,日本側においては,日本側を主宰する外務大臣のほか防衛庁長官とし,合衆国側においては,合衆国側の議長たる日本国駐在合衆国大使のほか軍事上及び防衛上の問題に関する同大使の首席顧問たる太平洋軍司令官とすることを勧告いたします。在日米軍司令官は,太平洋軍司令官の代理となることができます。

 本大臣は,この問題に関する貴長官の見解を通報されれば幸いであります。                                  敬具

 千九百六十年一月十九日にワシントンで

                               岸信介

 アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

(訳 文)

拝啓

 本長官は,「安全保障協議委員会」の設置を提案された本日付けの貴大臣の書簡を受領したことを確認いたします。本長官は,貴大臣の提案に完全に同意し,また,このような委員会が安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するであろうとの貴大臣の見解に賛同するものであります。本長官は,また,この委員会の構成に関する貴大臣の提案に同意いたします。                                          敬具

 千九百六十年一月十九日

                     クリスチャン・A・ハーター

 日本国総理大臣 岸信介閣下