データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
機密文書研究会 東京大学・法学部・北岡伸一研究室

[文書名] 米軍の配備及び使用に関する日本側書簡案

[場所] 
[年月日] 1958年7月2日
[出典] 外務省,いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告対象文書(1.1960年1月の安保条約改定時の核持込みに関する「密約」問題関連),文書1-1
[備考] いわゆる「密約」問題に関する調査報告の際に公開された文書。公開されたものはタイプによる文書。漢字、送りがなの用法、誤記と思われるものも含めてできるだけ忠実にテキスト化した。
[全文]

極秘{前2文字囲み線あり}

(昭三三・七・二)条約集{前3文字挿入(手書き)}

(米軍の配備及び使用に関する日本側書簡案)

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、千九百五十一年九月八日に署名された安全保障条約に言及する光栄を有します。同条約第三条は、アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定することを規定しております。また、千九百五十七年六月二十一日のコミュニケに発表された合意に従つて設置された安全保障に関する日米委員会は、合衆国によるその軍隊の日本における配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討する責務を与えられていることが想起されます。

 よつて、安全保障委員会によるその任務の遂行に資するため{前11文字手書きで二重線傍線あり}、日本国政府は、次のことが同政府とアメリカ合衆国政府との間で合意されることを提案する光栄を有します。

A 外部からの武力攻撃に対する日本国の安全の維持に協力するため、合衆国軍隊の日本における配備及びその平常時における使用は、日本国の自衛隊のそれと緊密に調整されるものとする。この調整は、安全保障委員会によつて決定される計画を通じて行われる。{決定の左下に手書きで→(協議機関デアルガ)と書き込みあり}

B 合衆国が安全保障条約第一条に基いて日本国以外の極東の地域における国際の平和及び安全の維持に寄与するためにその軍隊を使用しようとするときは、合衆国政府は、それに伴う日本国にある合衆国軍隊の配備の変更について、実行可能な限り事前に、日本国政府と協議するものとする。ただし、行政協定第二条第一項にいう施設及び区域は、日本国政府の事前の同意がある場合に限り、合衆国軍隊によりその作戦行動のための基地として使用されることができる。

C 合衆国は、日本国政府の事前の同意なくして、核兵器を日本国内に持ち込まない。これは、日本国内に配備される合衆国軍隊のみならず、臨時に日本国内に入る船舶及び航空機にも適用があるものとする。

 本大臣は、さらに、貴国政府が前記の日本国政府の提案を受諾されるときは、この書簡及び受諾を表明される●{前1文字解読不能}下の返簡は、両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。