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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 軍用地問題に関する琉球立法院決議,決議第四号(軍用地問題に関する要望決議)

[場所] 
[年月日] 1956年5月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),757頁.琉球政府立法院事務局議事記録部編「立法院決議集」,55−57頁.
[備考] 
[全文]

 一九五六年四月十七日,恩納村をはじめとする十三ケ村の土地三一三・二二エーカー(三八三,四三五坪)に対し,土地収用例(一九五三年琉球列島米国民政府布令第百九号)に基く強制測量通告が発せられたため,関係住民は恐怖と絶望につき落された。土地の新規接収中止方については,全琉球住民が再三再四に亘り,理を尽し,情に訴えて必死の陳情,嘆願をつづけて来たのであるが,この全住民の切実な叫びは,遂に昨年のアメリカ合衆国議会に取り上げられるに至り,住民代表が証人として渡米する機会を得たのである。その結果更に同年十月アメリカ合衆国下院軍事委員会の調査団が来島し,住民の実情を具さに調査して持ち帰つたのである。ところが全住民がこの調査団の報告とアメリカ合衆国議会の決定に切なる希いをかけている矢先,軍当局が議会の決定を待つことなく,このような住民の意思を無視した挙に出たということは,アメリカの民主憲法の精神に副わぬものであり,われわれ琉球住民として黙視することのできない問題である。若しこれ以上土地を接収された場合琉球住民に如何なる影響を与えるかはこれまで再三述べたとおりである。特に土地を立ち退かされた伊佐浜,伊江島始め多くの住民の惨状については,全住民が深く憤まんを抱いているところである。米軍当局がこれ以上かような政策を強行することは米琉間の関係にとつて好ましくないばかりでなく人道的見地からしても民主々議国の面目にかけて絶対に差し控えるべきである。

「軍用地問題に関する四原則」は一九五四年決議第三号及び一九五五年決議第三号により確立されたのであるが,軍当局において顧みられない事実に鑑みこの際われわれは更に住民の真意を明確に表明し,もつて民意を尊重するアメリカ合衆国政府の施策にこれを充分に反映せしめたいと思う。

一 アメリカ合衆国政府による土地の買上又は永久使用,地料の一括払は,絶対に行なわないこと。

二 現在使用中の土地については,適正にして完全な補償がなされること。使用料の決定は,住民の合理的算定に基く要求額に基いてなされ,且つ,評価及び支払は,一年毎になされなければならない。

三 アメリカ合衆国軍隊が加えた一切の損害については,住民の要求する適正賠償額をすみやかに支払うこと。

四 現在アメリカ合衆国軍隊の占有する土地で不要の土地は,早急に解放し,且つ,新たな土地の収用は絶対に避けること。

 以上の四点は,琉球住民の一貫した主張であることをここに宣明し,アメリカ合衆国政府及び関係当局が将来の施策の上に充分具現して頂くことを全琉球住民を代表する琉球政府立法院の名において強く要望するものである。

 右決議する。

  一九五六年五月二十九日

          琉球政府立法院

アメリカ合衆国大統領,同上院議長,同下院議長,琉球列島米国民政長官,琉球列島米国民政副長官,国連事務総長}宛