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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 軍用地問題に関する琉球立法院決議,決議第三号(軍用地問題の解決に関する協力要請決議)

[場所] 
[年月日] 1956年5月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),756−757頁.琉球政府立法院事務局議事記録部編「立法院決議集」,55−57頁.
[備考] 
[全文]

 終戦と共に祖国から切り離されてより,既に十一年を迎えましたが,その間における祖国同胞のかわらざる御援助と御支援がわれわれ沖縄住民の権利の擁護と民主主義の確立とに極めて大きな役割を果しており,沖縄住民に生気と希望を与えていることは,住民の等しく感謝しているところであります。

 就中軍用地問題に関しては,祖国八千万同胞が強力に運動を展開しており,アメリカ合衆国の統治下にあつて諸条件の制約を受けている沖縄住民に代つて住民の世論を広く世界の良心に訴えていることを心強く思つております。

 ところが,全沖縄住民の意思と祖国同胞の要請にもかかわらず,現地における軍当局の政策は従来通りの一方的な基地拡張政策が推し進められております。

 このために住民の生活は,極度に脅やかされ,安心して生業にいそしむことができない状態であります。

 現在沖縄においてアメリカ合衆国軍隊の使用する土地の総面積は,四二,四二四エーカー(五一,九三三,一○三坪)に達し沖縄の総面積の一二・七パーセントに当り耕地面積の四四パーセントに相当しており,更に土地を失つた住民が宅地として使用している農地をも合すれば尨大な面積の農地が失われているわけであります。

 戦前昭和十一年度における農家一戸当りの耕地面積は一・三九エーカー(一,七○四坪)でありましたが,今日においては僅かに○・八エーカー(九七九・二坪)に過ぎません。

 このような実情の下で,更に土地の接収が行われると住民の生活は全く成り立たなくなつてしまうのであります。このことは,現にこれまで立ち退かされた伊江島,伊佐浜その他の実例が実証しているとおりであります。しかも,既に接収された土地に対するアメリカ合衆国の補償が極めて微々たるものであるため,土地を失つた住民の生活は,著しく窮迫しており,早急に補償の適正化を計ることが望まれております。

 アメリカ合衆国は,軍用地料の一括支払いを計画しているようでありますが,住民としては,これは土地買上げと同様の結果を招来するおそれのあることを理由として反対しているのであります。住民は,現在使用中の土地については適正にして完全な補償がなされ地料の決定は合理的算定による要求額に基いて毎年払を要望しているのであります。

 なお,アメリカ合衆国軍及びその要員の行為による損害の賠償については,実際上その支払いが遅延する傾向にあるのですみやかに賠償処理を行うよう要望しております。

 これらの要望は,再三「軍用地問題に関する四原則」として次の通り当院の決議したところであります。

一 アメリカ合衆国政府による土地の買上げ又は永久使用,地料の一括払は,絶対に行わないこと。

二 現在使用中の土地については,適正にして完全な補償がなされること。使用料の決定は,住民の合理的算定に基く要求額に基いてなされ,且つ,評価及び支払は,一年毎になされなければならない。

三 アメリカ合衆国軍隊が加えた一切の損害については,住民の要求する適正賠償額をすみやかに支払うこと。

四 現在アメリカ合衆国軍隊の占有する土地で不要の土地は,早急に解放し,且つ新たな土地の収用は絶対に避けること。

 一方アメリカ合衆国議会においてもわれわれの要求する四原則を検討中のようでありますが,この議会の結論が未だ下されていないにもかかわらず,軍当局は,更に三一三・二二エーカー(三八三,四三五坪)の土地に対し強制測量の挙に出ておりまして,さきに接収された軍用地を合すれば実に四二,七三七エーカー(五二,三一六,五三八坪)となり又国頭村外二十一ケ町村の土地三七,七四三エーカー(四六,二○四,六四○坪)が新規接収予定地としてあげられております。

 これは,全沖縄住民の意思を無視した非民主的行為であり,われわれの絶対に容認出来ないところであります。

 われわれは,この秋に当り従来屡々表明して来ました右の要望を広く内外に呼びかけて軍当局の反省を促したいと思います。

 祖国八千万同胞におかれても,沖縄住民のこの切実な訴えが十二分にアメリカ合衆国の施策に反映できるよう今後ともなお一層の御協力あらんことを,茲に全住民を代表する琉球政府立法院の名において要請いたします。

 右決議する。

   一九五六年五月二十九日

          琉球政府立法院

内閣総理大臣,外務大臣,衆議院議長,参議院議長,自由民主党,日本社会党,緑風会,労農党,無所属クラブ,自由人権協会,日本弁護士連合会}宛