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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 1954年3月8日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),940−641頁.外務省条約局「条約集」第32集第9巻.
[備考] 
[全文]

日本国政府及びアメリカ合衆国は,

改正後の千九百五十一年の相互安全保障法第五百五十条にそつて農産物の購入のための協定を締結したことに伴い,

経済の安定が国際の平和及び安全保障に欠くことができないことを認め,

アメリカ合衆国政府が,日本国の工業生産及び潜在的経済力の発展を援助する目的で,前記の農産物の購入の結果として生ずる円資金を,この協定に基いて利用する用意を有することを考慮し,

アメリカ合衆国の国民が日本国で行う私的投資の促進もまた前記の目的に資することを認めて,

次のとおり協定した。

第一条

アメリカ合衆国政府は,千九百五十四年三月八日に東京で署名された農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定第四条の規定に基いて設ける特別勘定に積み立てられる円資金を,合衆国の関係法令の規定及び条件に従つて,次の目的のために使用するものとする。

(1)アメリカ合衆国政府は,日本国の工業の援助のため,及び日本国の経済力の増強に資する他の目的のため,相互間で合意する条件に従つて,前記の特別勘定から円価額を日本国政府に贈与するものとする。その贈与の合計額は,前記の協定に基いて行われる取引の結果として生ずる当該特別勘定の積立金の総額の二十パ−セントの額とする。但し,その額は,一千万合衆国ドル(一0,000,000ドル)に等しい円価額をこえないものとする。

(2)アメリカ合衆国政府は,アメリカ合衆国の軍事援助計画を支持するための日本国内における物資及び役務の調達のため,当該円資金の残額を自由に使用することができる。

第二条

日本国政府は,アメリカ合衆国政府が日本国政府に対して行う贈与から生ずる円価額を積み立てる特別の勘定を設けるものとする。

第三条

日本国においてアメリカ合衆国の国民が行うことがある私的投資に対する改正後の千九百四十八年の経済協力法第百十一条(b)(3)の規定に基くアメリカ合衆国による保証は,その私的投資を促進し,及びこの協定の目的の達成に寄与するものであることが合意される。

第四条

この協定の実施のため必要があるときは,両政府の間で細目取極を合意するものとする。

第五条

この協定は,日本国がその国内法上の手続に従つてこの協定を承認したことを通知する日本国政府の公文を,アメリカ合衆国政府が受領した日に効力を生ずる。

以上の証拠として,署名のために正当に委任された両政府の代表者は,この協定に署名した。

千九百五十四年三月八日に東京でひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために

岡崎勝男(署名)

アメリカ合衆国のために

ジョン・M・アリソン(署名)