データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 琉球政府設立に関する布告

[場所] 
[年月日] 1952年2月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),505ー506頁.琉球政府立法院事務局編「琉球政府法令」,21頁.
[備考] 
[全文]

○米国民政府布告第十三号

    改正 米国民政府布告第十七号

       (一九五二・四・二一)

琉球政府の設立

 琉球住民に告げる。

 琉球住民の経済的,政治的及び社会的福祉を増進するため,琉球政府を設立することが望ましいので,本官琉球列島民政副長官陸軍少将ロバート・ビートラーはここに次の通り布告する。

 第一条

 立法機関,行政機関及び司法機関を備える琉球政府をここに設立する。

 第二条

 琉球政府は,琉球における政治の全権を行うことができる。但し,琉球列島米国民政府の布告,布告及び指令に従う。

 第三条

 琉球政府の立法権は琉球住民の選挙した立法院に属する。立法院は,琉球政府の行政機関及び司法機関から独立して,その立法権を行う。立法院は,一般租税,関税,分担金,消費税の賦課徴収及び琉球内の他の行政団体に対する補助金の交付を含む琉球政府の権能を実施するに必要適切なすべての立法を行うことができる。

 立法院の第一会期は,一九五二年四月一日沖縄の那覇において開会し,爾後法規に従い定例会を開くものとする。

 第四条

 琉球政府の行政権は,行政主席に属するものとし,行政主席はこれが選挙制になるまで民政副長官が,これを任命する。行政主席は時宜により立法院に対し,政府の状況につき報告し,自ら必要適切と認める方策についてその審議を勧告する。行政主席は,立法院の臨時会を招集する権限を有する。行政首席は,立法院の立法により設置する行政各局の管理運営につき責任を負い,民政副長官の認可により各局に必要な職員を任命する。但し,暴力による政府の破壊を主張する者は,琉球政府の職員となることができない。行政副主席は,これが選挙制になるか又は別に定められるまで民政副長官がこれを任命する。行政主席が不在のとき,事故があるとき又は欠けたとき行政副主席がその職務を行う。(布告一七)

 第五条

 琉球政府の司法機関は,さきに設置された琉球上訴裁判所巡回裁判所,治安裁判所及び時宜により設置されるその他の裁判所とする。

 裁判所は,行政機関及び立法機関から独立して,その司法権を行う。上訴裁判所の判事は,民政長官がこれを任命する。巡回裁判所及び治安裁判所の判事は,民政副長官の事前の認可により行政主席がこれを任命する。民政副長官は,裁判所の決定または判決について任意にこれを再審し認可し,延期し,停止し,減刑し,移送する等の処置を講ずることができる。

  第六条

 信教,言論,集会,請願及び出版の自由及び正当な法手続きによらない不当な操作,たい捕及び生命,自由又は財産の剥奪等に対する安全の保障を含む民主国家の基本的自由は,公共の福祉に反しない限りこれを保障する。

 第七条

 民政副長官は,必要な場合には,琉球政府をその他行政団体またはその代行機関により制定された法令規則の施行を拒否し,禁止し,又は停止し自ら適当と認める法令規則の交付を命じ及び琉球における全権限の一部又は全部を自ら行使する権利を留保する。

 第八条

 さきに任命組織された臨時中央政府は,本布告施行の日に解消する。但し,臨時中央政府の立法,行政及び司法の合法行為は,本布告により設立される琉球政府のそれぞれの機関の行為により改廃されるまでは有効とする。但し,臨時中央政府の行政機関及び司法機関の官職に対して行われた任命は,琉球政府の当該官職に対して効力を持続するものとする。

 第九条

 前条の規定を条件として一九五一年四月一日附民政府布告第三号「臨時中央政府の設立」及び本布告と抵触するその他の布告,布令及び指令の規定はここにこれを廃止する。

 第十条

本布告は,一九五二年四月一日から施行する。

 民政長官の命により

 琉球列島民政副長官

   米国陸軍少将

       ロバート・エス・ビートラー

 附 則 (米国民政府布告第十七号)

 第二条

 この布告は一九五二年五月一日からこれを施行する。

 一九五二年四月二十一日

  琉球列島民政副長官

  米国陸軍少将

     ロバート・エス・ビートラー