データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第17回アジア協力対話(ACD)閣僚級会合國場外務大臣政務官ステートメント

[場所] 
[年月日] 2021年1月21日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

●チャヴシュオール議長、御列席の皆様、外務大臣政務官の國場幸之助です。

●チャヴシュオール大臣のリーダーシップの下、新型コロナの感染拡大にもかかわらず、第17回ACD閣僚級会合に参加できることを喜ぶとともに、開催に御尽力された議長国、ACD事務局及び関係者の皆様に感謝いたします。

●ACDは参加国が中東から東アジアに及び、包摂性・多様性を持つフォーラムです。また新型コロナの影響で世界経済の先行きは不透明ですが、アジアの経済的な潜在力は引き続き大きいと考えています。

●本日のテーマにも関係しますが、昨年から全世界で猛威を振るっている新型コロナは、アジア地域においても社会、経済に大きな悪影響を与えています。2021年1月時点でも、感染者数及び死亡者数はなお増加しており、日常生活への影響は甚大です。

●本日はその中で、「新しい日常と安全かつ健康な観光」という今回のテーマの鍵となる、「感染症対策」と「人の往来」の2点に焦点を絞って言及します。

●新型コロナは、国際社会の連帯の必要性を私たちに改めて想起させました。私たちは、「分断された世界」ではなく、危機を乗り越えるべく「団結した世界」を実現しなければなりません。感染症対策に当たっては、「人間の安全保障」の理念に立脚し、「誰の健康も取り残さない」ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を目指すことが重要です。そのために、日本は、「喫緊の課題である感染症危機の克服」、「保健医療システムの基盤強化」、そして、「感染症に強い環境の整備」という、多層的な取組をスピード感をもって展開しています。これまで1,700億円を超える対外支援を実施しています。

●また日本は、アジア・アフリカ地域において、感染症対応の中核となる医療施設を整備し、それらの施設の連携促進や、人材育成を行うことにより、地域全体の保健医療システムの基盤を強化しています。ASEAN地域ではアセアン感染症対策センターの設立を力強く支援しています。

●さらに、民間の力を活用した取組も重要であり、例えばトルコにて、政府の公的資金も活用しつつ官民連携事業(PPP)の下、日トルコの企業が連携してイスタンブールに建設した都市病院が、コロナ対応のために前倒しで開院し、感染者の受入れに当たったという例もありました。今後も各国政府や民間企業と力を合わせてこの難局を乗り越えていきます。

●ポスト・コロナの新しい社会を作り上げていくには、感染拡大により打撃を受けた世界経済の回復と成長の実現も不可欠です。日本は、2年間で最大5,000億円の緊急支援円借款を実施するなど、途上国の経済活動の再興を後押ししています。

●従来よりも感染力の強い新型コロナの変異株に対する懸念が世界的に高まっている等、引き続き新型コロナによる影響は楽観を許しません。日本としては、内外の感染状況を注視しつつ、より多くの方により簡単な手続で安心して訪日していただける仕組みを将来的に整えていくとの考えについては何ら変わりありません。

●法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を実現することは地域、ひいては世界全体の平和と繁栄を確保していく上で不可欠です。新型コロナへの連携した対応を求められているいまこそ、その重要性が明確になってきています。先般の日ASEAN首脳会議で、ASEANの「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」と、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想が、平和と協力を促進する上で関連する本質的な原則を共有していることを確認できたことを心強く感じています。

●インド洋・太平洋の結節点であるASEAN、さらにアフリカへと繋がる中東を含み、アジア全域にまで広がりを見せているACDも、開かれ包摂的な枠組みです。日本はACDの参加国とも連携・協力しながら、この難局を乗り越えていきます。

●本年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証として、安全・安心で感動を呼ぶ東京大会の開催実現のため関係者一丸となり準備に取り組んでいます。また、東京大会は、各国からの支援もいただいて、10年前の東日本大震災から力強く復興した日本の姿を世界に発信する機会とします。

●一連の会議での有意義な議論を主導されたチャヴシュオール大臣に感謝を申し上げます。今般のACD閣僚会合の成果を踏まえ、ACDの下における協力が更に実りあるものになることを期待します。

(了)