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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第6回日本・メコン地域諸国首脳会議共同声明

[場所] 
[年月日] 2014年11月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 日本国,カンボジア王国,ラオス人民民主共和国,ミャンマー連邦共和国,タイ王国及びベトナム社会主義共和国の首脳は,2014年11月12日にミャンマー・ネーピードーにおいて,第6回日本・メコン地域諸国首脳会議のために一同に会した。

 首脳は,「日メコン協力のための東京戦略2012」の中間評価及び改訂版「東京戦略2012の実現のための行動計画」に基づき,日メコン協力が大きくかつ実質的に進展していることに深い満足感をもって留意した。首脳は,2014年8月10日にネーピードーにて開催された第7回日メコン外相会議及び同月27日に同地にて開催された第6回日メコン経済大臣会合の成果を称えた。

 首脳は,2013年の安倍総理の全ASEAN加盟国歴訪により高まった気運を受け,本年もハイレベルの相互訪問が継続していることを歓迎した。

Ⅰ 「東京戦略2012」の下での日メコン協力

1 メコン地域諸国の首脳は,「東京戦略2012」の三本柱である「連結性の強化」,「共に発展する」,「人間の安全保障及び環境の持続可能性確保」に従い,日本が5000億円以上に上る日メコン協力の実施に向けた継続的な支援を行っていることを歓迎した。この点に関して,メコン地域諸国の首脳は,日本によるCLMV(カンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナム)開発及びCLV(カンボジア,ラオス,ベトナム)開発の三角地帯への継続的な支援を評価した。

連結性の強化

2 首脳は,メコン地域における連結性向上が,ASEAN連結性及び2015年のASEAN共同体構築にとって不可欠であることを再確認した。この文脈で,メコン地域諸国の首脳は,メコン地域における持続可能なインフラ開発において,包摂性,強靱性,能力構築を重視した「人間中心の投資」を通じた「質の高い成長」を促進する日本のイニシアティブを歓迎した。この点に関して,首脳は,効果的な資金動員,パートナーシップ強化,ライフサイクルコストや環境及び社会面への配慮,包括的かつきめ細かいアプローチという4つの取組を通じて,「質」の高いインフラ整備を追求することが極めて重要であると認識した。

3 首脳は,「東京戦略2012」で言及された複数の交通体系を通じたメコン地域における経済回廊の連結性強化の必要性を強調し,例えばインド洋経由でインド亜大陸とメコン地域を接続する新規ルートを確立するなど,メコン地域を越えて連結性を拡大するという提案を歓迎した。これらのイニシアティブは,インド・ミャンマー・タイ高速道路及びダウェー経済特区プロジェクト等の現在進行中の開発プロジェクトを含む。

4 首脳は,2015年早期までに「シングル・ストップ・シングル・ウィンドウ」審査(SWI/SSI)を東西経済回廊(EWEC)のラオバオ・デーンサワン間の国境検問所において完全に実施するためのベトナム政府及びラオス政府の取組を評価した。「第7回日メコン外相会議議長声明」に言及されたとおり,メコン地域諸国の首脳は,メコン地域の国境を越えた物流の促進と迅速化に取り組む日本の貢献を評価し,同地域の経済回廊開発における日本の更なる支援を期待した。

共に発展する

5 首脳は,メコン開発ロードマップの下での着実な進展と,日メコン経済産業協力イニシアティブ(MJ-CI)の下でのロードマップの改訂を歓迎した。また,首脳は,地域ワイドのバリューチェーンネットワークを強化し,日本とメコン地域間のビジネス活動を促進するためのメコン地域の中長期的産業開発ビジョンである「メコン産業開発ビジョン」の立案における第6会日メコン経済大臣会合の進展を称えた。首脳は,日ASEAN経済大臣会合(AEM-METI)や日ASEAN経済産業協力委員会・東西回廊開発ワーキンググループ(AMEICCWEC-WG)を主たる調整機関として活用しつつ,関係省庁,産業界,東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)等の学術専門家からのインプットを得て,来年までに同ビジョンを発展させるよう指示した。

6 首脳は,高成長と世界にリンクした包括的でバランスがとれ,環境に優しく,持続可能な成長戦略を通じた人間中心の開発を記したミャンマー総合的開発ビジョン(MCDV)の策定に謝意を表した。同ビジョンの策定は,日ASEAN統合基金(JAIF)を活用してERIAにより実施され,ミャンマーのより広範かつ長期的な開発計画と成長戦略のために価値のあるインプットを提供する。

7 首脳は,メコン地域の産業開発と集積生産拠点の促進を加速化するものとして外国投資の重要性を認識した。首脳は,豊富な資源,労働力,改善されたインフラ連結性におけるメコン地域の多大なる潜在性を認識しつつ,「タイ・プラスワン」の投資パターン等の地域ワイドの傾向の下,生産部門における日本の投資促進を促した。また,首脳は,雇用創出と強固な生産チェーンに貢献する要因として知られる経済特区(SEZs)の発展を認識し,そのため,ミャンマー,ラオス及びカンボジアとタイの国境沿いの試験区域における経済特区開発の初期段階を歓迎した。

8 首脳は,2014年2月に東京で開催されたメコン地域における官民協力・連携促進フォーラム第4回日メコン全体会合,及び同年7月にハノイで開催された第7回日メコン経済産業政府対話の成果を歓迎した。首脳は,効果的な官民連携がメコン地域の発展により大きな利益をもたらすことを確信した。メコン地域諸国の首脳は,日本による官民協力に関する会議の継続的な開催に感謝した。

9 首脳は,2014年5月のOECD閣僚理事会の際に,OECD東南アジア地域プログラムが立ち上げられたことを歓迎するとともに,パートナーシップと相互学習を基盤として,OECDと東南アジアとの関係を強化していくことの重要性について一致した。また,首脳は,OECD・ASEAN投資政策会合,OECDグリーンシティ事業,及びERIAの協力によるミャンマーにおけるOECD中小企業政策プロジェクト等の一連の日本のイニシアティブを通じて,パートナーシップが更に発展することへの期待を表明した。

10 首脳は,日本及びメコン地域諸国間の文化交流及び人的交流強化の重要性を再確認した。この文脈で,首脳は,日本及びメコン地域諸国間の観光客の増加を歓迎した。メコン地域諸国の首脳は,査証緩和,航空協定締結に向けた進展,JENESYS2.0(21世紀東アジア青少年大交流計画)等,同分野における日本の取組を評価した。

人間の安全保障と環境の持続可能性確保

11 首脳は,低炭素成長の促進,気候変動に対して強靱な社会の構築,及びメコン地域の自然状況の保全による人間の安全保障と持続可能な開発を達成することの重要性を強調した。首脳は,グリーン・メコン・フォーラムの開催に際する日タイ共同の定期的な取組に謝意を表するとともに,2014年12月にバンコクで開催される第3回グリーン・メコン・フォーラムへの期待を表明した。首脳は,同フォーラムが,政府機関,地方自治体及び民間部門に対し,「グリーン・メコンに向けた10年」イニシアティブに関する行動計画に明示された協力分野に関する経験共有と意見交換の機会を提供すると確信した。

12 首脳は,メコンの人々の安全と強靱なメコン地域を確保するため,災害管理のための協力の重要性に留意した。この点に関して,首脳は,2015年3月に仙台にて開催される第三回国連防災世界会議に向けた積極的な参加と,日本とメコン諸国間の緊密な協力を確認した。

13 首脳は,メコン河の水及び関連資源の持続的管理・開発の死活的重要性並びに地域及び国際機関,特にメコン河委員会(MRC)との協力を継続することを再確認した。この点に関して,メコン地域諸国の首脳は,日ASEAN統合基金(JAIF)を通じた「洪水管理プログラム」及び「渇水管理プログラム」への約340万ドルの拠出,MRC灌漑プロジェクトへの約130万ドルの拠出,MRCへの専門家派遣による日本の貢献を歓迎した。

14 首脳は,メコン地域において石炭火力発電が主要なエネルギー源である事実に鑑み,気候変動に対処するための現実的な方法として,高効率石炭火力発電を推進することの重要性を確認した。

15 首脳は,感染症,母子保健及び予防医療の分野における協力強化の重要性,特に,エボラ出血熱の影響を受けている西アフリカの国々を支援し,諸地域における拡大を終結させる必要性を再確認した。

Ⅱ 2015年とそれ以降に向けた日メコン協力

16 首脳は,安倍総理とオバマ米大統領が,二国間関係における優先事項として,日米共同での東南アジア諸国に対する関与と協力を確認したことを,高く評価し歓迎した。これらには,「日メコン協力」と「メコン河下流域イニシアティブ」及び「メコン河下流域フレンズ」との間の緊密な連携を通じたメコン地域での日米の取組を含む。また,メコン地域諸国の首脳は,女性のエンパワーメントや地雷除去・不発弾処理分野におけるメコン諸国支援での日米協力の更なる進展及び「日メコン協力」とその他の地域協力メカニズムとの更なる調整への期待を表明した。さらに,メコン地域諸国の首脳は,タイにて開催予定の日本とメコン諸国間のグリーン・メコン・フォーラム及び2015年1月にラオスにて開催予定のメコン河下流域フレンズ特別会合を通じて,日本と米国が地域における環境問題にも取り組んでいることを評価した。

17 首脳は,今次会合開催に関するASEAN議長国としてのミャンマーの尽力に謝意を表するとともに,民主主義への移行過程にある同国において,政治,経済,行政,民間部門における改革と開発が進展していることを歓迎した。

18 首脳は,2015年以降の日メコン協力の将来的な方向性を議論し,「日メコン協力のための東京戦略2012」及び「東京戦略2012の実現のための行動計画」改訂版を更新するため,第7回日メコン首脳会議を2015年7月に日本にて開催することを確認した。

(了)