データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回インドシナ三国外相会議コミュニケ

[場所] ビエンチャン
[年月日] 1986年1月24日
[出典] 外交青書30号,520−522頁.
[備考] 骨子
[全文]

1.平和・革命勢力の成長により、1985年に東南アジア、アジア・太平洋及び世界情勢が新たな段階を迎えた。対話と平和共存は、国際的、地域的危機改善の新たな可能性へ向けての力強く、不可逆的趨勢を形成。

2.インドシナ三国の成長、団結及びソ連並びに社会主義諸国との連帯の成果を歓迎。「カンボディア人民共和国」とヴィエトナムは、越軍の撤退を1986年中も継続し、1990年までに完全撤退することを改めて強調。

3.インドシナ三国はカンボディア問題及び東南アジアの平和と安定のための早期の政治解決に結びつくような平和並びにカンボディア人民に対する宣言されない戦争の早期終結を切望。かかる精神から、第10回インドシナ外相会議コミュニケの5項目提案を再確認。カンボディア問題の政治解決については、2 つの側面、即ち国内的側面と国際的側面とを区別すべし。

a)カンボディアの国内問題は外部からの干渉を廃止、カンボディア人自身により解決されるべし。「カンボディア人民共和国」は、ポル・ポット派の排除を基礎に、国民和解達成のため、反対派クメールの個人あるいはグループと話し合いに入ること及び越軍完全撤退後に自由な総選挙を行う用意があることを宣言。また、「カンボディア人民共和国」は、かかる話し合いを導くあらゆる仲介努力を歓迎。

b)カンボディア問題の国際的側面の解決は、(i)ポル・ポット派及び他のクメール反動勢力に対する全ての物的・軍事的援助の停止、(ii)右諸勢力に対するタイ領の聖域使用の停止、(iii)カンボディアの国内問題に対する全ての外部からの干渉の停止、及び(iv)「カンボディア人民共和国」に対する諸外国の軍事的敵対行為の停止とこれらに相伴う越軍の撤退に関する合意を意味しよう。

カンボディア問題の平和的解決と同時にこの地域の永続的平和を確保する必要があり、そのためにはバンドン (1955年) 、クアラルンプール (1971年)、及びバリ (1976年) 諸宣言並びに1981年の国連総会でラオス外相により提出されたインドシナ三国の宣言における諸原則に基づき、東南アジア平和・安全地帯の設定が合意されるべし。

4.1985年に開催された地域の両グループを代表するインドネシア・越外相会談及びその作業グループの会合は、東南アジア及びカンボディアの平和と安定のための問題解決を目的とした対話プロセスに新局面を開くものであり、高く評価。これらの会合は、両者が相互理解を深め、相違点を次第に減らしていくことに貢献。次回のインドネシア・越外相会談及び来るべきインドシナ諸国とその他のASEAN諸国との対話は、かかるプロセスを強く促進するもの。これらは対等の立場に立ちかつ当地域の諸国家の利益、更にはアジアと世界の平和の利益にかなうような合意を可能ならしめるものとなろう。

インドシナ三国は、平和共存に基づきタイとの間の問題解決のため、交渉を行う用意あり。両者間の善隣関係回復は東南アジアの平和・安定にとり極めて重要な要素。ラオスがタイとの関係における諸問題につき努力を払っていることを高く評価。政府レベル交渉に関するラオスの提案がタイ政府により注意深く検討されることを希望。

5.「カンボディア人民共和国」は、タイに居住するカンボディア難民の帰還につき交渉の用意あり。他方、難民キャンプはタイ・カンボディア国境から移動され、人道的機関の管理下に置かれるべし。クメール反動勢力はこれら難民キャンプに関し、いかなる管理、いかなる政治・軍事目的の使用をも拒絶されるべし。すべての武装分子はキャンプより追放されるべし。

「カンボディア人民共和国」は、カンボディア領内で捕えられたタイ兵士と民間人に関する問題の解決のため、タイ当局と直接又は間接の交渉の用意あり。

6.ラオス及びヴィエトナム政府と米政府との間のMIA捜索に関する協力の新たな進展を歓迎。「カンボディア人民共和国」は、本件問題に関し米国と協力を行う用意ある旨再確認するも、現在のところ米側がかかる人道的問題に関心を示していないのは遺憾。

7.インドシナ三国人民は中国人民との友好関係の早期回復を希望。両者の間の友好・協力関係は、東南アジア及びアジアの平和と安定にとり極めて重要な要素。交渉を通じてのみ関係当事者間の相違点が解決可能との精神から、「カンボディア人民共和国」、ラオス両国は、中国との関係正常化に向け、何らかの前提条件なしに話し合いを再開するためヴィエトナムが払っている努力を全面的に支持。

8.先般の米・ソ首脳会談は、国境環境の改善、軍縮の促進及び宇宙への軍拡を阻止する上で新たな可能性を生み出したものと評価。米国との間で打ち出されたソ連側の立場やイニシアティブ、特にゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の2000年までの核兵器廃絶提案を全面的に支持。

ルアンダ非同盟外相会議の結果を高く評価し、インドシナ三国が本年4月ニューデリーで開催予定の非同盟外相会議及び8月開催予定の非同盟首相会議の成功に向け最善の努力を行う旨宣言。