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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インドネシア商工会議所主催午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] ジャカルタ
[年月日] 1981年1月12日
[出典] 鈴木演説集,179−180頁.
[備考] 
[全文]

 ハシム・ニン会長、ならびに御列席の皆様

 本日は、ここにかくも多数の有力な実業家の方々のお集まりを得て、真心のこもった午餐会を催して戴き、また、ただ今ハシム・ニン会長から、心暖まる御言葉を頂戴し、誠に有難うございます。インドネシアを訪問することは、私のかねてからの念願であり、私は、本日、ここに貴国を訪問して皆様方と親しくお話しする機会を得たことを、大きな喜びとする次第であります。相互依存関係が益々深化している世界において、私は、日本の平和と発展は、ASEANの平和と繁栄があって、はじめて達成し得ることを確信致しております。私は、このような考えに基づき、ASEAN諸国の願望を十分理解し、今後共ASEAN諸国の経済・社会の健全な発展とを通じてのASEANの国造りのために協力していく決意であります。

 ただいま、スハルト大統領閣下との会談を終えましたが、率直な意見交換を通じ相互の理解を深めることが出来、また、インドネシアの開発にかける大統領閣下の熱意に強い感銘を受けました。インドネシアは、スハルト大統領閣下の英明な指導の下に開発利益の均霑を通じた社会正義の実現を主目的の一つとする第三次五カ年計画を遂行しておられますが、わが国としても、農業開発、家族計画、中小企業育成、人造り、エネルギーその他運輸通信等経済基盤の広範な分野における経済協力を通じ、インドネシア国民の皆様方の一人一人の生活の向上に、協力できることを望んでおります。両国の関係は貿易、投資等に代表される、民間の経済分野においても、確実に発展してきておりますが、その過程でインドネシア商工会議所が、経団連、日本商工会議所との会合を通じ、日・「イ」関係の発展と相互理解の増進に、大きな役割を果たしておられること、また、御列席の皆様の中の少なからぬ方々は、合弁事業の良きパートナーとして、両国の経済関係の発展に尽力されていることを私も承知致しております。

 私は、日・「イ」関係は順調に発展していると信じておりますが、さらに相互に協力して改善すべき点もありましょう。技術移転の促進、プリブミ企業育成に対する協力、製品輸出拡大に対する協力について、皆様が現状に必ずしも満足しておられないことも十分理解しております。

 これらは、必ずしも一朝一夕に解決出来る問題ではありませんが、わが国としては、インドネシアの願望に常に留意し、また、インドネシア側においてもわが国の事情について十分理解していただいた上で、日・「イ」関係を文字どおりより高次元のもとへと、導いていく努力を惜しまないつもりであります。

 特に、本日の会合には、青年商工会議所の皆様も参加されておると伺っておりますが、今後のインドネシア経済の発展を担うこれら青年財界人の御活躍を、特に期待するものであります。

 私は、豊かな自然と人間に恵まれたインドネシアの将来は明るく、日・「イ」関係も相互の努力により、明るい発展が期待し得るものと確信しております。

 それでは最後に御列席の皆様と共に杯を挙げて、ハシム・ニン会長はじめ、インドネシア商工会議所の皆様の御健康、インドネシア共和国の繁栄及び日・「イ」両国の友好と協力関係の発展のために、乾杯致したいと思います。

 乾杯!

 スラマット・ミヌム!