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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 鈴木総理大臣夫妻主催答礼晩餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] マニラ
[年月日] 1981年1月9日
[出典] 鈴木演説集,173頁.
[備考] 
[全文]

 マルコス大統領閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 本日は、私共の滞在中の御厚遇に対し、ささやかな感謝の宴を催しましたところ、御多忙の中を御出席を戴き誠に有難く存じます。

 私共のマニラ滞在は、極めて短時間とならざるを得ず、明朝は、ジャカルタに向けて出発致しますが、その間、大統領閣下御夫妻並びにフィリピン朝野の皆様から、心のこもった暖かいおもてなしを戴き、私共にとっては、生涯忘れることのできない楽しく、かつ、有意義な思い出となりました。

 今回の訪問を通じ、私は前回お訪ねを致しまして以来七年近くの間に、フィリピンが大きな発展を遂げたことをこの眼で確めることが出来ました。大統領閣下並びに閣僚各位との会談を通じて、またフィリピン朝野の皆様と直接お目にかかることによって、今日、フィリピンがより大きな、輝かしい将来に向けて、前進すべくなみなみならぬ意欲を漲らせておられることを強く認識致しました。特に、マニラ市の発展につきましては、イメルダ夫人の献身的な御努力の結果であると伺い、あらためて深い敬意を表したいと存じます。

 我が国では、天は二物を与えずと申しますが、天はイメルダ夫人に如何に多くの美と才能を与え賜うたことでありましょう。

 大統領閣下との会談におきましては、現下の東南アジア情勢、ひいては世界の平和と安定にかかわる諸問題、並びに両国間の今後の協力関係につき、広くかつ深い意見の交換を行うことができました。

 この会談を通じ、貴国の新たなエネルギー源の開発と、輸出の振興、国民生活の向上を重要な政策目標とする貴国の積極的な開発計画や、アセアンの連帯を基礎とする東南アジアの平和と安定をめざす貴国の外交政策について、理解を深めることができましたことは、私にとって、極めて有意義でありました。

 私は、ここにあらためて、貴国の経済と社会の均衡のとれた開発のために払われる貴国の御努力に対し、我が国ができる限りの協力を惜まないとの方針を確認したいと存じます。我が国は、フィリピン及びアセアンの隣人として、また、永遠の友人として、末永くアジアの平和と繁栄のために、手に手をとりあって前進して行きたいと存じます。

 最後に私は、御列席の皆様とともに杯を挙げて、マルコス大統領閣下並びに令夫人の御健康と御幸福を祈念しつつ、フィリピン国民の一層の繁栄と発展のために乾杯したいと存じます。

 乾杯!

 マブハイ!