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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ベトナム・ラオス・カンボジア外相会議ステートメント

[場所] 
[年月日] 1980年7月18日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),1167−1168頁.月刊国際問題資料,1980年8月,13−5.
[備考] 
[全文]

1.ラオス、カンボジア、ベトナムは1980年1月5日プノンペンで開かれた三国外相会議の共同コミュニケで提起した基本的提案をくり返すとともに、次の具体的提案を行う。

 イ.カンボジア、ラオス、ベトナムはタイとの2国間あるいは多国間の条約に調印し、相互不可侵、相互不干渉、ならびに自国の領土を他国への敵対基地として第3国に使用させることを禁止する旨の公約を行う。

 ロ.ラオス、カンボジア、ベトナムは東南アジア各国と不可侵・平和共存の2国間条約に調印する。

 ハ.インドシナ3国はこの地域の各国とともに、平和・安定の東南アジアを確立するため討議し、東海をめぐる紛争問題をともに平和的に解決する用意がある。

2.ラオスとベトナムは、カンボジア人民がポル・ポト残党その他のカンボジア反動グループを断固懲罰し、せん滅することは完全にカンボジアの主権に属する問題であることを確認する。カンボジア人民共和国はタイの主権と領土保全を尊重しているが、これはタイ当局がカンボジアの内政に干渉し、カンボジアの主権と領土保全を侵犯する際に断固たる反撃を受けないということを意味するものではない。

 ラオス人民とベトナム人民はカンボジア人民のこの神聖な自衛権を全面的に支持する。

 ラオスとベトナムは、緊張を緩和し、カンボジア・タイ国境を平和・友好の国境にすることを目的としたカンボジア人民共和国の次の4項目提案を完全に支持する。

 イ.カンボジアとタイは国境地域の平和と安定を維持し、国境地域を相互の主権に対する侵犯の足場として使用しないことを公約する。両国間の国境地域に非武装地帯を設け、国境線における平和と安定の保障に関する各協定の実行のために合同委員会を設立し、同時に国際監視の形式について合意する。

 ロ.カンボジアとタイは相互の協力および各国際組織との協力で、タイが負っている負担を減らすため、両国国境線の平和と安定の保障を確立するため、難民問題の解決について十分な措置を講ずる。タイ在住のカンボジア難民が自らの希望に基づいて、外国への移住ができるための条件を作り出す。同時に、タイ在住のカンボジア難民のカンボジアへの帰国をめぐる問題を解決するため会談を行う。各難民キャンプの所在地は国境衝突を避けるため、国境から遠くに移す必要がある。

 中立の立場に関する国際法に従って、タイに非難しているポル・ポト一味その他の反動勢力に属する武装クメール人は武装解除され、戦闘地区から遠く離れた別々のキャンプにまとめられなければならない。彼らは難民とみなされてはならず、カンボジア人民に敵対するためカンボジアにもどることを許されないものとする。

 ハ.カンボジア人民革命評議会は、カンボジアへの援助がもっとも効果的に進められるようにするため、カンボジアの独立と主権の尊重を基礎に、世界の人道的組織と協議する用意がある。

 人道的援助の名の下で、カンボジア人を買収して祖国を脱出させ、こうして難民をつくり出し、国境の平和と安定を破壊してはならない。人道的援助はタイに逃亡しているポル・ポト一味その他の反動勢力に属する武装クメール人を養うために使用されてはならない。

 カンボジア国内の人民に対する援助は、タイ領土ではなく、カンボジア領内で分配されなければならない。

 カンボジアへの援助物資の輸送については、各国際組織とカンボジア政府の間の合意のもとに実施されなければならない。

タイ領土ではなく、カンボジア政府の間の合意のもとに実施されなければなら

ない。

 ニ.カンボジアとタイ両国の問題解決のための話し合いは、両国政府間あるいは政府外の各組織間で直接会談することができ、またカンボジアを代表する国とタイに委任された国の間あるいは双方が合意した仲介的形で間接会談を行うこともできる。

 以上述べた問題について各当事国が申し合わせた協定や了解は、国際会議または相互に合意した国際的保障によって確認され、保障される。

3.ラオス、カンボジア、ベトナム三国外相は、タイ政府がタイの土匪グループとパトロール隊をラオス領に公然と侵入させ、攪乱活動を行わせ、タイ・ラオス国境前線を閉鎖し、両国関係を緊張させ、1979年1月と4月のラオス・タイ共同声明にしるされた諸条項に著しく違反したことを厳しく非難する。このような行動は、米帝国主義と結託してインドシナ三国に敵対する北京反動一味の全体的謀略の一部である。タイが彼らの敵対政策に追随し、ラオスとの関係を破壊していることは、両国人民の願望と利益に逆行し、東南アジアの平和と安定にマイナスになっている。タイはタイ・ラオス関係の悪化について全責任を負わなければならない。

 カンボジアとベトナムは、自らの主権と領土保全を断固守っている兄弟的ラオス人民を全面的に支持するとともに、タイとの善隣関係の発展を堅持し、ラオス・タイ声明の中でしるされた公約をまじめに実現しているラオスの一貫した善意ある態度と正しい対外政策を全面的に支持し、タイ政府に対してラオス・タイの関係正常化のため、ラオス人民敵対の行動を中止し、両国国境問題を含む既定の合意事項をまじめに実行するよう要求する。

4.ラオス、カンボジア、ベトナム三国外相は北京反動政権がベトナム敵対の行動を強化し、武力行使を強め、陸海空からベトナム領土主権を侵犯し、侵略の脅迫を行う一方、ベトナム内部での攪乱行動をたくらみ、またベトナム・中国会談の第三ラウンド開始を一方的に引きのばしていることをきびしく非難する。

 ラオスとカンボジアは独立、主権、領土保全を断固として守るための兄弟的ベトナム人民の必勝の正義の闘争を全面的に支持するとともに、ベトナム・中国問題を交渉で解決するというベトナム政府の正しい立場と善意ある態度を支持する。この立場と態度は両国人民の願いと利益に合致し、アジアと全世界の平和と安定の擁護に貢献するものである。ラオスとカンボジアは中国当局に対して、ベトナムに敵対するすべての策動をただちに中止し、ベトナム側がくり返し提起しているベトナム・中国会談の第三ラウンドを早期に開くよう要求する。