データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中越紛争に関する関係各国の声明等,ソ連政府声明

[場所] 
[年月日] 1979年2月l8日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),1030頁.月刊国際問題資科・1979.3, l8−9頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 2月17日中国軍がベトナム社会主義共和国の領土に侵入した。社会主義ベトナムに対する北京の侵略は、中国政府が、東南アジア全体、特にベトナムに関して数年間行ってきた脅迫の政策の直接の結果である。自主的政策を遂行し、東南アジアにおける中国の膨脹に協力することを拒絶したばかりでなく、北京の覇権主義的陰謀の実現の深刻な障害となったベトナムを「制裁」したいと北京の指導者達は公然と言明している。

 中国支配層はカンボジア人民が血まみれのポル・ポット殺人体制をほおり出し、隣国べトナムと友好関係を回復したいという事実に甘んじることを望んでいない。これを侵略の口実として使うことは、歴史が示すように侵略者を不名誉な結末に導くものである。中国のベトナムに対する攻撃は、平和の運命についての無責任な態度及び中国指導部が武器を取る時の犯罪的な安易さの新たな証しである。

 極く最近外国侵略を撃退したばかりのベトナムヘの中国軍の侵攻につき世界の正直な人間は一人たりとも、主権国家一国たりとも無関心でいることはできない。国連憲章の諸原則に反し、国際法を愚弄するこれら侵略行動は、全世界に東南アジアにおける北京の覇権主義政策の本質をさらけ出すものである。かかる政策を看過することは、暴力と強圧を看過することであり、世界を戦争に投げ込む中国指導部の試みを看過することである。

 ベトナムに対する攻撃は、また、北京がその「味方」であることを装おうと努めている中小諸国家の利益擁護についての中国の指導者達の大言壮語の真の価値を示した。新しい侵略の犠牲者になった英雄的なベトナム人民は、今回も自国を守る能力があるし、ベトナムには信頼出来る友人達がいるだけに、一層そうである。ソ連邦は、ソ連・ベトナム友好協力条約により負った義務を果たすであろう。

 北京で政策を決定している者達は遅くならないうちに止まるべきである。他の諸国人民と同様、中国人民にとっても戦争ではなく、平和が必要なのである。社会主義ベトナムに対する北京の侵略の継続の結果についての責任は、すべて現中国指導部が負うべきである。

 ソ連邦は、侵略の停止とベトナム社会主義共和国領土からの中国軍の速やかな撤退を断固として要求する。社会主義ベトナムより手を引け。