データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ターニン・クライウィチエン・タイ国首相の訪日に際しての日本とタイの共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1977年9月9日
[出典] 外交青書22号,377−379頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.タイ国首相ターニン・クライウィチエン閣下及び同夫人は,日本国政府の招待により1977年9月7日から11日まで日本を公式訪問した。

2.ターニン首相夫妻は,9月8日,宮中において天皇・皇后両陛下に拝謁を賜つた。

3.ターニン首相及び福田総理大臣は,9月8日及び9日,両国が共通の関心を有する国際的及び地域的な幅広い諸問題ならびに両国間の諸問題について意見交換を行つた。

  この首脳会談には,タイ側よりウパディット外務大臣,スパット大蔵大臣,プーム工業大臣,スティー商務大臣が,また,日本側より鳩山外務大臣,園田官房長官が出席した。会談は本年8月福田総理大臣がタイを訪問した際に行われた首脳会談の結果を踏まえつつ親密かつ友好的な雰囲気の中で行われた。

4.福田総理大臣は,前記の訪問の際にタイの政府及び国民から受けた暖かいもてなしにつき,あらためて感謝の意を表明した。福田総理大臣は更にクアラ・ルンプールにおけるASEAN首脳会議,ASEAN5カ国及び日本,オーストラリア,ニュー・ジーランド域外3カ国の非公式首脳会議及び同総理大臣とASEAN首脳との会談においてタイが果した役割を賞賛した。

5.ターニン首相は,本年8月の福田総理大臣のASEAN各国及びビルマ歴訪により,日本とこれら諸国との関係が更に緊密化したことを喜ぶとともに,このような関係の緊密化は東南アジアの安定と繁栄に大いに貢献するものであると信ずる旨述べた。

  福田総理大臣は,同総理大臣のマニラにおける演説で明らかにされた日本の東南アジアに対する基本政策は,平和に徹する国家としての日本の決意を示すものであり,日本と東南アジア諸国との互恵的な友好関係の確固たる礎となるものである旨説明した。

  ターニン首相は,東南アジア全域にわたる平和と繁栄の促進を目ざす日本のかかる政策を多とした。

6.会談において,両首相は,今日の世界においてはすべての国家が相互依存の関係に立つているとの共通の認識を再確認し,各国が世界の平和と繁栄という共通の目標に向つてさらに協力を続けることが肝要である旨強調した。両首相は,更に,アジア全域における平和と安定ならびに同地域の繁栄が世界平和の維持にとつて極めて重要であることを再確認し,かかる共通の目的を達成するために協力して建設的努力を行うとの決意を表明した。

7.両首相は,伝統的な友好的かつ親密な関係を反映して近年あらゆる分野にわたる二国間の交流が強化拡大しつつある事実を歓迎するとともに,両国関係の将来の一層の発展のためには,政治,経済のみならず,社会,文化等広範な分野において真の友人としての心と心の触れ合いに基づく相互信頼関係を築きあげることがますます重要であるとの認識を共にし,今後両国はこのために一層努力すべきことに意見の一致を見た。

8.両首相は,両国間貿易の安定的な拡大及び多様化が両国各々の利益に適うものであることを認識しつつ,両国間の貿易を一層促進することの重要性を再確認し,より均衡的な経済関係を導びくような健全な二国間貿易の発展のために引き続き相互に努力を払う意向である旨を明らかにした。

  両首相は,両国間の一層良好な貿易関係をもたらす上で日・タイ貿易合同委員会が引き続き重要かつ有効な役割を果していることに意見の一致をみた。

9.ターニン首相は,日本の民間部門による投資がタイの産業開発の促進に貢献していることに満足の意を表明し,またタイ側においても投資環境の一層の整備に今後も努めて行く意向である旨を述べた。ターニン首相は,近年タイにおける日本の投資が減退していることに鑑み,日本からの投資を増大させるための日本国政府及び民間部門の協力を要望した。福田総理大臣は,ターニン首相のかかる要望に対し,日本の民間部門が投資を通じてタイの開発に参加するよう勧奨する意向である旨を表明した。

  この点に関し,両首相は,産業協力と民間投資の促進についての両国関係者間の緊密な協議が大いに望ましいと信ずる旨述べた。

10.両首相は両国間の一層の経済協力の進め方について話し合つた。

  ターニン首相は,これまでの日本の経済技術協力がタイの経済開発と福祉の向上に寄与したことを高く評価するとともに,タイの第4次5カ年計画の重点施策である地方及び農村の開発計画の実施につき日本からより一層拡大された経済技術協力を得たい旨要請した。

  福田総理大臣は,今後5年間に政府開発援助を2倍以上に増大するとの日本政府の基本方針に照らし,日本としてはターニン首相により着手された地方及び農村の開発計画に特に重点をおいて引き続きタイの経済開発の促進と福祉の向上に応分の協力を行つていく用意がある旨述べた。

11.両首相は,文化交流が両国国民間の相互理解を促進する上で重要な役割を果していることに満足の意をもつて留意した。両首相は,今後ともあらゆる分野における両国国民間の接触を増大し交流を拡大すべく努力する意向を再確認した。

12.両首相は,ターニン首相の日本訪問が日・タイ両国間の相互理解と友好関係の促進に大きく寄与したことに深い満足の意を表明した。

13.ターニン首相は,日本国政府及び日本国民より,同首相夫妻及びその一行に対して示された心からの歓迎と暖かいもてなしに対して深甚な謝意を表明した。