データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 田中総理大臣のビルマ訪問に際しての日本とビルマの共同新聞発表

[場所] ラングーン
[年月日] 1974年11月8日
[出典] 外交青書19号,95−97頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1. 日本国総理大臣田中角栄閣下は,ビルマ連邦社会主義共和国大統領ウ・ネ・ウィン閣下の招待により,1974年11月6日から8日まで,ビルマを公式訪問した。

2. 田中総理大臣は,11月6日,ウ・ネ・ウィン大統領を訪問し,また,その翌日,ウ・セィン・ウィン首相を訪問した。日本側とビルマ側との間の会談は,両国間に存在する友誼と相互理解の関係を反映し,誠実で友好的な雰囲気により特色づけられた。

3. ビルマ側指導者との会談において,田中総理大臣は,東南アジア諸国との間に,同地域のすべての国が平和と繁栄を分かち合うよう良き隣人の関係を促進し,強化することが望ましいことを強調した。

4. 田中総理大臣は,また,日本がビルマ及びその他の東南アジア諸国との関係において,各国の自立の意志と願望を尊重し,各国の発展に貢献し,経済的自立への努力を支持することを基本原則としていることを確認した。ビルマ側はこれらの基本原則を歓迎した。

5. 両国の指導者は,日本とビルマとの間の友好の絆が相互の尊敬と協力と互恵の原則に基づき,強化されて来たことに満足の意を表明した。

   双方は,両国間の現在の関係が互恵であり,この関係を一層緊密化する可能性が存し,双方がこの目標に向かつて努力すべきであることに合意した。この関連において,双方は,両国間の経済協力の分野における着実な進展について,満足の意を表明した。

6. 双方は,共通の関心を有する現下の国際情勢なかんずくアジアの情勢について意見を交換した。双方は永続的平和の達成にとつて好ましい条件が,東南アジアにおいて創り出されるべきであるとの希望を表明した。この関連において,双方は,国家間の関係の一つの基礎として国際連合憲章に規定された基本原則を遵守することを再確認した。

7. 日本国とビルマ連邦社会主義共和国は,先進及び開発途上のすべての国が,対立と抗争のない国際社会を招来するために,現在の国際的な経済及び政治問題を解決すべく協力をおこなつている傾向を歓迎した。

   双方は,これらの問題を効果的に解決するため,すべての国が実際的な解決を見出すよう一致共同して努力すべきであることに合意をみた。

8. 双方は,ヴィエトナム平和に関するパリ協定並びにラオスにおける連立政権に関する協定の締結を歓迎し,関係者によるこれら諸協定の忠実な遵守及び実施がインドシナにおける安定的かつ永続的な平和の確立のために不可欠であることに合意した。

9. 田中総理大臣は,ビルマ連邦社会主義共和国政府及び国民が経済開発と社会発展のために,たゆまざる努力を続けていることに敬意を表するとともに,その成功を祈念した。

   田中総理大臣は,日本国政府がこれらの努力を支援するために引き続きできる限り協力する旨述べた。

10. 田中総理大臣は,ビルマにおいて成功裡に実施された憲法上の改革に関してビルマ側に祝意を述べるとともに,ビルマの将来の進歩と繁栄を祈念した。

11. 双方は,今回の田中総理大臣のビルマ訪問が成功し,両国の友好と協力関係を一層強化することに大きく寄与したことに満足の意を表明した。双方は,今回訪問が双方の個人的接触を新たにする機会をもたらしたことを歓迎し,今後ともかかる接触を維持し,かつ,強化したい旨希望した。

12. 田中総理大臣は,ビルマ滞在中に田中総理大臣及び随員一行が受けた友情に満ちた暖かいもてなしに対し感謝の意を表明した。