データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第4回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ

[場所] バンコク
[年月日] 1969年4月5日
[出典] 外交青書13号,26−29頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1 第4回東南アジア開発閣僚会議は1969年4月3日から5日までバンコックにおいて開催された。

2 会議には、インドネシア共和国、日本国、ラオス王国、マレイシア、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国およびヴィエトナム共和国が参加した。カンボディアもまたオブザーバーとして参加した。これら諸国の首席代表は、それぞれ、フランス・セダ運輸通信大臣、愛知揆一外務大臣、フンパン・サイニヤシット経済担当大臣、モハメッド・キール・ジョハリ文部大臣、エドウアルド・ロムアルデス大蔵大臣、ヨン・ヨク・リン運輸通信大臣、ポット・サラシン副総理兼国家開発大臣およびオー・ゴク・ホー経済大臣であった。カンボディアのセン・ブン・コルン計画省総局長がオブザーバーとして会議に出席した。カンボディアが次回およびそれ以降の会議には正式参加国として代表されるようにとの希望が表明された。

3 会議には、また、アジア開発銀行、東南アジア漁業開発センター、国際連合アジア極東経済委員会、世界食糧農業機構および国際連合開発計画からのオブザーバーも出席した。

4 タイ国国王陛下は、会議の開会式に際し、東南アジア地域における不安定な情勢と、それが世界の平和に対してもつ意味の故に、この地域が全世界的な関心の的として、ますます重要性を増しつつあること、および、現存する政治的、経済的困難を克服する方途として、地域協力に対する期待が益々高まりつつあることを強調する歓迎のメッセージを寄せられた。

5 会議は、タイ国総理大臣閣下によって開会された。総理大臣は、各国代表を歓迎し、会議の成功を希望するにあたり、この地域の平和、繁栄および安定を維持促進し、東南アジアの連帯を強化し、かつこの地域のいっそう調整のとれた経済開発を促進するため、近隣の自由を愛好する諸国民がいっそう緊密に協力することの重要性を強調した。

6 会議を通じ、討議は和気あいあいと、かつ建設的に進められた。会議の参加者は、東南アジアにおける経済情勢を検討し、この地域の諸国の当面する経済開発上の主要な問題のいくつかを指摘し、かつ相互協力により実際的な解決を図るための方法を探究しつつ、有益な協議を行なった。

7 会議は、東南アジアの経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない、この地域の将来がいっそう明るくなるであろうとの明確な徴候があること、とりわけ、国際的な金融・経済情勢の不調にもかかわらず、農業、工業、運輸および通信の分野において、重要な進歩が見られたことに注目した。

 会議は、経済成長に対する種々の障害−なかんずく、域内の人口増加と失業増大、技術的熟練の不足、その他好調な国際収支の維持、インフレーションの抑制特に一次産品価格の安定による交易条件の改善、貿易拡大の促進等にあたっての困難−を含む問題点に注目した。

8 会議は、日本が東南アジアにおける経済社会開発のための協力をいっそう促進するために特別の努力を行なっていること、特に近い将来におけるヴィエトナムの紛争終結の可能性にかんがみ、日本がヴィエトナムおよび戦争の影響を受けた周辺の国々の復興と開発を助けるため、できるだけ広範な国際的基盤に立つ協力を実現するための方策を真剣に検討しつつあることに感謝をもって注目した。

9 会議は、東南アジア漁業開発センター理事会議長の報告を了知し、過去一年間のセンターの進捗を歓迎した。

 会議は、水産養殖についての新たな部局の設立に関する諸問題点を検討するために作業部会を設置するとの理事会の決定を支持し、かつ、日本政府が理事会の作業を援助するため調査団派遣に同意したことに対し謝意を表明した。淡水および汽水漁業のための調査・訓練センターは、現存のセンターとは独立に技術的レベルで、フイリピンに設置すべきであるとの見解も表明された。

 会議は理事会に対し、フイリピン代表団の提案およびインドネシア代表団の意見をも検討の対象とするよう要請した。

 会議はタイ、シンガポールおよび日本政府が行なった実質的な寄与ならびにフイリピンの申出を、他のセンター参加国により示された積極的関心とともに感謝をもって注目した。

さらに、他の東南アジア諸国もセンターに参加することが強く希望された。

10 会議は、アジア開発銀行特別基金に対する拠出、特に、主として東南アジアに使用されることを意図している日本国の農業特別基金への拠出に関する同銀行総裁の発言に感謝をもって注目した。会議は、また、地域運輸調査に関するプロジェクトの実施に感謝をもって注目した。

11 会議は、先進諸国一般から同銀行の特別基金に対し、有意義な拠出がさらに行なわれることを強く希望した。これらの特別基金は、東南アジアの発展途上国の中でも特に開発の遅れた諸国の開発努力を有効に貢献するような緩和された条件で運用されるようにとの希望が表明された。

12 会議は、メコン河下流域およびメコンデルタの開発の重要性を強調した。この関連で、国際的な資金源が多数国間の基金の基として十分に利用されることが要望された。

13 会議は、マレイシア政府の発意に基づき、東南アジア諸国が運輸通信の分野において調整された開発計画を達成するために行なった努力に満足の意をもって注目した。さらに会議は、クアラルンプール、マニラ、バンコク、およびジャカルタにおいて開催された東南アジア運輸通信管理会議の一連の会合以来なされた進展ならびにアジア開発銀行によって着手された地域運輸調査にとりわけ注目した。

14 会議は、貿易、観光および外国からの投資の促進を目的とする経済開発促進センター設置の提案に関してみられた進展に注目し、これらの目的の実現をはかるための現実的な相互協力の方法にいっそうの考慮を払うため、東京において参加国代表の間で協議を行なうことに合意した。

15 会議は、さらに、公衆衛生問題および殺虫剤の悪影響からの人体保護に関する調査提案に関連して述べられた見解および示唆に注目した。会議は、更に、このプロジェクトが東南アジア全地域を対象とすべきであり、また、この他医学的な教育、訓練を含む医学の分野での協力および経験の交換をも行なう可能性を有するこに注目した。会議は、第五回閣僚会議に提出されるべきプロジェクト協定案を準備するため、作業グループを設置することに同意した。会議は、作業グループの第一回会合を主催するとのインドネシア政府の申出に感謝をもって注目した。

16 会議は、タイ国によりなされた「1970年代の東南アジア経済の分析」と題する提案を考慮し、この調査を行なう専門家チームを指導するため、参加国代表からなる諮問委員会を設立することに合意した。会議は、第五回閣僚会議における検討のため報告を提出することができるように、このプロジェクトの実施の過程においてはタイ政府が会議を代表して行動するよう求めた。調査を行なうにあたっては、この問題に関する現存の資料を活用すべきことが強く希望された。アジア開発銀行の適切な援助がこの目的のために提供されるよう希望された。さらに、東南アジア諸国のみならず日本もまたこのプロジェクトに対し、実質的な貢献を行なうことが希望された。

17 会議は、閣僚会議の会合と会合の間においても引続き協議を行なうことが望ましい旨再確認した。この目的のため、従来の会議で表明された見解および討議された事項を考慮に入れて、第5回閣僚会議のための必要なアレンジメントおよび準備を行なうため、第5回閣僚会議のための合同作業委員会を、次回閣僚会議主催国としてのインドネシア共和国政府が、ジャカルタにおいて開催することに同意した。

18 会議は、第5回閣僚会議を1970年中にインドネシアで開催したいとのインドネシア共和国政府の招請に注目し、感謝をもってこれを受諾した。

19 会議は、当地に参集した各国代表団に暖かい歓迎と能率的な便宜を与えたタイ国政府および国民に対し、深い感謝を表明した。