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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ

[場所] シンガポール
[年月日] 1968年4月11日
[出典] 外交青書13号,23−26頁.
[備考] 訳文
[全文]

1 第3回東南アジア開発閣僚会議は、1968年4月9日から11日までシンガポールにおいて開催された。

2 会議には、インドネシア共和国、日本国、ラオス王国、マレイシア、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国およびヴィエトナム共和国が参加した。これら諸国の首席代表は、それぞれ、フランス・セダ大蔵大臣、三木武夫外務大臣、インペン・スルヤタイ司法兼計画協力大臣、モハメッド・キール・ジョハリ文部大臣、エドゥアルド・ロムアルデス大蔵大臣、エス・ラジャラトナム外務大臣、ポット・サラシン国家開発大臣およびチュン・タイ・トン経済大臣であった。

3 会議には、また、イム・コン・サインヴェト在シンガポール・カンボディア王国大使館書記官、渡辺武アジア開発銀行総裁およびアーサン・ウ・ディンFAO代表が出席した。さらに、オーストラリア、セイロン、インド、ニュー・ジーランドおよびパキスタンからのオブザーバー代表も列席した。

4 会議の開会にあたりクーマラスワミ・シンガポール共和国大統領代理は、東南アジア諸国がいかなる国も自国のみで経済問題の解決を見いだすことはできないとの真実を悟るのにほぼ20年を要したが、いまや、経済成長は他国との協力によっていっそう迅速にしかもより苦痛をともなわずに達成しうるとの認識が東南アジア諸国の間で強まりつつあることに注意を喚起した。同大統領代理は、地域協力が将来のすう勢であり、これに立ちおくれることはいっそうの貧困と経済的後進性をもたらすのみであることを認めつつ、地域協力および国際協力については必然的な論理が存在するが、かかる論理は、具体的なかつ実際的な措置に置き替えられたときは、容易に認識され、または受諾されない旨を述べた。同大統領代理は、これらの制約のいくつかをとり除くというこの会議の任務の困難さを認めつつ、会議における審議を通じて、関係諸国が平和で、かつ、いっそう繁栄する東南アジアという目標に何歩か近づくようにとの希望を表明した。

5 会議における討議は、終始率直に、かつ、和気あいあいと進められ、東南アジア諸国の直面する数多くの開発問題の解決を相互協力を通じて探究することに対する参加国の強い関心を反映した。

6 会議は、東南アジアにおける経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない、最近の国際経済金融情勢の不調な動きにもかかわらず各国が達成した種々の経済成長率、ならびにインフレーション対策から、農業および工業における成果に至る種々の分野における重要な進歩に注目した。各国代表は、また、国家の平和と安定の維持、人的資源の問題、ならびに一次産品価格の低下および増大する輸入需要から生ずる国際収支上の困難等、この地域の当面する諸問題についても言及した。

7 会議は、各国政府が経済開発のため自らの資源を活用する積極的な手段をとらねばならぬこと、しかしながら、これと並んで、先進国からのいっそうの経済協力、国際機関からのいっそうの援助およびそれらの効率的な使用も、それぞれの計画およびプロジェクトを実施するにあたって、極めて貴重であることに同意した。第2回UNCTADでの討議にかんがみ、かかる協力は、より自由な資本の流れ、工業製品に対する市場の開放および一次産品に関する困難の軽減等の形をとりうるとの感触であった。

 さらに、過去の開発の成果を評価し、かつ、分析することが将来の開発の能率化を容易にするために有益であること、および種々の地域協力の努力の間の重複を避けるためにしかるべき注意が払われるべきことが認められた。

8 会議は、昨年マニラで開催された第2回閣僚会議以来、東南アジア諸国間の経済協力の分野においてさらに進展が見られたことを満足の意をもって注目した。会議は、また、連帯と地域協力の強化に資するこの分野での具体的成果のいくつかに注目した。

9 会議は、より緊密な地域協力が、相互の利益となり、また、各国が独力のみでは克服しえない諸問題を解決するために有用であることを一致して確認した。会議は、また、参加各国がそのための努力において各自の役割りを果たす決意であることに注目した。

10 会議は東南アジア漁業開発センターが設立され、1968年初頭に同センターの創立理事会が開催されたことに満足の意をもって注目した。また、域内のすべての国がこれに参加するようにとの希望が表明された。さらに、海洋漁業調査部局および訓練部局に加えて、淡水魚および海水魚の養殖の問題を取り扱う新たな部局を設置すべきことが提案され、東南アジア漁業開発センターの理事会に対し、この提案を検討するよう要請することが合意された。

11 昨年9月クアラルンプールにおいて開催された東南アジア運輸通信官吏会議の重要性が、すべての代表により強調された。会議は、また、同会議のあとを受けた活動として、マレイシア政府による臨時事務局の提供、調整委員会の設置、アジア開発銀行に対する地域運輸調査実施の要請およびフィージビリティー調査のための優先プロジェクトの選定が行なわれたことに注目した。会議は、統合調査が必要であることを再確認するとともに、日・米両国政府からの技術援助の申出に感謝をもって注目した。

 会議は、この分野における地域プロジェクトを遠からず実施しうることとなるように、技術的調査研究が早期に完了されるとともに、アジア開発銀行に特別基金が設置されることを強く希望した。

12 会議は、アジア開発銀行の行なう地域運輸調査が地域の工業化および観光の将来性を考慮に入れたものとなるようにとの希望を表明した。

13 会議は、農業開発のための特別基金の管理および運用に関連する諸点に関するアジア開発銀行総裁の説明を感謝をもって受けた。会議は、農業開発のための特別基金が、農業のための緩和された条件での融資の主要な財源であっても、そのための唯一の財源ではないことに注目した。メコン下流域開発のために、特別基金が遅滞なく設置されるようにとの希望が表明された。

 また会議は、アジア開発銀行が地域内および地域間貿易促進のために果たす役割を認めた。

14 会議は、さらに、いくつかの先進国が特別基金に対する拠出の意向を表明したことに注目した。この関連で、会議は、アジア開発銀行に対し、拠出の見込まれる諸国との間の交渉を早い機会に開始することを強く希望した。

15 会議は、特別基金の運用にあたっては、健全なプロジェクトのみが考慮されるべきであり、東南アジア諸国にその主たる重点が置かれるべきであり、また、より有意義な結果が得られるためにはかかる援助が最も緩和された条件で供与されるべきであるとの見解を再び表明した。

16 会議は、工業化に関する地域協力を研究するために、この問題についてECAFEの行なった研究を考慮に入れつつ地域調査を組織することおよび世界の商業中心地に東南アジア諸国のための経済振興センターを設置することの実行可能性が検討されるべきことを認めた。

17 会議は、ジョクジャカルタのディーゼル機関車修理センターを参加国の利用に供するとのインドネシア共和国政府の申出および公衆衛生問題の調査を行なうべき旨の示唆に注目した。

18 会議は、閣僚会議の会合と会合の間においても引き続き協議が行なわれるべきことに合意した。

 この目的のため、第4回閣僚会議のための合同作業委員会を、次回閣僚会議主催国としてのタイ国政府がバンコックにおいて開催することが考慮された。会議における感触は、この合同作業委員会が、

 (イ)第3回閣僚会議で表明された見解および討議された事項を考慮に入れて、次回閣僚会議のために必要なアレンジメントおよび準備を行なうとともに、

 (ロ)地域協力の有効な促進に関する基礎的な問題についてのスタディー・グループの設置を検討するとのことであった。

19 会議は、第4回閣僚会議1969が年にバンコックで開催されることとなったことを感謝をもって了知した。