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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定(「血債」協定)第一条の実施に関する交換公文

[場所] 
[年月日] 1968年1月9日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),728−729頁.条約集、昭和43年(二国間)、313−23、429−36頁.
[備考] 
[全文]

(日本側書簡)

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本使は、日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定に言及する光栄を有します。日本国政府は、両国政府が同協定第一条4の規定に基づいて次のとおり合意することを提案いたします。

 両国政府は、協定第一条3にいう計画の実施計画(以下「実施計画」という。)を協議により決定するものとする。実施計画は、各年度に日本国が供与する生産物及び役務を定めるものとする。

II

 日本国の生産物及び日本人の役務の供与は、日本国とシンガポール共和国との間の通常の貿易が著しく阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように実施されるものとする。

III

1 シンガポール共和国政府が指定するシンガポールの当局(以下「シンガポールの当局」という。)は、実施計画に従つて生産物及び役務の供与が行なわれるため、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。

2 日本国政府は、前項にいう契約の締結を希望する日本国の国民及び法人に関する情報を、要請に基づきシンガポールの当局に提供するものとする。

3 すべてのそのような契約(その変更を含む。)は、(a)協定第一条及びこの書簡の規定、(b)両政府が協定第一条及びこの書簡の規定の実施のために行なう取極の規定並びに(c)適用される実施計画に合致するものでなければならない。契約は、前記の基準に合致するものであるかどうかについて認証を得るため、日本国政府に送付されるものとする。この項に定めるところに従つて認証を得た契約は、以下「契約」という。

4 1の規定にかかわらず、生産物及び役務の供与は、契約によることができないと認められる場合は、各場合について両国政府間の合意により契約なしで行なうことができる。

IV

1 日本国政府は、契約によりシンガポールの当局が負う債務並びにIII4にいう生産物及び役務の供与の費用にあてるための支払を、VIの規定に基づいて定められる手続によつて、行なうものとする。その支払は、日本円で行なうものとする。

2 日本国は、前項の規定に基づく円による支払を行なうことにより、かつ、その支払が行なわれた時にその支払額まで協定第一条の規定に従い生産物及び役務をシンガポール共和国に供与したものとみなされる。

V

 両国政府は、協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。

VI

 協定及びこの書簡の規定の実施に関する手続その他の細目は、両国政府間で協議により合意するものとする。

 本使は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による承諾を確認される閣下の返簡を、協定第一条4の規定に基づく同協定の実施に関する細目についての両国政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十八年一月九日

日本国特命全権大使 吉田健一郎

外務次官 ウーン・ワー・シアン閣下

(シンガポール側書簡)

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

 本大臣は、閣下の書簡に述べられた取極の内容を確認し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡が両国政府間の合意を構成するものとみなされることに同意する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十八年一月九日

外務次官 ウーン・ワー・シアン

シンガポール駐在

日本国特命全権大使

吉田健一郎閣下