データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 池田総理大臣とスカルノ大統領との共同声明

[場所] ジャカルタ
[年月日] 1963年9月28日
[出典] 外交青書8号,27−28頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 日本国池田勇人総理大臣はインドネシア政府の招待により、夫人とともに、一九六三年九月二十六日から同月二十八日までインドネシアを訪問した。

 池田総理大臣は、ジャカルタ滞在中、スカルノ大統領及びその他のインドネシア政府指導者と会見し、現下の国際情勢と両国が共通の関心を有する諸問題について意見を交換した。この会談は極めて友好親密な雰囲気の中に行なわれ、その際、両者は主として日本・インドネシア関係を深く、且つ、綜合的に検討し、特に、両国間の経済協力について協議した。

 池田総理大臣とスカルノ大統領は、平和の維持が両国の経済発展と両国民の福祉の前提条件であり、かつ、人類の生存のため不可欠であることに意見の一致を見た。

 池田総理大臣とスカルノ大統領は、核戦争が人類の完全な破滅を意味することを深く憂慮して、部分的核実験禁止条約の締結を歓迎し、効果的保障を含む全般的且つ完全な軍備縮少協定ならびに核兵器実験の全面的禁止協定の早期締結が急務であることを強調した。

 両首脳は、国際連合憲章の精神と原則を全面的に支持することを再確認し、加盟国数の増加に適応するよう、この世界機構を改善するため、ともに努力することに同意した。

 総理大臣と大統領は、日本・インドネシア両国間の関係を更に強化したいとの希望を再確認し、また、世界、特に西太平洋の平和を増進するために緊密に協力することに合意した。この点に関して総理大臣は、マフィリンド諸国の指導者が、その地域の安定、平和及び相互の繁栄に貢献する目的をもってマニラ首脳会談の精神にもとづき協議(ムシャワラ)を行なうようにとの強い要望を表明した。

 池田総理大臣とスカルノ大統領は、両国間の一九五八年の協定に基づく現行賠償実施計画が円滑に進捗しており、かつ、両国相互の利益のため日本との健全な経済協力の方向に進んでいることに満足の意を表明した。

 池田総理大臣は、スカルノ大統領に対し、日本はインドネシア国民の生活水準の向上と国造り一般を目的とする諸事業の発展を早めるため、日本の能力の許す範囲内で、引き続き出来る限りインドネシアに対する経済技術援助を拡大する用意がある旨述べた。両者は更に日本・インドネシア両国間の貿易を一層増進する方法につき意見を交換した。

 総理大臣と大統領は、両国間の経済協力は、単に商業上の考慮のみに基づくものではなく、両国の広義の相互利益に寄与するような積極的性格を有するものであることにつき意見の一致を見た。

 池田総理大臣とスカルノ大統領は、政治経済及び文化の各分野において現存する両国の友好的かつ協力的関係が今後ますます発展することを希望した。

 池田総理大臣とスカルノ大統領は、今回の訪問の機会に相互理解を深めることができたことに満足の意を表明した。両首脳は今回の訪問によって新たにされた個人的接触が今後とも維持され、強められるようにとの希望を表明した。

ジャカルタ 一九六三年九月二十八日

日本国総理大臣

池田勇人 署名

インドネシア共和国大統領

スカルノ博士 署名