データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 池田総理大臣とマカパガル大統領との共同声明

[場所] マニラ
[年月日] 1963年9月26日
[出典] 外交青書8号,28−29頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 日本国池田勇人総理大臣はフィリピンのマカパガル大統領の招待により、夫人とともに、一九六三年九月二十三日から二十六日までフィリピンを訪問した。

 マニラ滞在中、池田総理大臣とマカパガル大統領は両国が共通の関心を有する諸問題について率直な意見の交換を行なった。会談は極めて友好親密な雰囲気の中に行なわれた。

 大統領と総理大臣は世界平和の維持が自国の国民の経済発展と福祉にとって不可欠であるのみならず人類と文明の存続そのものにとっても必要不可欠の条件であることに意見の一致をみた。大統領と総理大臣は世界平和と国際の安全の維持を共通の目標とすることを確認し、あらゆる可能な手段によりこれらの目標を、特に両国が存する地域において達成するため努めることに合意した。これらの目標に関して池田総理大臣はマカパガル大統領がマフィリンドを主唱するに際して、同大統領が示した、平和への献身的努力を多とすると述べた。

 両首脳は核戦争が人類の完全な破滅を意味することを深く憂慮して、最近の部分的核実験禁止条約の締結を歓迎し、かつ、効果的査察及び管理を含む核兵器実験の全面的禁止協定の早期締結が急務であることを強調した。

 両首脳は効果的国際管理及び監視を含む全般的かつ完全な軍備縮少協定を締結する重要性を認めた。

 マカパガル大統領及び池田総理大臣は両国間の一九五六年の協定に基づく現行賠償実施計画が進展しており、フィリピン共和国の経済発展に役立っていることに満足の意を表した。

 大統領と総理大臣は、フィリピンと日本との間の貿易を一層拡大するための方法について意見を交換した。総理大臣は賠償、経済開発借款及び延払い信用供与を組合わせて活用することにより、可能なあらゆる援助を提供することを提案した。大統領はこの提案に対し謝意を表明した。この提案の実施を促進するため、友好通商航海条約批准問題解決にいたるまでの間両国国民の事業及び関連事項の遂行にあたって両国国民の間の関係を規律すべき取極の策定に関し、検討と会談が行なわれることになろう。

 大統領と総理大臣は政治経済及び文化の各分野における両国の友好的かつ協力的関係が今後ますます発展することを希望した。

 マカパガル大統領と池田総理大臣は今回の訪問の機会にアジア及び世界情勢全般に関するそれぞれの見解について相互理解を深めることができたことに満足の意を表し、この訪問により確立された個人的接触が今後とも維持され、強められるようにとの希望を表明した。

マニラ 一九六三年九月二十六日