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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定

[場所] ラングーン
[年月日] 1963年3月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),437−439頁.
[備考] 
[全文]

日本国及びビルマ連邦は、

 ビルマ連邦の経済及び社会の発展のため協力すること並びに両国間の友好関係を強化することを希望し、

 この協定を締結することに決定し、よつて、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

 日本国

   外務政務次官 飯塚定輔

   ビルマ連邦駐在特命全権大使

            小田部謙一

 ビルマ連邦 

   外務大臣 ティ・ハン

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示してそれが妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

第一条

1 日本国は、現在において五百四億円(五〇、四〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される一億四千万合衆国ドル(一四〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務からなるビルマ連邦の経済と社会の発展に寄与するための無償の援助を、千九百六十五年四月十六日から十二年の期間内に、ビルマ連邦に供与するものとする。

2 前記の生産物及び役務の供与は、最初の十一年の期間に、毎年平均して、現在において四十二億千二百万円(四、二一二、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される千百七十万合衆国ドル(一一、七〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額となるように行ない、十二年目の年に、残余について行なうものとする。

第二条

1 この協定に基づいて供与される生産物及び役務は、ビルマ連邦政府が要請し、かつ、両政府が合意するものでなければならない。

2 両政府は、各年度に日本国が供与する生産物及び役務を定める実施計画(以下「実施計画」という。)を協議により決定するものとする。

第三条

1 この協定に基づいて供与される生産物は、主として資本財とする。

2 この協定に基づく生産物の供与は、日本国とビルマ連邦との間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。

第四条

1 第六条の使節団は、この協定に基づいて生産物及び役務の供与が行なわれるため、ビルマ連邦政府に代わつて、日本国民又は日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。

2 1の契約(その変更を含む。)は、(a)この協定の規定、(b)両政府がこの協定の実施のため行なう取極の規定及び(c)適用される実施計画に合致するものでなければならない。これらの契約は、前記の基準に合致するものであるかどうかについて認証を得るため、使節団により、日本国政府の指定された当局に送付されるものとする。この認証は、原則として十四日以内に行なわれるものとする。定められた期間内に認証が得られなかつたときは、その契約は、第八条の合同委員会に付託され、合同委員会の勧告に従つて処理されるものとする。その勧告は、合同委員会がその契約を受領した後三十日以内に行なわれるものとする。この項に定めるところに従つて認証を得た契約は、以下「認証契約」という。

3 1の規定にかかわらず、この協定に基づく生産物及び役務の供与は、認証契約なしで行なうことができる。ただし、両政府間の合意によらなければならない。

第五条

1 日本国政府は、第六条の使節団が認証契約により負う債務並びに第四条3の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、第九条の規定に基づいて定める手続によつて、行なうものとする。この支払は、日本円で行なうものとする。

2 日本国は、1の規定に基づく円による支払を行なうことにより、及びその支払を行なつた時に、その支払に係る生産物及び役務をビルマ連邦に供与したものとみなされる。

第六条

1 ビルマ連邦政府は、この協定の実施(第四条1の契約の締結及び認証契約の実施を含む。)を任務とする同政府の唯一かつ専管の機関として、ビルマ連邦政府の使節団を日本国内に設置する。

2 使節団の任務の効果的な遂行のため必要であり、かつ、もつぱらその目的に使用される使節団の日本国における事務所は、東京及び両政府間で合意することがある他の場所に設置することができる。

3 使節団の日本国における事務所の構内及び記録は、不可侵とする。使節団は、暗号を使用することができる。使節団に属し、かつ、直接その任務の遂行のため使用される不動産は、不動産取得税及び固定資産税を免除される。使節団の任務の遂行から生ずることがある使節団の所得は、日本国における課税を免除される。使節団が公用のため輸入する財産は、関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。

4 使節団は、他の外国使節団に通常与えられる行政上の援助で使節団の任務の効果的な遂行のため必要とされるものを日本国政府から与えられるものとする。

5 ビルマ連邦の国民である使節団の長、使節団の上級職員二人及び2の規定に従つて設置される事務所の長は、国際法及び国際慣習に基づいて一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。使節団の任務の効果的な遂行のため必要であると認められたときは、前記の上級職員の数は、両政府間の合意により増加することができる。

6 ビルマ連邦の国民であり、かつ、通常日本国内に居住していない使節団のその他の職員は、自己の職務の遂行について受ける報酬に対する日本国における課税を免除され、かつ、日本国の法令の定めるところにより、自用の財産に対する関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。

7 認証契約から又はこれに関連して生ずる紛争で、他の方法により解決することができないため日本国の裁判所に提起されるものについては、使節団の法務部長の職にある者は、訴え、又は訴えられることができるものとし、そのために使節団における自己の事務所において訴状その他の訴訟書類の送達を受けることができるものとする。ただし、訴訟費用の担保を供する義務を免除される。使節団は、3及び5に定めるところにより不可侵及び免除を与えられてはいるが、前記の場合において管轄裁判所が行なつた最終の裁判を、使節団を拘束するものとして、受諾するものとする。

8 最終の裁判の執行にあたり、使節団に属し、かつ、その任務の遂行のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも強制執行を受けることはない。

第七条

1 両政府は、この協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。

2 ビルマ連邦は、日本国がこの協定に基づいて生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備を提供するものとする。

3 この協定に基づく生産物又は役務の供与に関連してビルマ連邦内において必要とされる日本国民は、その作業の遂行のためのビルマ連邦への入国及び同国における滞在に必要な便宜を与えられるものとする。

4 日本国の国民及び法人は、この協定に基づく生産物又は役務の供与に関連して生ずる所得に関し、ビルマ連邦における租税を課されない。

5 ビルマ連邦は、この協定に基づいて供与される日本国の生産物が、両政府間で別段の合意をした場合を除くほか、ビルマ連邦の領域から再輸出されないようにすることを約束する。

第八条

 この協定の実施に関する事項についての両政府間の協議及び両政府への勧告のための機関として、両政府の代表者で構成される合同委員会を東京に設置する。

第九条

 この協定の実施に関する手続その他の細目は、両政府間で協議により合意するものとする。

第十条

 この協定の解釈及び実施に関する両政府間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。両政府が解決に達することができなかつたときは、その紛争は、各政府が任命する各一人の仲裁委員とこのようにして選任された二人の仲裁委員との合意により定める第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁裁判所に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、いずれか一方の国の国民であつてはならない。各政府は、いずれか一方の政府が他方の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各一人の仲裁委員を任命しなければならず、第三の仲裁委員は、前期の期間に三十日を加えた期間内に合意されなければならない。いずれか一方の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、または第三の仲裁委員について当該期間内に合意されなかつたときは、いずれの一方の政府も、それぞれ当該仲裁委員または第三の仲裁委員を任命することを国際司法裁判所長に要請することが出来る。両政府は、この条の規定に基づいて与えられた裁定に服することを約束する。

第十一条

 この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書は、できるだけすみやかに交換されるものとする。

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名調印した。

千九百六十三年三月二十九日にラングーンで、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

飯塚定輔

小田部謙一

ビルマ連邦のために

ティ・ハン