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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 航空業務に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 1962年1月23日
[出典] 外交青書6号,41−46頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びインドネシア共和国政府は、

 それぞれの領域の間の及びその領域をこえての航空業務を開設し、かつ、運営するために協定を締結することを希望し、両国が千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名された国際民間航空条約(以下「条約」という。)の当事国であるので、

 次のとおり協定した。

第一条

(1) この協定の適用上、文脈により別に解釈される場合を除くほか、

 (a) 「航空当局」とは、日本国にあっては運輸大臣及び同大臣が遂行している民間航空に関する任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいい、インドネシア共和国にあっては航空大臣及び同大臣が遂行している民間航空に関する任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいう。

 (b) 「指定航空企業」とは、第三条の規定に従い、一方の締約国が、他方の締約国に対し、通告書により、その通告書に定める路線における航空業務の運営について指定し、かつ、当該他方の締約国が適当な運営許可を与えた航空企業をいう。

 (c) 「航空業務」とは、旅客、貨物又は郵便物の公衆用の運送のために航空機で行なう定期航空業務をいう。

 (d) 「国際航空業務」とは、二以上の国の領域上の空間にわたって行なう航空業務をいう。

 (e) 「航空企業」とは、国際航空業務を提供し、又は運営する航空運送企業をいう。

 (f) 「運輸以外の目的での着陸」とは、旅客、貨物又は郵便物の積込み又は積卸し以外の目的で着陸することをいう。

 (g) 「附表」とは、この協定の附表又は第十三条の規定に従って改正される同附表をいう。

(2) 附表は、この協定の不可分の一部をなすものとし、「協定」というときは、別段の定めがある場合を除くほか、附表を含むものとする。

第二条

(1) 各締約国は、他方の締約国に対し、その指定航空企業が附表に定める路線(以下「特定路線」という。)における国際航空業務(以下「協定業務」という。)を開設し、かつ、運営することができるようにするため、この協定で定める権利を許与する。

(2) 各締約国の指定航空企業は、この協定の規定に従うことを条件として、特定路線における協定業務を運営する間、次の特権を享有する。

 (a) 他方の締約国の領域を無着陸で横断飛行する特権

 (b) 運輸以外の目的で他方の締約国の領域に着陸する特権

 (c) 国際運輸の対象たる旅客、貨物又は郵便物の積卸し及び積込みのため、当該特定路線について附表で定める他方の締約国の領域内の地点に着陸する特権

(3) (2)の規定は、一方の締約国の航空企業に対し、有償又は貸切りで他方の締約国の領域内の別の地点に向けて運送される旅客、貨物又は郵便物をその領域内において積み込む特権を与えるものとみなしてはならない。

(4) (1)及び(2)の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、条約第九条の規定に従うことを条件として、他方の締約国の指定航空企業の航空機が自国の領域内の敵対行為若しくは軍事占領が行なわれている地域又はそれらにより影響を受けている地域の上空を飛行することを制限し、又は禁止することができる。

第三条

(1) いずれの特定路線における協定業務も、第二条(1)の規定に基づいて権利を許与された締約国の選択により、即時又は後日開始することができる。ただし、第九条の規定に従うことを条件とし、かつ、次のことが行なわれた後でなければならない。

 (a) 権利を許与された締約国が当該路線について航空企業を指定すること

 (b) 権利を許与する締約国が当該航空企業に対し適当な運営許可を与えること。同締約国は、(2)及び第五条(1)の規定に従うことを条件として、遅滞なくこの許可を与えなければならない。

(2) 一方の締約国の航空当局は、他方の締約国が指定した航空企業が、同航空当局により国際航空業務の運営に通常かつ合理的に適用される法令で定める要件を満たす者である旨を立証することを、その航空企業に要求することができる。

第四条

(1) 各締約国がその管理の下にある空港及びその他の施設の使用について他方の締約国の指定航空企業に課し、又は課することを許す料金は、公正かつ合理的なものでなければならず、また、最恵国の航空企業又は国際航空業務に従事する自国の航空企業が当該空港及び施設を使用するため支払う料金よりも高額のものであってはならない。

(2)(a) 一方の締約国の領域内に他方の締約国の指定航空企業により又はその名において持ち込まれ、あるいは前記の領域内で他方の締約国の指定航空企業により又はその名において航空機上に積載される燃料、潤滑油、予備部品、正規の航空機装備品及び航空機貯蔵品で、当該指定航空企業の航空機により又はその航空機内で使用することのみを目的とするものに関する関税、検査手数料及びこれらに類似する国又は地方公共団体が課する租税その他の課徴金については、当該他方の締約国の指定航空企業は、税関の通常の規制に服することを条件として、条約第二十四条に規定する待遇のほか、当該一方の締約国が最恵国の航空企業又は国際航空業務に従事する自国の航空企業に許与する待遇よりも不利でない待遇を与えられるものとする。

 (b) もっとも、いずれの締約国も、自国の指定航空企業に対して他方の締約国が関税、検査手数料又はこれらに類似する国若しくは地方公共団体が課する租税その他の課徴金を免除し、又は払いもどさない限り、他方の締約国の指定航空企業に対し、当該関税、検査手数料又はこれらに類似する国若しくは地方公共団体が課する租税その他の課徴金を免除し、又は払いもどす義務を負わないものとする。

第五条

(1) 各締約国は、他方の締約国が指定した航空企業の実質的な所有及び実効的な支配が当該航空企業を指定した締約国又は当該締約国の国民に属していないと認めた場合には、第二条(2)に定める特権を当該航空企業に関して与えず若しくは取り消す権利又は当該航空企業によるそれらの特権の行使に対し必要と認める条件を課する権利を留保する。

(2) 各締約国は、他方の締約国の指定航空企業が(1)に掲げる特権を許与する締約国の法令を遵守しなかった場合又はこの協定で定める条件に従って運営しなかった場合には、当該航空企業による前記の特権の行使を停止する権利又は当該航空企業によるそれらの特権の行使に対し必要と認める条件を課する権利を留保する。ただし、重ねて法令の違反が生ずることを防止するため又は航行の安全上の理由により、即時に停止し又は条件を課するやむを得ない必要がある場合を除くほか、この権利は、他方の締約国と協議した後にのみ行使しなければならない。

第六条

 両締約国の指定航空企業は、両締約国の領域の間の特定路線において協定業務を運営する公平なかつ均等な機会を有する。

第七条

 いずれか一方の締約国の指定航空企業が協定業務を運営するに当たっては、他方の締約国の指定航空企業が同一路線の全部又は一部において提供する業務に不当な影響を及ぼさないように、当該他方の締約国の指定航空企業の利益を考慮しなければならない。

第八条

(1) 締約国の指定航空企業が提供する協定業務は、協定業務に対する公衆の要求と密接な関係を有しなければならない。

(2) 指定航空企業が提供する協定業務は、当該航空企業を指定した締約国の領域から発し、又はその領域へ向かう旅客、貨物及び郵便物の運送に対する当該時期における需要量及び合理的に予測される需要量に適合する輸送力を合理的な利用率において供給することを第一次の目的としなければならない。当該航空企業を指定した国以外の国の領域内の特定路線上の地点で積み込み、かつ、積み卸す旅客、貨物及び郵便物の運送は、輸送力が次のものに関連すべきであるという一般原則に従って行なわれなければならない。

 (a) その航空企業を指定した締約国の領域への及びその領域からの運輸需要

 (b) 直通航空路運営の要求

 (c) その航空企業の路線が経由する地域の地方的及び地域的業務を考慮した上でのその地域の運輸需要

第九条

(1) いずれの協定業務に対する運賃も、運営の経費、合理的な利潤、業務の特性(たとえば、速力及び設備の程度)及び特定路線のいずれかの部分についての他の航空企業の運賃を含むすべての関係要素に十分な考慮を払い、合理的な水準に定めなければならない。これらの運賃は、次の規定に従って定めるものとする。

(2) 運賃に関する合意は、可能なときはいつでも、関係指定航空企業が国際航空運送協会の運賃決定機関を通じて行なうものとする。それが不可能なときは、各特定路線の全部及び一部に関する運賃は、関係指定航空企業の間で合意しなければならない。いずれの場合にも、運賃は、両締約国の航空当局の認可を受けなければならない。

(3) 関係指定航空企業が運賃に関し(2)の規定による合意を行なうことができなかった場合又はいずれか一方の締約国の航空当局が提出された運賃に関し同規定による認可を行なわなかった場合には、両締約国の航空当局は、適当な運賃について合意が成立するように努めなければならない。

(4) (3)の規定に基づく合意が成立しなかった場合には、その紛争は、第十二条の規定に従って解決しなければならない。

(5) 新たな運賃は、いずれか一方の締約国の航空当局が当該運賃について満足しない場合には、効力を生じないものとする。ただし、第十二条(3)の規定に基づく場合は、この限りでない。この条の規定に従って運賃が決定されるまでの間は、すでに実施されている運賃が適用されるものとする。

第十条

 いずれか一方の締約国の航空当局は、他方の締約国の航空当局の要請があったときは、当該航空当局に対し、自国の指定航空企業が協定業務において供給する輸送力の検討のために合理的に必要とされる定期の又はその他の統計表を提供しなければならない。その統計表は、前記の航空企業が協定業務において運送する貨客の総計を知るために必要なすべての情報を含むものでなければならない。

第十一条

 両締約国の航空当局は、この協定の実施に関するすべての事項について緊密な協力を確保するため、定期的にしばしば協議しなければならない。

第十二条

(1) この協定の解釈又は適用に関して両締約国間に紛争が生じた場合には、両締約国は、まず、両国の間の交渉によってその紛争を解決するように努めなければならない。

(2) 両締約国が交渉によって紛争を解決することができなかったときは、その紛争は、いずれか一方の締約国の要請により、各締約国が指名する各一人の仲裁委員とこうして選定された二人の仲裁委員が合意する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁裁判所に決定のため付託することができる。ただし、第三の仲裁委員は、いずれかの締約国の国民であってはならない。各締約国は、一方の締約国が紛争の仲裁を要請する外交上の公文を他方の締約国から受領した日から六十日の期間内に一人の仲裁委員を指定しなければならず、第三の仲裁委員については、その後の六十日の期間内に合意されなければならない。いずれか一方の締約国が六十日の期間内に自国の仲裁委員を指定しなかったとき、又は第三の仲裁委員について前記の期間内に合意されなかったときは、いずれか一方の締約国は、国際民間航空機関の理事会の議長に対し、当該仲裁委員を任命するように要請することができる。

(3) 両締約国は、(2)の規定に基づいて行なわれた決定を守ることを約束する。

第十三条

 いずれの一方の締約国も、この協定を改正するため、いつでも、他方の締約国との協議を要請することができる。この協議は、要請を受領した日から六十日の期間内に開始しなければならない。改正が附表についてのみ行なわれる場合には、協議は、両締約国の航空当局の間で行なうものとする。両締約国の航空当局が新たな又は修正された附表について合意したときは、その合意した改正は、外交上の公文の交換によって確認された後に効力を生ずる。

第十四条

 一般的な多数国間の航空輸送条約が両締約国に関し効力を生じたときは、この協定は、その条約の規定に適合するように改正しなければならない。

第十五条

 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し、この協定を終了させる意思をいつでも通告することができる。その通告の写しは、条約によって組織された国際民間航空機関に対し同時に送付しなければならない。その通告があったときは、この協定は、他方の締約国が終了通告を受領した日の後一年で終了するものとする。ただし、両締約国間の合意により当該通告が前記の一年の期間が経過する前に取り消された場合は、この限りでない。他方の締約国が通告の受領を確認しなかったときは、国際民間航空機関が当該通告の写しを受領した日の後十四日を経過した時に通告が受領されたものとみなす。

第十六条

 この協定、この協定の改正及び第十三条の規定に従って交換される外交上の公文は、国際民間航空機関に登録しなければならない。

第十七条

 この協定は、各締約国によりその国内法上の手続に従って承認されなければならない。この協定は、その承認を通知する外交上の公文の交換の日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府により正当に委任を受け、この協定に署名した。

千九百六十二年一月二十三日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

小坂善太郎

インドネシア共和国政府のために

B・スゲン

附表

1 日本国の指定航空企業が両方向に運営する路線

  東京−大阪−福岡−沖繩−台北−香港−マニラ−サイゴン及び(又は)バンコック−クアラ・ランプール−シンガポール−ジャカルタ−ダーウィン又はパース−シドニー又はメルボルン

  インドネシア共和国の指定航空企業が両方向に運営する路線

  ジャカルタ−マニラ−香港−東京

2 いずれか一方の締約国の指定航空企業が行なう協定業務は、その締約国の領域内の一地点を起点とするものでなければならない。ただし、特定路線上の他の地点は、いずれかの又はすべての飛行に当たって、その指定航空企業の選択により省略することができる。