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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とインドネシア共和国との間の友好通商条約・議定書

[場所] 東京
[年月日] 1961年7月1日
[出典] 外交青書6号,28−29頁.
[備考] 
[全文]

 日本国とインドネシア共和国との間の友好通商条約(以下「条約」という。)に署名するに当たって、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、条約の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 第一条の規定に関し、いずれの一方の締約国も、他方の締約国が相互主義に基づく特別の取極によりいずれかの第三国の国民に対して与えているか、又は将来与える旅券及び査証に関する事項についての利益の享受を要求する権利を与えられないものと了解される。

2 第一条のいかなる規定も、日本国に対し、インドネシア共和国がシンガポール自治州の市民に対して伝統的に与えている利益の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

3 条約において「会社」とは、商業、工業、金融業その他の営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

4 第二条1の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の享有についての待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。

5 条約のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

6 第四条の規定は、いずれか一方の締約国の領域内で収用され、又は使用される財産で他方の締約国の国民及び会社が利益を有するものについても適用する。

7 第五条1の規定は、通貨そのものについての準則に関するものではなく、したがって、異なる通貨に対して異なる待遇を与えることを妨げるものではない。同規定は、いかなる外国為替規則が施行されている場合にも、その下における国民及び会社の権利にのみ関するものであって、外国為替規則の適用に当たって、国民及び会社に対して国籍に基づく差別を排除することのみを目的としている。

  第三国に与える待遇よりも不利でない待遇を与える条約の規定は、次の利益には適用しない。

 (a) いずれか一方の締約国が国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益

 (b) (a)に掲げる利益と同様の利益でインドネシア共和国がマラヤ連邦、フィリピン共和国及びシンガポール自治州に対して与えるもの

 (c) いずれか一方の締約国が加盟国となる関税同盟又は構成地域となる自由貿易地域の存在に基づいて与える利益

9 条約のいかなる規定も、インドネシア共和国に対し、日本国が、(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対し、又は(b)は同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の現住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

  以上の証拠として、各全権委員は、この議定書に署名調印した。

 千九百六十一年七月一日に東京で、日本語、インドネシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国のために

小坂善太郎

インドネシア共和国のために

スバンドリオ