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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とマラヤ連邦との間の協定・議定書

[場所] クアラルンプール
[年月日] 1960年5月10日
[出典] 外交青書5号,258−259頁.
[備考] 
[全文]

 通商に関する日本国とマラヤ連邦との間の協定に署名するに当たり、下名の代表者は、各自の政府から正当に委任を受け、同協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 この協定において「会社」とは、商業、工業、金融業その他の利潤を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

2 第二条1の規定は、通貨そのものについての準則に関するものではなく、したがって、異なる通貨に対して異なる待遇を与えることを妨げるものではない。同規定は、いかなる外国為替規則が施行されている場合にも、その下における国民及び会社の権利にのみ関するものであって、外国為替規則の適用に当たって、国民及び会社に対して国籍に基づく差別を排除することのみを目的としている。

3 第三条1の規定は、日本国に対し、マラヤ連邦が(a)シンガポールの市民若しくは居住者又は(b)英連邦諸国の市民である者に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

 さらに、いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国が相互主義に基づいて旅券及び査証に関する事項についての二国間の取極を結んでいるか、又は将来結ぶいずれかの第三国の国民又は市民である者に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えられないものと了解される。

4 第三条2の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の享有についての待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。

5 この協定のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

6 第四条の規定は、いずれか一方の締約国の領域内で収用され、又は使用される財産で他方の締約国の国民及び会社が直接又は間接に利益を有するものについても適用する。

7 この協定のいかなる規定も、マラヤ連邦に対し、日本国が(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域を原籍とする者に対して又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

千九百六十年五月十日にクアラ・ランプールで、本書二通を作成した。

日本国政府のために

林馨

マラヤ連邦政府のために

M・K・ジョハリ