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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 経済開発借款に関する日本国政府とヴィエトナム共和国政府との間の交換公文

[場所] サイゴン
[年月日] 1959年5月13日
[出典] 外交青書4号,280−281頁.
[備考] 
[全文]

(日本側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、ヴィエトナム共和国の経済開発の促進に資するため日本国の国民又は法人がヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人に提供する借款に関して、両政府の代表者が到達した了解を明らかにする次の取極を確認する光栄を有します。

1 現在において三十二億七千六百万円(三、二七六、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される九百十万アメリカ合衆国ドル(九、一〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額までの長期貸付又は類似のクレディットが、この取極の規定に基いて、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の効力を生ずる日から五年(この期間は、三年以上五年以下の期間に短縮することができる。ただし、両政府間にこのための合意がなければならない。)を経過した日以降、日本国の国民又は法人により、締結されることがある適当な契約に基き、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人に対し行われるものとする。

2 前項にいう長期貸付又は類似のクレディット(以下「借款」という。)は、商業上の基礎により、かつ、両国の関係法令に従つて行われるものとする。

3 両政府は、借款の提供を、関係法令の範囲内で容易にし、かつ、促進するものとする。

4 借款の条件は、当該契約の当事者間で合意されるものとする。

5 借款は、尿素製造工場の建設その他の計画の実施に必要な日本人の役務及び日本国の生産物の形で行われるものとする。

6 この取極は、十年間効力を有する。ただし、この取極の効力発生の日から九年が経過した後、借款がその十年の期間の末まで1に定める金額に達しないと認められたときは、両政府は、いずれか一方の政府の要請により、この取極の有効期間を延長するため協議を行うことができる。

 本全権委員は、この書簡及びこの書簡に述べられた取極の内容を確認される閣下の返簡を、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十九年五月十三日にサイゴンで

日本国全権委員 藤山愛一郎

ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下

(ヴィエトナム側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

 本全権委員は、本国政府に代つて、前記の閣下の書簡における取極の内容を確認し、かつ、前記の書簡及びこの書簡を、ヴィエトナム共和国と日本国との間の賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十九年五月十三日にサイゴンで

ヴィエトナム共和国全権委員

ヴ・ヴァン・マオ

日本国全権委員 藤山愛一郎閣下