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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本とインドネシアとの間の平和条約・日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定の実施に関する細目に関する交換公文

[場所] ジャカルタ
[年月日] 1958年1月20日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),845‐847頁.条約集,36‐8.
[備考] 
[全文]

 日本国全権委員からインドネシア共和国全権委員にあてた書簡

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定に言及を光栄する有します。日本国政府は、両政府が同協定第九条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。

I 賠償契約

1 同協定第四条2に定める賠償契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。

2 賠償契約の実施に関する責任は、契約当事者である使節団及び日本国の国民又は法人のみが負うものとする。

3 日本国政府は、使節団に対し、賠償契約を締結する適性を有する日本国の国民及び法人を推薦することができる。もつとも、使節団は、そのように推薦を受けた者とのみ賠償契約を締結するよう拘束されることはない。

4 賠償契約であつて、輸送、保険又は検査のような附随的の役務の供与を必要とし、かつ、そのための支払が賠償により行われることとなつているものは、すべて、これらの役務が日本国民又はその支配する法人により行われるべき旨の規定を含まなければならない。

II 支払

1 同協定第六条に定める使節団は、自己の選択により日本国のいずれかの外国為替公認銀行と取極を行い、自己の名による賠償勘定を開設してその銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。賠償勘定は、利子を附さないものと了解される。使節団は、必要と認めたときは、同じ目的のため追加の外国為替公認銀行を指定することができる。

2 使節団は、賠償契約の規定に基いて支払の義務が生ずる前の適当な期間内に、支払金額及び使節団が関係契約者に支払を行うべき日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。

3 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記の使節団による支払の日の前日までに1に定める銀行に支払わなければならない。

4 日本国政府は、また、両政府間の合意により、使節団の経費の支払、インドネシア人技術者及び職人の訓練に関する経費の支払並びに両政府間で合意する他の目的のための支払を、前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。

5 3及び前項の規定に基いて支払われる金額は、賠償勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、2及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。

6 使節団が賠償勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に、2及び4の目的のために支払に充てられるものとする。

7 賠償勘定から支払われた金額の全部又は一部が使節団に返還された場合には、その返還された金額は、5の規定にかかわらず、賠償勘定に貸記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。

8 同協定第五条2の規定の適用上、「支払を行つた時」とは、支払が日本国政府により1に定める銀行に対して行われた時をいう。

9 同協定第五条2の規定に従い、日本国政府が同協定第一条に規定に基く賠償義務を履行したものとされる限度額の算定は、日本国政府が正式に決定しかつ国際通貨基金が同意した日本円のアメリカ合衆国ドルに対する平価で次に掲げる日に適用されているものにより、支払金額に等しいアメリカ合衆国ドルの額を決定することにより行うものとする。

(a)賠償契約に関する支払の場合には、日本国政府が当該契約を認証した日

(b)その他の場合には、各場合につき両政府間で合意する日。ただし、合意した日がないときは、日本国政府が支払請求書を受領した日とする。

III 使節団

1 もつぱら使節団に勤務することを目的として日本国に入国しかつ居住するインドネシア国民に限り、同協定第六条6の規定の適用を受けるものとして日本国における課税を免除されるものとする。

2 インドネシア政府は、賠償契約の締結及び実施に関して使節団を代表して行動する権限を与えられる使節団の長その他の職員の氏名を日本国政府に随時通知するものとし、日本国政府は、その氏名を日本国の官報で公示するものとする。この使節団の長その他の職員の権限は、日本国の官報で別段の公示がされるまでの間は、継続しているものとみなされる。

 本全権委員は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、同協定第九条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年一月二十日にジャカルタで

日本国全権委員 藤山愛一郎

インドネシア共和国全権員

スバンドリオ閣下

 インドネシア共和国全権委員から日本国全権委員にあてた書簡

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、賠償協定の実施に関する細目についての本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側公文省略)

 本全権委員は、閣下の書簡に述べられた提案に本国政府に代つて同意し、さらに、閣下の書簡及びこの書簡を同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意いたします。

 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年一月二十日にジャカルタで

インドネシア共和国全権委員

スバンドリオ

日本国全権委員 藤山愛一郎閣下