データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・タイ特別円協定(特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定)

[場所] バンコク
[年月日] 1955年7月9日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),721−722頁.条約集33−46.
[備考] 
[全文]

 日本国及びタイは、

 両国間の懸案である「特別円問題」を解決することにより、両国間の伝統的友好関係の強化及び両国間の経済協力の増進のための基礎を確立することをひとしく希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

1 日本国は、次のとおり、五十四億円に相当する額のスターリング・ポンドを、五年に分割してタイに支払うものとする。

(1)この協定の効力発生の日が属する日本国の会計年度に十億円

(2)(1)の会計年度に次ぐ四年間は、日本国の毎会計年度にそれぞれ十一億円

2 1の支払に適用される為替相場は、それぞれの支払の時に日本国において設けられているスターリング・ポンドの外国為替公認銀行電信売相場によるものとする。

第二条

 日本国は、両国間の経済協力のための措置として、合意される条件及び態様に従い、九十六億円を限度額とする投資及びクレディットの形式で、日本国の資本財及び日本人の役務をタイに供給することに同意する。

第三条

 タイ政府は、次の請求権を含む「特別円問題」に関する日本国の政府及び国民(法人を含む。)に対するすべての請求権を、タイの政府及び国民(法人を含む。)に代つて、放棄する。

(1)昭和十七年六月十八日に東京で署名された特別円決済に関する日本銀行とタイ大蔵省との間の協定及び昭和十八年三月十九日にバンコックで署名されたタイ国庫特別円勘定に関する日本銀行とタイ大蔵省及びタイ銀行との間の協定に基いて日本銀行に設けられたタイ銀行特別円勘定に関する請求権

(2)タイ外務大臣にあてたタイ駐在日本国大使の次の書簡に基いて日本国政府がタイ政府に売却すべきであつた金のうちまだ売却されていない分に対する請求権

 (a)ディレーク外務大臣にあてた坪上大使の千九百四十四年四月七日付の書簡(書簡番号F八六/一九)

 (b)シーセーナー外務大臣にあてた山本大使の千九百四十五年一月十八日付の書簡(書簡番号ED九/四五)

 (c)シーセーナー外務大臣にあてた山本大使の千九百四十五年七月三日付の書簡(書簡番号ED八一/四五)

(3)タイ外務省のトゥアイテープ・テワクン経済局長及びタイ銀行のプラヤット・ブンラナシリ総務部長が千九百五十年一月四日に署名した金の引渡確認書に掲げられている金の未引渡分に対する請求権

第四条

 両国は、この協定の円滑な実施を確保する目的のため、協議及び両政府への勧告のための機関として、両政府の代表者から構成されるべき合同委員会を東京に設置するものとする。

第五条

 この協定は、それぞれの国により、その憲法上の手続に従つて承認されなければならない。この協定は、その承認を通知する公文が交換された日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、それぞれの政府から正当に委任を受けて、この協定に署名した。

 千九百五十五年七月九日にバンコックで、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

太田一郎(署名)

タイのために

ワン・ワイタヤコン クロマムーン

ナラティップ・ポンプラバン(署名)