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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 政府安全保障能力強化支援の実施方針

[場所] 
[年月日] 2023年4月5日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 国家安全保障戦略(令和4年12月16日閣議決定)に定めのある「政府安全保障能力強化支援」の実施方針につき、以下のとおり定める。

1 目的

 国際社会は時代を画する変化に直面しており、その中で、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にある。そのような中において、我が国の国益を守り、発展させていくためには、我が国自身の能力と役割を強化することはもちろんのこと、同志国の安全保障能力・抑止力を強化していくことを含めた、法の支配に基づく、平和で安定しかつ予見可能性が高い国際環境を能動的に創出する不断の努力が不可欠である。

 我が国はこれまで長年にわたり、国際社会の平和と安定、繁栄のための外交活動や経済協力を行ってきた。この経験と長年の努力により培われた国際社会からの信頼と期待に基づき、また、我が国の平和国家としての基本理念を維持しつつ、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持・強化に寄与することを目的として、軍等が裨益者となる資機材供与やインフラ整備等を行う政府安全保障能力強化支援(OSA:OfficialSecurityAssistance)を実施する。

OSAは、国家安全保障戦略にある総合的な防衛体制を強化するための取組の一つである。

2 支援方針

(1)支援対象

 我が国にとって望ましい安全保障環境を創出する観点から、安全保障上の能力強化を支

援する意義のある国に対し、軍等が裨益者となる協力を行う。

 また、OSAは無償による資金協力であることに鑑み、原則として開発途上国を対象とする。

(2)支援分野

 我が国の平和国家としての基本理念を維持しつつ、OSAの目的を達成する観点から、以下のような、国際紛争との直接の関連が想定しがたく、OSAの目的の達成にとって意義のある分野に限定して協力を実施することとし、我が国の安全保障上の意義及び国際的な平和と安全の維持・強化にとっての意義を十分に踏まえた優先度の判断を行う。

ア 法の支配に基づく平和・安定・安全の確保のための能力向上

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和・安定・安全を確保して

令和5年4月5日国家安全保障会議決定いくことは、我が国の安全保障にとって死活的に重要である。その観点から、各国が自ら地域の平和・安定・安全の確保に貢献できるよう安全保障上の能力・抑止力を向上させるための支援を行う。具体的には、領海や領空等の警戒監視、テロ対策、海賊対策等のための支援を行う。

イ 人道目的の活動

 近年、世界中で自然災害や紛争等に伴う人道支援の需要は急速に高まっている。人道目的の活動において、軍等が重要な役割を果たしていることを踏まえ、各国の軍等が、人道目的の活動を効果的に実施できるようその能力を向上させるための支援を行う。具体的には、災害対処、捜索救難・救命、医療、援助物資の輸送能力向上等のための支援を行う。

ウ 国際平和協力活動

 国際平和協力活動は、国際社会の平和と安定の維持・強化に貢献する重要な活動である。国際平和協力活動において、軍等が重要な役割を果たしていることを踏まえ、各国の軍等が、国際平和協力活動を効果的に実施できるようその能力を向上させるための支援を行う。具体的には、国連平和維持活動(PKO)等に参加するための能力強化等のための支援を行う。

3 実施上の原則

 OSAの実施に際しては、我が国の平和国家としての基本理念を維持しつつ、前述の目的の達成と支援方針の遂行にとって最大限の効果が得られるよう、効果的・効率的な支援の推進に努めるとともに、支援の適正性・透明性確保等に十分な配慮を行うことが重要である。この観点から、以下の諸点を実施上の原則としてOSAを行う。

(1) 防衛装備移転三原則及び同運用指針の枠内での実施

 我が国の平和国家としての基本理念を堅持しつつ、同志国の安全保障上の能力や抑止

力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持・強化を図るというOSAの制度の趣旨に鑑み、供与する資機材・整備するインフラ等が防衛装備に当たるか否かを問わず、これらの支援に際しては、類似の理念に基づく「防衛装備移転三原則」及び同運用指針の枠内で協力を行う。

(2) 支援対象国の経済社会状況等の検討

 相手国における民主化の定着、法の支配、基本的人権の尊重の状況や経済社会状況を踏まえた上で、我が国及び地域の安全保障上のニーズや二国間関係等を総合的に判断して対象国を選定する。

(3)適正性・透明性の確保

 支援の適正性及び透明性確保の観点から、以下を確保しつつ協力を行う。案件実施に際しては、これらの点を含めた国際約束を締結する。

ア 情報公開の実施

 支援の適正性・透明性確保の観点から、支援対象国の可能な範囲での協力も得つつ、適切な情報公開を行う。

イ 評価・モニタリングの実施とその結果についての情報開示

 支援の適正性を確保するとともに、効果的・効率的な支援を行っていく観点から、支援対象国の可能な範囲での協力も得つつ、評価・モニタリングを適切に実施し、その結果を適切な形で公表する。

ウ 供与後の目的外使用や第三者移転に係る適正管理

 支援の適正性を確保するとともに、支援の目的を十分に達成する観点から、支援対象国には、供与する資機材や整備するインフラ等の供与後の目的外使用や第三者移転に係る適正管理の確保を義務付ける。

エ 国際連合憲章の目的及び原則との適合性

 我が国の平和国家としての基本理念を維持しつつ、前述の目的を実現する観点から、支援対象国には、供与する資機材や整備するインフラ等を国際連合憲章の目的及び原則に適合した形で使用することを義務付ける。

4 実施体制

(1)OSAが、総合的な防衛体制の強化のための取組の1つであることを踏まえ、OSAの実施に際しては、国家安全保障局、外務省、防衛省等が連携する。

(2)OSAの実施に際しては、政府及び政府関係機関が有する資源を最大限に活用すべく、政府が有するその他の国際協力枠組みとの連携を図る。

(3)案件形成に際しては、必要に応じ防衛装備移転との連携を図る。その観点から、関係する国内企業や相手国に対してもOSAの制度に関する理解を促進すべく丁寧な説明を行う。

(了)