データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業において不正行為を行った者等に対する措置要領

[場所] 
[年月日] 2023年4月5日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

(定義)

第1 本要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 調達契約生産物又は役務の調達のための契約

二 調達代理業務契約政府安全保障能力強化支援(以下、「OSA」という。)実施に伴う調達契約のうち、被供与国に代わり生産物又は役務の調達業務を行うことを目的に、被供与国が調達代理機関と締結する契約

三 調達代理業務業者契約OSA実施に伴う調達契約のうち、生産物又は役務を被供与国に供給することを目的に、調達代理機関が契約業者と締結する契約

四 有資格者OSA事業(附帯業務を含む。)に係る契約を締結する資格を有する者又は当該事業に参加(入札関係手続を含む。)した実績を有する者

五 措置要件別表「措置基準」第1及び第2の各号(以下「別表各号」という。)に定める要件

(措置及び排除要求)

第2 日本国政府は、有資格者が、措置要件のいずれかに該当する者となったときは、別表各号に定める期間(第7又は第8の規定により、措置の期間を加重又は減軽するときは、加重又は減軽後の期間とする。以下「所定措置期間」という。)の範囲内で情状に応じて期間を定め、当該期間(以下「措置の期間」という。)中に行われた入札・契約関係手続に基づいてなされた当該有資格者との調達代理業務契約を承認しない措置(以下単に「措置」といい、措置の対象となった有資格者を「措置対象者」という。)を行うこととする。

2 日本国政府は、調達代理業務契約を締結した者が、当該契約の承認後に措置対象者となったと

きは、当該措置の対象となった事由、当該契約の進捗状況等を考慮しつつ、承認を取り消すことができる。

3 日本国政府は、調達代理機関に対し、次の各号に定める者を、当該各号に定める期間(以下「排除要求の期間」という。)中に行われた調達代理業務業者契約に係る手続の対象から排除することを要求すること(以下「排除要求」といい、排除要求の対象となった者を「排除要求対象者」という。)ができる。

一 措置対象者措置の期間

二 措置要件のいずれかに該当することとなった有資格者ではない者措置の期間に準じて定める期間三「外務省所管の工事請負契約等に係る指名停止等の措置要領」、「日本国のODA事業において不正行為を行った者等に対する措置要領」を始めとする関連規定等に基づく措置の対象者当該措置に係る措置の期間

4 日本国政府は、調達代理機関と調達代理業務業者契約を締結した者が、排除要求対象者となったときは、調達代理機関に対し、当該排除要求の対象となった事由、当該契約の進捗状況等を考慮しつつ、当該契約の解除を要求することができる。

5 日本国政府は、措置の期間又は排除要求の期間(以下併せて「措置等の期間」という。)中の者が、当該措置等の対象となった事由とは別の事由により、新たに措置要件のいずれかに該当する者となったときは、既に行っている措置等の期間の終了を待つことなく、重ねて措置等を行うことができる。(この場合は、措置等の期間が連続して36か月を超えることを妨げない。)

(下請負人及び共同企業体に関する措置)

第3 日本国政府は、当該措置等の対象となった事由に関し、責を負うべき下請負人がいることが明らかとなったときは、当該下請負人に対し、元請負人に対する措置等の期間の範囲内で情状に応じて期間を定め、措置等を行うことができる。また、日本国政府は、措置対象者及び排除要求対象者(以下併せて「措置等対象者」という。)が、措置等の期間中に調達代理業務業者契約の全部又は一部を下請し、又は受託する調達代理業務契約は、承認しないことができる。

2 日本国政府は、共同企業体に対して措置等を行うときは、当該共同企業体の構成員(当該措置の対象となった事由に関し、明らかに責を負わないと認められる者を除く。)に対し、当該共同企業体に対する措置等の期間の範囲内で情状に応じて期間を定め、措置等を行うことができる。

3 日本国政府は、措置等対象者を構成員に含む共同企業体がいるときは、当該共同企業体に対し、措置等対象者に対する措置等の期間の範囲内で情状に応じて期間を定め、措置等を行うことができる。

(企業グループ等に関する措置)

第4 日本国政府は、措置等対象者に次の法人又は個人がいるときは、当該法人又は個人に対し、措置等対象者に対する措置等の期間の範囲内で情状に応じて期間を定め、措置等を行うことができる。

一 措置等対象者がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の措置等対象者がその経営を実質的に支配している法人

二 措置等対象者の経営を実質的に支配している法人又は個人(国、地方公共団体その他これに類する団体を除く。)

三 前各号に規定する法人又は個人がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の前各号に規定する法人又は個人がその経営を実質的に支配している法人

2 日本国政府は、措置等対象者が、合併、分割、事業譲渡、解散等により、その事業、財産又は権利義務を他の法人又は個人に承継させた場合において、当該措置等対象者と当該他の法人又は個人との経営又は営業の実態に同一性又は近似性が認められると判断するとき(当該措置等対象者と当該他の法人又は個人が、同一の企業グループ(前項第1号から第3号までに規定する者で構成されるグループをいう。)に属している場合を含む。)は、当該他の法人又は個人に対し、当該措置等対象者に対する措置等の期間の残期間の範囲内で情状に応じて期間を定め、措置等を行うことができる。

(措置の認定)

第5 日本国政府は、措置要件に該当することの事実認定に当たり、必要があると認めるときは、関係機関に対し、事実関係に関する報告を求めることができる。

(外国法令違反)

第6 日本国政府は、有資格者について、別表第2第1号から第5号までの要件のいずれかに定める日本国の法令規定に相当する外国の法令規定に違反した容疑により、逮捕、逮捕を経ない公訴の提起、司法機関による確定判決又は行政機関による最終処分がなされたときは、当該国の刑事司法又は行政手続の実情を考慮しつつ、当該各号の要件に該当する者とみなすことができる。

(措置の期間の特例)

第7 有資格者が、一の事案において、二以上の措置要件に該当したときは、それぞれの所定措置期間の短期及び長期の最も長いものをもって、当該事案に係る所定措置期間の短期及び長期とする。

2 有資格者が、次の各号のいずれかに該当する者となったときは、所定措置期間の短期を次項の

とおり加重する。

一 措置の期間中又は当該期間の終了後1年を経過するまでの間に、新たに措置要件のいずれかに該当する者となったとき。

二 別表第2第1号の要件に係る措置の期間の終了後1年を超え3年を経過するまでの間に、新たに別表第2第1号の要件に該当する者となったとき。

三 別表第2第2号の要件に係る措置の期間の終了後1年を超え3年を経過するまでの間に、新たに別表第2第2号の要件に該当する者となったとき。

四 別表第2第3号、第4号又は第5号の要件に係る措置の期間の終了後1年を超え3年を経過するまでの間に、新たに別表第2第3号、第4号又は第5号の要件に該当する者となったとき。

五 前各号のいずれかによる措置の期間の終了後5年を経過するまでの間に、新たに別表第2第1号から第5号までの要件のいずれかに該当する者となったとき(前各号に掲げる場合を除く。)。

3 前項の規定による所定措置期間の短期は、次の各号のとおり加重する。

一 当初の措置期間が1か月に満たないとき。   1.5倍

二 別表第2第2号又は第5号の要件に該当する者となったとき。   2.5倍

三 前各号以外の措置要件に該当する者となったとき。   2倍

4 日本国政府は、有資格者について、情状酌量すべき特別の事由があるときは、措置を行わないこと又は所定措置期間の短期を1/2まで短縮することができる。

5 日本国政府は、有資格者について、極めて悪質な事由があるため又は極めて重大な結果を生じさせたため、別表各号、第1項及び第2項の規定による所定措置期間の長期を超える措置の期間を定める必要があるときは、当該規定による所定措置期間の長期を2倍(当該所定措置期間の長期の2倍が36か月を超える場合は36か月)に加重することができる。

6 日本国政府は、措置対象者について、措置の対象となった事由に関し、情状酌量すべき特別の事由又は措置の期間を加重すべき特別の事由が明らかとなったときは、別表各号、前各項及び第8の規定による期間の範囲内で措置の期間を変更することができる。

7 日本国政府は、別表第2第2号又は第5号の要件に係る措置の期間が終了した者について、極めて悪質な事由があることが明らかとなったときは、当初の措置の期間を変更したと想定した期間から、当初の措置の期間を控除した期間をもって、新たに措置を行うことができる。

8 日本国政府は、措置対象者が、措置の対象となった事由に関し、責を負わないことが明らかとなったときは、当該措置対象者に対する措置を解除することとする。

9 前各項の規定は、排除要求の期間について準用する。

(独占禁止法違反等の不正行為に対する措置の期間の特例)

第8 日本国政府は、有資格者が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)違反等の不正行為により、次の各号のいずれかに該当する者となったときは、所定措置期間の短期を、それぞれ当該各号のとおり加重する。

一 談合情報を得た場合又は談合があると疑うに足りる事実を得た場合において、有資格者が、当該談合を行っていないとの誓約書を提出したにもかかわらず、当該事案について、別表第2第3号、第4号又は第5号の要件に該当したとき。2倍(別表第2第5号に該当したときは、2.5倍)

二 別表第2第3号、第4号又は第5号の要件に該当する有資格者について、独占禁止法違反に係る確定判決、確定した排除措置命令若しくは課徴金納付命令又は競売入札妨害(刑法(明治40年法律第45号)第96条の6第1項。以下同じ。)、談合(刑法第96条の6第2項。以下同じ。)若しくは業務妨害(刑法第233条又は第234条。以下同じ。)に係る確定判決(外国における確定判決を含む。)において、当該独占禁止法違反又は競売入札妨害、談合若しくは業務妨害の首謀者であることが明らかとなったとき。2倍(別表第2第5号に該当したときは、2.5倍)

三 別表第2第3号、第4号又は第5号の要件に該当する有資格者について、独占禁止法第7条の2第7項の規定の適用があったとき。2倍(別表第2第5号に該当したときは、2.5倍)

四 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(平成14年法律第101号)第3条第4項に基づく各省各庁の長等による調査の結果、入札談合等関与行為があり、又はあったことが明らかとなった場合において、当該関与行為に関し、別表第2第3号又は第5号の要件に該当する有資格者について、悪質な事由があるとき。1か月(別表第2第5号に該当したときは、1.5か月)加重

五 日本国政府又は他の公共機関の職員が、競売入札妨害、談合又は業務妨害の容疑により、逮捕又は逮捕を経ない公訴の提起をされた場合において、当該職員の容疑に関し、別表第2第4号又は第5号の要件に該当する有資格者について、悪質な事由があるとき。1か月(別表第2第5号に該当したときは、1.5か月)加重

2 前項の規定は、排除要求の期間について準用する。(改善措置の報告)

第9 日本国政府は、措置の期間が満了するまでに、措置対象者(第4の規定による企業グループ等に対する措置を行ったときは、当該企業グループ等。次項において同じ。)から、当該措置の対象となった事由に関し、改善措置の報告を徴することとする。ただし、日本国政府が、OSA事業に係る調達契約以外の行為により、措置を行い又は措置を解除したときは、この限りではない。

2 日本国政府は、措置対象者から改善措置の報告がなされないまま又は日本国政府が同報告の内容を妥当と判断する前に措置の期間が満了したときは、同報告の提出がなされ、かつ、日本国政府が同報告の内容を妥当と判断するまでの間、措置を継続することとする。

3 前項の規定により、措置を継続する場合は、当該措置対象者に対する措置終了時まで排除要求も継続するものとする。

(措置の通知等)

第10 日本国政府は、措置を行い、措置の期間を変更し、又は措置を解除、継続若しくは終了したと

きは、当該措置対象者に対し、遅滞なく通知することとする。

2 日本国政府は、措置を行い、措置の期間を変更し、又は措置を解除若しくは継続したときは、当該措置の内容を公表することとする。ただし、当該内容を公表することが、第三者に著しい不利益を及ぼすと日本国政府が判断したときは、当該内容を公表しないことができる。

(措置に至らない事由の場合)

第11 日本国政府は、措置を行わない場合において、必要があると認めるときは、有資格者に対し、書面又は口頭で警告又は注意の喚起(以下「警告等」という。)を行うことができる。

2 日本国政府は、警告等を受けた者が、当該警告等を受けた日から1年を経過するまでの間に、警告等を受ける事由を繰り返したときは、措置を行うことができる。

(事務の委任)

第12 第9及び第10に係る事務は、外務省総合外交政策局長が行うこととする。

2 第2第3項及び第4項、第5並びに第11に係る事務は、外務省総合外交政策局の課長又は室長が行うこととする。

附則

本要領は、令和5年4月5日から実施する。



別表第1

事故等に基づく措置基準

措置要件 期間

(虚偽記載)

1 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、当該契約に係る一連の調達関連書類等に虚偽の記載をしたと認められるとき。

当該認定をした日から1か月以上6か月以内

(過失による粗雑業務)

2 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、当該契約に係る業務の履行に当たり、過失により、業務を粗雑にしたと認められるとき(瑕疵が軽微であると認められる場合を除く。)。

当該認定をした日から1か月以上6か月以内

(契約違反)

3 前号に掲げる場合のほか、日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、当該契約に係る業務の履行に当たり、契約に違反し、契約の相手先として不適当であると認められるとき。

当該認定をした日から2週間以上4か月以内

(公衆損害事故)

4 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、当該契約に係る業務の履行に当たり、安全管理の措置が不適切であったため、公衆に死亡者若しくは負傷者を生じさせ、又は損害(軽微なものを除く。)を与えたと認められるとき。

当該認定をした日から1か月以上6か月以内

(業務関係者事故)

5 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、当該契約に係る業務の履行に当たり、安全管理の措置が不適切であったため、契約業務関係者に死亡者又は負傷者を生じさせたと認められるとき。

当該認定をした日から2週間以上4か月以内




別表第2

贈賄及び不正行為等に基づく措置基準










措置要件

期間

(贈賄)

1 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る業務との関係で、法人の役員若しくは使用人又は個人若しくはその使用人 が、刑法第198条(贈賄)違反の容疑により、逮捕又は逮捕を経 ない公訴の提起をされたとき。

逮捕又は公訴提起を知った日から2か月以上18か月以内

(不正競争防止法違反行為)

2 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る業務との関係で、法人の役員若しくは使用人又は個人若しくはその使用人が、不正競争防止法(平成5年法律第47号)第18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)違反の容疑により、逮捕又は逮捕を経ない公訴の提起をされたとき。

逮捕又は公訴提起を知った日から6か月以上36か月以内

(独占禁止法違反行為〉

3 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、独占禁止法第3条、第6条、第8条第一号又は同条第二号に違反し、契約相手先として不適当であると認められるとき。

当該認定をした日から3か月以上12か月以内

(競売入札妨害,談合又は業務妨害)

4 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、次のイ又はロに掲げる者が刑法第96条の6第1項(競売入札妨害)、同条第2項(談合)又は同法第233条若しくは第234条(業務妨害)違反の容疑により、逮捕又は逮捕を経ない公訴の提起をされたとき。

イ 個人又は法人の代表権を有する役員(代表権を有すると認めるべき肩書を付した役員を含む。)

ロ 役員(執行役員を含む。)、その支店若しくは営業所を代表する者又は使用人であって、イに掲げる以外の者


逮捕又は公訴提起を知った日から


4か月以上12か月以内

3か月以上12か月以内


(重大な独占禁止法違反行為)

5 日本国の政府安全保障能力強化支援(OSA)事業に係る調達契約に関し、独占禁止法第3条、第6条、第8条第一号又は同条第二号に違反し、刑事告発を受けたとき(法人の役員若しくは使用人又は個人若しくはその使用人が刑事告発を受け、又は逮捕若しくは逮捕を経ない公訴の提起をされた場合を含む。)

刑事告発、逮捕又は公訴提起を知った日から6か月以上36か月以内

(不正又は不誠実な行為)

6 別表第1及び前各号に掲げる場合のほか、不正又は不誠実な行為をし、契約の相手方として不適当であると認められるとき。

当該認定をした日から1か月以上18か月以内

7 別表第1及び前各号に掲げる場合のほか、代表役員等が禁錮以上の刑に当たる犯罪の容疑による公訴の提起又は禁錮以上の刑若しくは刑法の規定による罰金刑の宣告をされ、契約の相手方として不適当であると認められるとき。

当該認定をした日から1か月以上9か月以内