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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表(日米同盟:未来のための変革と再編)

[場所] ワシントンDC
[年月日] 2005年10月29日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

ライス国務長官

ラムズフェルド国防長官

町村外務大臣

大野防衛庁長官

I.概観

 日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎である。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない。以上を踏まえ、2002年12月の安全保障協議委員会以降、日本及び米国は、日米同盟の方向性を検証し、地域及び世界の安全保障環境の変化に同盟を適応させるための選択肢を作成するため、日米それぞれの安全保障及び防衛政策について精力的に協議した。

 2005年2月19日の安全保障協議委員会において、閣僚は、共通の戦略目標についての理解に到達し、それらの目標を追求する上での自衛隊及び米軍の役割・任務・能力に関する検討を継続する必要性を強調した。また、閣僚は、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化することとし、事務当局に対して、これらの協議の結果について速やかに報告するよう指示した。

 本日、安全保障協議委員会の構成員たる閣僚は、新たに発生している脅威が、日本及び米国を含む世界中の国々の安全に影響を及ぼし得る共通の課題として浮かび上がってきた、安全保障環境に関する共通の見解を再確認した。また、閣僚は、アジア太平洋地域において不透明性や不確実性を生み出す課題が引き続き存在していることを改めて強調し、地域における軍事力の近代化に注意を払う必要があることを強調した。この文脈で、双方は、2005年2月19日の共同発表において確認された地域及び世界における共通の戦略目標を追求するために緊密に協力するとのコミットメントを改めて強調した。

 閣僚は、役割・任務・能力に関する検討内容及び勧告を承認した。また、閣僚は、この報告に含まれた再編に関する勧告を承認した。これらの措置は、新たな脅威や多様な事態に対応するための同盟の能力を向上させるためのものであり、全体として地元に与える負担を軽減するものである。これによって、安全保障が強化され、同盟が地域の安定の礎石であり続けることが確保される。

II.役割・任務・能力

 テロとの闘い、拡散に対する安全保障構想(PSI)、イラクへの支援、インド洋における津波や南アジアにおける地震後の災害支援をはじめとする国際的活動における二国間協力や、2004年12月の日本の防衛計画の大綱、弾道ミサイル防衛(BMD)における協力の進展、日本の有事法制、自衛隊の新たな統合運用体制への移行計画、米軍の変革と世界的な態勢の見直しといった、日米の役割・任務・能力に関連する安全保障及び防衛政策における最近の成果と発展を、双方は認識した。

1.重点分野

 この文脈で、日本及び米国は、以下の二つの分野に重点を置いて、今日の安全保障環境における多様な課題に対応するための二国間、特に自衛隊と米軍の役割・任務・能力を検討した。

‐日本の防衛及び周辺事態への対応(新たな脅威や多様な事態への対応を含む)

‐国際平和協力活動への参加をはじめとする国際的な安全保障環境の改善のための取組

2.役割・任務・能力についての基本的考え方

 双方は、二国間の防衛協力に関連するいくつかの基本的考え方を確認した。日本の防衛及び周辺事態への対応に関連するこれらの考え方には以下が含まれる。

●二国間の防衛協力は、日本の安全と地域の平和と安定にとって引き続き死活的に重要である。

●日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する。これらの目的のために、日本の防衛態勢は、2004年の防衛計画の大綱に従って強化される。

●米国は、日本の防衛のため、及び、周辺事態を抑止し、これに対応するため、前方展開兵力を維持し、必要に応じて兵力を増強する。米国は、日本の防衛のために必要なあらゆる支援を提供する。

●周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合、又は、両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るよう、日本の防衛及び周辺事態への対応に際しての日米の活動は整合を図るものとする。

●日本は、米軍のための施設・区域(以下、「米軍施設・区域」)を含めた接受国支援を引き続き提供する。また、日本は、日本の有事法制に基づく支援を含め、米軍の活動に対して、事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供するための適切な措置をとる。双方は、在日米軍のプレゼンス及び活動に対する安定的な支持を確保するために地元と協力する。

●米国の打撃力及び米国によって提供される核抑止力は、日本の防衛を確保する上で、引き続き日本の防衛力を補完する不可欠のものであり、地域の平和と安全に寄与する。

 また、双方は、国際的な安全保障環境の改善の分野における役割・任務・能力に関連するいくつかの基本的考え方を以下のとおり確認した。

●地域及び世界における共通の戦略目標を達成するため、国際的な安全保障環境を改善する上での二国間協力は、同盟の重要な要素となった。この目的のため、日本及び米国は、それぞれの能力に基づいて適切な貢献を行うとともに、実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる。

●迅速かつ実効的な対応のためには柔軟な能力が必要である。緊密な日米の二国間協力及び政策調整は、これに資する。第三国との間で行われるものを含む定期的な演習によって、このような能力を向上し得る。

●自衛隊及び米軍は、国際的な安全保障環境を改善するための国際的な活動に寄与するため、他国との協力を強化する。

 加えて、双方は、新たな脅威や多様な事態に対処すること、及び、国際的な安全保障環境を改善することの重要性が増していることにより、双方がそれぞれの防衛力を向上し、かつ、技術革新の成果を最大限に活用することが求められていることを強調した。

3.二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例

 双方は、あらゆる側面での二国間協力が、関連の安全保障政策及び法律並びに日米間の取極に従って強化されなければならないことを再確認した。役割・任務・能力の検討を通じ、双方は、いくつかの個別分野において協力を向上させることの重要性を強調した。

●防空

●弾道ミサイル防衛

●拡散に対する安全保障構想(PSI)といった拡散阻止活動

●テロ対策

●海上交通の安全を維持するための機雷掃海、海上阻止行動その他の活動

●捜索・救難活動

●無人機(UAV)や哨戒機により活動の能力と実効性を増大することを含めた、情報、監視、偵察(ISR)活動

●人道救援活動

●復興支援活動

●平和維持活動及び平和維持のための他国の取組の能力構築

●在日米軍施設・区域を含む重要インフラの警護

●大量破壊兵器(WMD)の廃棄及び除染を含む、大量破壊兵器による攻撃への対応

●補給、整備、輸送といった相互の後方支援活動。補給協力には空中及び海上における給油を相互に行うことが含まれる。輸送協力には航空輸送及び高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大し、共に実施することが含まれる。

●非戦闘員退避活動(NEO)のための輸送、施設の使用、医療支援その他関連する活動

●港湾・空港、道路、水域・空域及び周波数帯の使用

 双方は、以上に明記されていない他の活動分野も同盟の能力にとって引き続き重要であることを強調した。上述の項目は、更なる向上のための鍵となる分野を強調したものであり、可能な協力分野を包括的に列挙することを意図したものではない。

4.二国間の安全保障・防衛協力の態勢を強化するための不可欠な措置

 上述の役割・任務・能力に関する検討に基づき、双方は、更に、新たな安全保障環境において多様な課題に対処するため、二国間の安全保障・防衛協力の態勢を強化する目的で平時からとり得る不可欠な措置を以下のとおり特定した。また、双方は、実効的な二国間の協力を確保するため、これまでの進捗に基づき、役割・任務・能力を引き続き検討することの重要性を強調した。

●緊密かつ継続的な政策及び運用面の調整

 双方は、定期的な政策及び運用面の調整が、戦略環境の将来の変化や緊急事態に対する同盟の適時かつ実効的な対応を向上させることを認識した。部隊戦術レベルから戦略的な協議まで、政府のあらゆるレベルで緊密かつ継続的な政策及び運用面の調整を行うことは、不安定化をもたらす軍事力増強を抑制し、侵略を抑止し、多様な安全保障上の課題に対応する上で不可欠である。米軍及び自衛隊の間で共通の運用画面を共有することは、運用面での調整を強化するものであり、可能な場合に追求されるべきである。防衛当局と他の関係当局との間のより緊密な協力もますます必要となっている。この文脈で、双方は、1997年の日米防衛協力のための指針の下での包括的メカニズムと調整メカニズムの実効性を、両者の機能を整理することを通じて向上させる必要性を再確認した。

●計画検討作業の進展

 1997年の日米防衛協力のための指針が共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討の基礎となっていることを想起しつつ、双方は、安全保障環境の変化を十分に踏まえた上で、これらの検討作業が引き続き必要であることを確認した。この検討作業は、空港及び港湾を含む日本の施設を自衛隊及び米軍が緊急時に使用するための基礎が強化された日本の有事法制を反映するものとなる。双方は、この検討作業を拡大することとし、そのために、検討作業により具体性を持たせ、関連政府機関及び地方当局と緊密に調整し、二国間の枠組みや計画手法を向上させ、一般及び自衛隊の飛行場及び港湾の詳細な調査を実施し、二国間演習プログラムを強化することを通じて検討作業を確認する。

●情報共有及び情報協力の向上

 双方は、良く連携がとれた協力のためには共通の情勢認識が鍵であることを認識しつつ、部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有及び情報協力をあらゆる範囲で向上させる。この相互活動を円滑化するため、双方は、関連当局の間でより幅広い情報共有が促進されるよう、共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる。

●相互運用性の向上

 自衛隊が統合運用体制に移行するのに際して円滑な協力を確保するため、自衛隊及び米軍は、相互運用性を維持・強化するため定期的な協議を維持する。共同の運用のための計画作業や演習における継続的な協力は、自衛隊と米軍の司令部間の連接性を強化するものであり、安全な通信能力の向上はこのような協力に資する。

●日本及び米国における訓練機会の拡大

 双方は、相互運用性の向上、能力の向上、即応性の向上、地元の間での訓練の影響のより公平な分散及び共同の活動の実効性の増大のため、共同訓練及び演習の機会を拡大する。これらの措置には、日本における自衛隊及び米軍の訓練施設・区域の相互使用を増大することが含まれる。また、自衛隊要員及び部隊のグアム、アラスカ、ハワイ及び米本土における訓練も拡大される。

○特に、グアムにおける訓練施設を拡張するとの米国の計画は、グアムにおける自衛隊の訓練機会の増大をもたらす。

○また、双方は、多国間の訓練及び演習への自衛隊及び米軍の参加により、国際的な安全保障環境の改善に対する貢献が高まるものであることを認識した。

●自衛隊及び米軍による施設の共同使用

 双方は、自衛隊及び米軍による施設の共同使用が、共同の活動におけるより緊密な連携や相互運用性の向上に寄与することを認識した。施設の共同使用のための具体的な機会については、兵力態勢の再編に関する勧告の中で述べられる(下記参照)。

●弾道ミサイル防衛(BMD)BMD

 BMDが、弾道ミサイル攻撃を抑止し、これに対して防御する上で決定的に重要な役割を果たすとともに、他者による弾道ミサイルの開発及び拡散を抑制することができることを強調しつつ、双方は、それぞれのBMD能力の向上を緊密に連携させることの意義を強調した。これらのBMDシステムを支援するため、弾道ミサイルの脅威に対応するための時間が限りなく短いことにかんがみ、双方は、不断の情報収集及び共有並びに高い即応性及び相互運用性の維持が決定的に重要であることを強調した。米国は、適切な場合に、日本及びその周辺に補完的な能力を追加的に展開し、日本のミサイル防衛を支援するためにその運用につき調整する。それぞれのBMD指揮・統制システムの間の緊密な連携は、実効的なミサイル防衛にとって決定的に重要となる。

 双方は、1997年の日米防衛協力のための指針の下での二国間協力及び、適切な場合には、現在指針で取り上げられていない追加的な分野における二国間協力の実効性を強化し、改善することを確約した。

III.兵力態勢の再編

 双方は、沖縄を含む地元の負担を軽減しつつ抑止力を維持するとの共通のコミットメントにかんがみて、在日米軍及び関連する自衛隊の態勢について検討した。安全保障同盟に対する日本及び米国における国民一般の支持は、日本の施設・区域における米軍の持続的なプレゼンスに寄与するものであり、双方は、このような支持を強化することの重要性を認識した。

1.指針となる考え方

 検討に当たっては、双方は、二国間の役割・任務・能力についての検討を十分に念頭に置きつつ、日本における兵力態勢の再編の指針となるいくつかの考え方を設定した。

●アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスは、地域の平和と安全にとって不可欠であり、かつ、日米両国にとって決定的に重要な中核的能力である。日本は、自らの防衛について主導的な役割を果たしつつ、米軍によって提供される能力に対して追加的かつ補完的な能力を提供する。米軍及び自衛隊のプレゼンスは、地域及び世界における安全保障環境の変化や同盟における役割及び任務についての双方の評価に伴って進展しなければならない。

●再編及び役割・任務・能力の調整を通じて、能力は強化される。これらの能力は、日本の防衛と地域の平和と安全に対する米国のコミットメントの信頼性を支えるものである。

●柔軟かつ即応性のある指揮・統制のための司令部間の連携向上や相互運用性の向上は、日本及び米国にとって決定的に重要な中核的能力である。この文脈で、双方は、在日米軍司令部が二国間の連携を強化する上で引き続き重要であることを認識した。

●定期的な訓練及び演習や、これらの目的のための施設・区域の確保は、兵力の即応性、運用能力及び相互運用性を確保する上で不可欠である。軍事上の任務及び運用上の所要と整合的な場合には、訓練を分散して行うことによって、訓練機会の多様性を増大することができるとともに、訓練が地元に与える負担を軽減するとの付随的な利益を得ることができる。

●自衛隊及び米軍の施設・区域の軍事上の共同使用は、二国間協力の実効性を向上させ、効率性を高める上で有意義である。

●米軍施設・区域には十分な収容能力が必要であり、また、平時における日常的な使用水準以上の収容能力は、緊急時の所要を満たす上で決定的に重要かつ戦略的な役割を果たす。この収容能力は、災害救援や被害対処の状況など、緊急時における地元の必要性を満たす上で不可欠かつ決定的に重要な能力を提供する。

●米軍施設・区域が人口密集地域に集中している場所では、兵力構成の再編の可能性について特別の注意が払われる。

●米軍施設・区域の軍民共同使用を導入する機会は、適切な場合に検討される。このような軍民共同使用の実施は、軍事上の任務及び運用上の所要と両立するものでなければならない。

2.再編に関する勧告

 これまでに実施された精力的な協議に基づき、また、これらの基本的考え方に従って、日米安全保障条約及び関連取極を遵守しつつ、以下の具体案について国内及び二国間の調整が速やかに行われる。閣僚は、地元との調整を完了することを確約するとともに、事務当局に対して、これらの個別的かつ相互に関連する具体案を最終的に取りまとめ、具体的な実施日程を含めた計画を2006年3月までに作成するよう指示した。これらの具体案は、統一的なパッケージの要素となるものであり、パッケージ全体について合意され次第、実施が開始されるものである。双方は、これらの具体案の迅速な実施に求められる必要な措置をとることの重要性を強調した。

●共同統合運用調整の強化

 自衛隊を統合運用体制に変革するとの日本国政府の意思を認識しつつ、在日米軍司令部は、横田飛行場に共同統合運用調整所を設置する。この調整所の共同使用により、自衛隊と在日米軍の間の連接性、調整及び相互運用性が不断に確保される。

●米陸軍司令部能力の改善

 キャンプ座間の在日米陸軍司令部の能力は、展開可能で統合任務が可能な作戦司令部組織に近代化される。改編された司令部は、日本防衛や他の事態において迅速に対応するための追加的能力を有することになる。この新たな陸軍司令部とその不可分の能力を収容するため、在日米軍施設・区域について調整が行われる。また、機動運用部隊や専門部隊を一元的に運用する陸上自衛隊中央即応集団司令部をキャンプ座間に設置することが追求される。これにより司令部間の連携が強化される。この再編との関連で、キャンプ座間及び相模総合補給廠のより効果的かつ効率的な使用の可能性が探求される。

●航空司令部の併置

 現在府中に所在する日本の航空自衛隊航空総隊司令部及び関連部隊は、横田飛行場において米第5空軍司令部と併置されることにより、防空及びミサイル防衛の司令部組織間の連携が強化されるとともに、上記の共同統合運用調整所を通じて関連するセンサー情報が共有される。

●横田飛行場及び空域

 2009年に予定されている羽田空港拡張を念頭に置きつつ、横田空域における民間航空機の航行を円滑化するための措置が探求される。検討される選択肢には、米軍が管制を行っている空域の削減や、横田飛行場への日本の管制官の併置が含まれる。加えて、双方は、嘉手納のレーダー進入管制業務の移管プロセスの進捗を考慮する。あり得べき軍民共同使用のための具体的な条件や態様が、共同使用が横田飛行場の運用上の能力を損なってはならないことに留意しつつ、検討される。

●ミサイル防衛

 新たな米軍のXバンド・レーダー・システムの日本における最適な展開地が検討される。このレーダーは、適時の情報共有を通じて、日本に向かうミサイルを迎撃する能力、及び、日本の国民保護や被害対処のための能力を支援する。さらに、米国の条約上のコミットメントを支援するため、米国は、適切な場合に、パトリオットPAC‐3やスタンダード・ミサイル(SM‐3)といった積極防御能力を展開する。

●柔軟な危機対応のための地域における米海兵隊の再編

 世界的な態勢見直しの取組の一環として、米国は、太平洋における兵力構成を強化するためのいくつかの変更を行ってきている。これらの変更には、海兵隊の緊急事態への対応能力の強化や、それらの能力のハワイ、グアム及び沖縄の間での再分配が含まれる。これによって、個別の事態の性質や場所に応じて、適切な能力を伴った対応がより柔軟になる。また、これらの変更は、地域の諸国との戦域的な安全保障協力の増進を可能とするものであり、これにより、安全保障環境全般が改善される。この再編との関連で、双方は、沖縄の負担を大幅に軽減することにもなる相互に関連する総合的な措置を特定した。

○普天間飛行場移設の加速:沖縄住民が米海兵隊普天間飛行場の早期返還を強く要望し、いかなる普天間飛行場代替施設であっても沖縄県外での設置を希望していることを念頭に置きつつ、双方は、将来も必要であり続ける抑止力を維持しながらこれらの要望を満たす選択肢について検討した。双方は、米海兵隊兵力のプレゼンスが提供する緊急事態への迅速な対応能力は、双方が地域に維持することを望む、決定的に重要な同盟の能力である、と判断した。さらに、双方は、航空、陸、後方支援及び司令部組織から成るこれらの能力を維持するためには、定期的な訓練、演習及び作戦においてこれらの組織が相互に連携し合うことが必要であり続けるということを認識した。このような理由から、双方は、普天間飛行場代替施設は、普天間飛行場に現在駐留する回転翼機が、日常的に活動をともにする他の組織の近くに位置するよう、沖縄県内に設けられなければならないと結論付けた。

○双方は、海の深い部分にある珊瑚礁上の軍民共用施設に普天間飛行場を移設するという、1996年の沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の計画に関連する多くの問題のために、普天間飛行場の移設が大幅に遅延していることを認識し、運用上の能力を維持しつつ、普天間飛行場の返還を加速できるような、沖縄県内での移設のあり得べき他の多くの選択肢を検討した。双方は、この作業において、以下を含む複数の要素を考慮した。

■近接する地域及び軍要員の安全

■普天間飛行場代替施設の近隣で起こり得る、将来的な住宅及び商業開発の態様を考慮した、地元への騒音の影響

■環境に対する悪影響の極小化

■平時及び緊急時において運用上及び任務上の所要を支援するための普天間飛行場代替施設の能力

■地元住民の生活に悪影響を与えかねない交通渋滞その他の諸問題の発生を避けるために、普天間飛行場代替施設の中に必要な運用上の支援施設、宿泊及び関連の施設を含めること

○このような要素に留意しつつ、双方は、キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に普天間代替施設を設置する。同施設の滑走路部分は、大浦湾から、キャンプ・シュワブの南側海岸線に沿った水域へと辺野古崎を横切ることになる。北東から南西の方向に配置される同施設の下方部分は、滑走路及びオーバーランを含み、護岸を除いた合計の長さが1800メートルとなる。格納庫、整備施設、燃料補給用の桟橋及び関連設備、並びに新たな施設の運用上必要なその他の航空支援活動は、代替施設のうち大浦湾内に建設さSACOれる予定の区域に置かれる。さらに、キャンプ・シュワブ区域内の施設は、普天間飛行場に関連する活動の移転を受け入れるために、必要に応じて、再編成される。(参照:2005年10月26日付のイニシャルされた概念図){図は省略}

○両政府は、普天間飛行場に現在ある他の能力が、以下の調整が行われた上で、SACO最終報告にあるとおり、移設され、維持されることで一致した。

■SACO最終報告において普天間飛行場から岩国飛行場に移駐されることとなっているKC‐130については、他の移駐先として、海上自衛隊鹿屋基地が優先して、検討される。双方は、最終的な配置の在り方については、現在行われている運用上及び技術上の検討を基に決定することとなる。

■緊急時における航空自衛隊新田原基地及び築城基地の米軍による使用が強化される。この緊急時の使用を支援するため、これらの基地の運用施設が整備される。また、整備後の施設は、この報告の役割・任務・能力の部分で記載されている、拡大された二国間の訓練活動を支援することとなる。

■普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のため、緊急時における米軍による民間施設の使用を改善する。

○双方は、上述の措置を早期に実現することが、長期にわたり望まれてきた普天間飛行場返還の実現に加えて、沖縄における海兵隊のプレゼンスを再編する上で不可欠の要素であることを認識した。

○兵力削減:上記の太平洋地域における米海兵隊の能力再編に関連し、第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)司令部はグアム及び他の場所に移転され、また、残りの在沖縄海兵隊部隊は再編されて海兵機動展開旅団(MEB)に縮小される。この沖縄における再編は、約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を含む。これらの要員は、海兵隊航空団、戦務支援群及び第3海兵師団の一部を含む、海兵隊の能力(航空、陸、後方支援及び司令部)の各組織の部隊から移転される。

○日本国政府は、このような兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、米国政府と協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の措置を見出すための検討を行う。

○土地の返還及び施設の共同使用:上記の普天間飛行場移設及び兵力削減が成功裡に行われることが、兵力の更なる統合及び土地の返還を可能にすることを認識しつつ、双方は、沖縄に残る海兵隊部隊を、土地の総面積を縮小するように統合する構想について議論した。これは、嘉手納飛行場以南の人口が集中している地域にある相当規模の土地の返還を可能にする。米国は、日本国政府と協力して、この構想の具体的な計画を作成し、実施する意思を強調した。

○さらに、自衛隊がアクセスを有する沖縄の施設が限られており、またその大半が都市部にあることを認識しつつ、米国は、日本国政府と協力して、嘉手納飛行場、キャンプ・ハンセンその他の沖縄にある米軍施設・区域の共同使用を実施する意思も強調した。このような共同使用は、この報告の役割・任務・能力の部分に記述されているように、共同訓練並びに自衛隊及び米軍の間の相互運用性を促進し、それにより、全体的な同盟の能力を強化するものと双方は考える。

○SACO最終報告の着実な実施:双方は、この文書における勧告によって変更されない限りにおいて、SACO最終報告の着実な実施の重要性を確認した。

●空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐

 米空母及び艦載機の長期にわたる前方展開の能力を確保するため、空母艦載ジェット機及びE‐2C飛行隊は、厚木飛行場から、滑走路移設事業終了後には周辺地域の生活環境への影響がより少ない形で安全かつ効果的な航空機の運用のために必要な施設及び訓練空域を備えることとなる岩国飛行場に移駐される。岩国飛行場における運用の増大による影響を緩和するため、以下の関連措置がとられる。

○海上自衛隊EP‐3、OP‐3、UP‐3飛行隊等の岩国飛行場から厚木飛行場への移駐。

○すべての米海軍及び米海兵隊航空機の十分な即応性の水準の維持を確保するための訓練空域の調整。

○空母艦載機離発着訓練のための恒常的な訓練施設の特定。それまでの間、現在の暫定的な措置に従い、米国は引き続き硫黄島で空母艦載機離発着訓練を実施する。日本国政府は、米海軍航空兵力の空母艦載機離発着訓練のために受け入れ可能な恒常的な訓練施設を提供するとのコミットメントを再確認する。

○KC‐130を受け入れるために海上自衛隊鹿屋基地において必要な施設の整備。これらの施設は、同盟の能力及び柔軟性を増大するために、日本の他の場所からの追加的な自衛隊又は米軍のC‐130又はP‐3航空機の一時的な展開を支援するためにも活用される。

○岩国飛行場に配置される米海軍及び米海兵隊部隊、並びに民間航空の活動を支援するために必要な追加的施設、インフラ及び訓練区域の整備。

●訓練の移転

 この報告で議論された二国間の相互運用性を向上させる必要性に従うとともに、訓練活動の影響を軽減するとの目標を念頭に、嘉手納飛行場を始めとして、三沢飛行場や岩国飛行場といった米軍航空施設から他の軍用施設への訓練の分散を拡大することに改めて注意が払われる。

●在日米軍施設の収容能力の効率的使用

 在日米軍施設の収容能力の効率的使用に関連して、米国と日本国政府及び地元との協力を強化するための機会が、運用上の要請及び安全性と整合的な場合に追求される。例えば、双方は、災害救援や被害対処といった緊急時における地元の必要性を満たすため、相模総合補給廠の収容能力を活用する可能性を探求する。

 この報告の他の部分で取り扱われなかった米軍施設・区域及び兵力構成における将来の変更は、日米安全保障条約及びその関連取極の下での現在の慣行に従って取り扱われる。