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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] テロ対策特措法に基づく対応措置の実施及び対応措置に関する基本計画について 安全保障会議決定 閣議決定

[場所] 
[年月日] 2001年11月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年法律第113号)第4条第1項に規定する対応措置(「テロ対策措置法に基づく対応措置」という。)を実施することとし、この対応措置に関する基本計画を別紙のとおり定める。

テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画

1 基本方針

本年9月11日に米国において発生したテロリストによる攻撃(以下「テロ攻撃」という。)は、米国のみならず人類全体に対する卑劣かつ許しがたい行為である。これに対し、現在、世界の国々が、立場の違いを超えて非人道的なテロリズムを非難し、力を合わせてこれに立ち向かっている。

我が国としても、国際的なテロリズムとの闘いを自らの問題と認識して、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための取組に積極的かつ主体的に寄与するとの立場に立ち、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行うことが重要である。

このため、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(平成13年法律第113号。この基本計画において、「テロ対策特措法」という。)に基づき、協力支援活動、捜索救助活動及び被災民救援活動を実施することとする。

2 協力支援活動の実施に関する事項

(1)協力支援活動に関する基本的事項

テロ攻撃に対応して、本年10月8日以降、米国等はタリバーン等に対する軍事行動を開始した。このような状況を踏まえ、我が国は、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与している米国等の軍隊等の活動に対して、以下のとおり、協力支援活動を実施する。

(2)協力支援活動の種類及び内容

自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供として米国等の軍隊等に対して実施する協力支援活動の種類及び内容は、次のとおりとする。

ア 補給

艦船による艦船用燃料等の補給

イ 輸送

(ア) 艦船による艦船用燃料等の輸送

(イ) 航空機による人員及び物品の輸送

ウ その他

(ア) 修理及び整備

修理及び整備、修理及び整備用機器並びに部品及び構成品の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

(イ) 医療

傷病者に対する医療、衛生機具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

(ウ) 港湾業務

国内における船舶の出入港に対する支援、積卸作業並びにこれらに類する物品及び役務の提供

(3)協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

ア (2)ア及びイに掲げる補給及び輸送を実施する区域の範囲は、次のとおりとする。

(ア) 我が国の領域

(イ) 艦船による補給及び輸送については、インド洋(ペルシャ湾を含む。以下同じ。)及びその上空並びに以下のもの(インド洋及びその上空に属するものを除く。)

(a)英国ディエゴ・ガルシア島及びそれに係る同国の領海並びにそれらの上空

(b)オーストラリアの領域

(c)インド洋の沿岸及び我が国の領域からこれに至る地域に所在する経由地又は燃料等の積卸地となる国の領域

(ウ) 航空機による輸送については、米国グアム島及びその上空並びにそれに係る米国の領海の上空、英国ディエゴ・ガルシア島及びその上空並びにそれに係る英国の領海の上空並びにインド洋の沿岸及び我が国の領域からこれに至る地域に所在する経由地、人員の乗降地又は物品の積卸地となる国の領域

(エ) (ア)、(イ)及び(ウ)に掲げる地域に属する2つの地点を結ぶ航行に際して艦船又は航空機が通過する海域及び空域((ア)、(イ)又は(ウ)に掲げる地域に属するものを除く。)

イ (2)ウ(ア)に掲げる修理及び整備を実施する区域の範囲は、ア(ア)及び(イ)に掲げる地域並びにこれらの地域に属する2つの地点を結ぶ航行に際して艦船が通過する海域(ア(ア)又は(イ)に掲げる地域に属するものを除く。)並びにア(ウ)に掲げる外国の領土とする。

ウ (2)ウ(イ)に掲げる医療を実施する区域の範囲は、ア(ア)及び(イ)に掲げる地域並びにこれらの地域に属する2つの地点を結ぶ航行に際して艦船が通過する海域(ア(ア)又は(イ)に掲げる地域に属するものを除く。)とする。

エ (2)ウ(ウ)に掲げる港湾業務を実施する区域の範囲は、ア(ア)に掲げる地域とする。

オ 防衛庁長官は、協力支援活動を実施する区域を公海及びその上空並びに外国の領域に指定するに当たっては、当該活動が、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるよう、また、当該活動の安全が確保されるよう、諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。

(4)協力支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

ア 規模及び構成

(ア) (2)ア及びイ(ア)に掲げる補給及び輸送を補給艦及び護衛艦により行うための海上自衛隊の部隊(人員1200名以内。ただし、部隊の交替を行う場合は2400名以内)

(イ) (2)イ(イ)に掲げる輸送を輸送機及び多用途支援機により行うための航空自衛隊の部隊(人員180名以内)

(ウ) (2)ウ(ア)に掲げる修理及び整備を行う部隊は、(ア)及び(イ)に掲げる部隊とし、また、(2)ウ(イ)に掲げる医療を行う部隊は、(ア)に掲げる部隊とする。

イ 装備

(ア) 艦船

補給艦2隻以内及び護衛艦3隻以内(ただし、部隊の交替を行う場合は補給艦4隻以内及び護衛艦6隻以内)

(イ) 航空機

輸送機6機以内及び多用途支援機2機以内

(ウ) その他

(a) (2)イ(イ)に掲げる輸送を行う航空自衛隊の部隊の自衛官の数に相応する数量の拳銃

(b) 自衛隊員の健康及び安全の確保並びに(2)アからウ(イ)までに掲げる活動に必要な装備((ア)から(ウ)(a)までに掲げるものを除く。)

ウ 派遣期間

平成13年11月20日から平成14年5月19日までの間

(5)関係行政機関によるその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品の調達及び諸外国の軍隊等への譲与の実施に係る重要事項

自衛隊が実施する協力支援活動として艦船による艦船用燃料の補給を行うため、政府は、当該燃料を調達し、これを米国等の軍隊等に譲与することとする。

(6)その他協力支援活動の実施に関する重要事項

ア 関係行政機関は、その所掌事務の遂行を通じて得られた、自衛隊の部隊等が協力支援活動を実施する区域の範囲及びその周辺における諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等に関する情報その他の協力支援活動の実施に必要な情報に関し、相互に緊密に連絡をとるものとする。

イ 関係行政機関の長は、防衛庁長官から、自衛隊の部隊等が協力支援活動を実施するために必要な技術、能力等を有する職員の派遣、所管に属する物品の管理換その他の協力の要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において協力を行うものとする。

ウ 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、協力支援活動の実施のため必要な協力を行うものとする。

3 捜索救助活動の実施に関する事項

(1)捜索救助活動に関する基本的事項並びに捜索救助活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項並びに捜索救助活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

ア 我が国は、2に定める協力支援活動又は4に定める被災民救援活動を行う自衛隊の部隊等が遭難した戦闘参加者を発見し、又は、かかる遭難者の捜索救助について米国等から依頼があった場合に、捜索救助活動を実施する。捜索救助活動を実施する区域の範囲は、インド洋及びその上空に属する、2に定める協力支援活動を実施する区域の範囲及び4に定める被災民救援活動を実施する区域の範囲とする。なお、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これについても同様に捜索救助活動を実施するものとする。

イ 防衛庁長官は、捜索救助活動を実施する区域を公海及びその上空並びに外国の領域に指定するに当たっては、当該活動が、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるよう、また、当該活動の安全が確保されるよう、諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。

(2)捜索救助活動の実施に伴うテロ対策特措法第3条第3項後段の協力支援活動に関する重要事項

捜索救助活動の実施に伴い、当該活動に相当する活動を行う米国等の軍隊等の部隊等に対して協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供の種類及び内容は、テロ対策特措法別表第2に掲げるものとする。

(3)その他捜索救助活動の実施に関する重要事項

ア 関係行政機関は、その所掌事務の遂行を通じて得られた、自衛隊の部隊等が捜索救助活動を実施する区域の範囲及びその周辺における捜索救助活動の実施に必要な情報に関し、相互に緊密に連絡をとるものとする。

イ 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、捜索救助活動の実施のため必要な協力を行うものとする。

4 被災民救援活動の実施に関する事項

(1)被災民救援活動に関する基本的事項

パキスタン領域内の難民キャンプでは、生活関連物資の不足等から深刻な状況が生じている。かかる状況に対処するため、国際連合難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)をはじめとする人道援助機関が救援活動を実施している。このような状況を踏まえ、我が国は、以下のとおり、被災民救援活動を実施する。

なお、パキスタンにおける医療支援等の被災民救援のための措置については、パキスタン及び国際連合等との協議・調整を行った上で、可能な限り早期に具体的な調査・検討を行い、関係行政機関による実施を目指して努力することとする。

また、パキスタン以外のアフガニスタン周辺国における被災民救援のための措置の実施について、今後の情勢の推移を見極めつつ対応していくこととする。

(2)被災民救援活動の種類及び内容

UNHCRからの要請に基づく、生活関連物資のUNHCRへの提供(自衛隊の艦船による当該物資の輸送を含む。)とする。

(3)被災民救援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

ア 被災民救援活動を実施する区域の範囲は、次のとおりとする。

(ア) 我が国の領域

(イ) パキスタンの領域

(ウ) インド洋の沿岸及び我が国の領域からこれに至る地域に所在する経由地となる国の領域

(エ) (ア)、(イ)及び(ウ)に掲げる地域に属する2つの地点を結ぶ航行に際して艦船が通過する海域及びその上空((ア)、(イ)又は(ウ)に掲げる地域に属するものを除く。)

イ 防衛庁長官は、被災民救援活動を実施する区域を公海及びその上空並びに外国の領域に指定するに当たっては、当該活動が、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるよう、また、当該活動の安全が確保されるよう、諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。

(4)被災民救援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

ア 規模及び構成

(2)に定める輸送を掃海母艦及び護衛艦(護衛艦については、協力支援活動を行うものを使用する。)により行うための海上自衛隊の部隊(人員120名以内。ただし、協力支援活動を行う護衛艦に係る人員を除く。)

イ 装備

掃海母艦1隻及び護衛艦1隻(護衛艦については、協力支援活動を行うものを使用する。)

ウ 派遣期間

平成13年11月20日から平成13年12月31日までの間

(5)その他被災民救援活動の実施に関する重要事項

ア 関係行政機関は、その所掌事務の遂行を通じて得られた、自衛隊の部隊等が被災民救援活動を実施する区域の範囲及びその周辺における諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等に関する情報その他の被災民救援活動の実施に必要な情報に関し、相互に緊密に連絡をとるものとする。

イ 関係行政機関の長は、防衛庁長官から、自衛隊の部隊等が被災民救援活動を実施するために必要な技術、能力等を有する職員の派遣、所管に属する物品の管理換その他の協力の要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において協力を行うものとする。

ウ 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、被災民救援活動の実施のため必要な協力を行うものとする。

5 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項

テロ対策特措法に基づく対応措置を総合的かつ効果的に推進するため、内閣官房を中心に、関係行政機関の緊密な連絡調整を図るものとする。