データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案」と武器輸出三原則等との関係についての内閣官房長官談話(福田康夫内閣官房長官)

[場所] 
[年月日] 2001年10月5日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

一 政府は、本年九月十一日に米国で発生したテロ攻撃が国際連合安全保障理事会決議第千三百六十八号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえ、九月十九日に小泉内閣総理大臣から本件テロに関連して措置をとる米軍等に対して支援活動を実施する目的で自衛隊を派遣するため所要の措置を早急に講ずること及び避難民の発生に応じ、自衛隊による人道支援の可能性を含め、避難民支援を行うことを表明した。これを受けて、本日、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案」を閣議決定し、我が国が国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会全体の取組に積極的かつ主体的に寄与するために必要な事項を定め、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することとした。

二 本法案には、自衛官が外国における協力支援活動等に際して「武器」を使用する場合に関する規定が置かれているなど、武器輸出三原則等における武器等の輸出が行われることを当然に想定するものである。また、本法案に基づき自衛隊等が当該テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努める諸外国の軍隊等に対し協力支援活動等を実施することが可能となるが、本法案の下では、「武器(弾薬を含む。)」の提供は実施しないこととしているものの、その他提供することとしている物品又は役務の一部には、武器輸出三原則等における武器等に当たるものが含まれることとなる可能性がある。政府としては、これまで、武器輸出については、武器輸出三原則等によって慎重に対処してきたところであるが、一に述べた本法案の趣旨にかんがみ、今回閣議決定された法案の下で行われる武器等の輸出については、武器輸出三原則等によらないこととする。この場合、

(一)本法案に基づき我が国が実施する対応措置は、当該テロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的達成に寄与する諸外国の活動のため、及び関連する国際連合決議又は国際連合等の要請に基づき人道的精神に基づいて、本法案の範囲に限って行われるものであること

(二)自衛官等が使用するために輸出する武器等については、自衛隊等により厳格に管理され、任務終了後我が国に持ち帰ることとしていること及び当該武器等の使用は、本法案等に定める要件を充足する場合に限定されること

(三)諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等の実施に際しての武器等の輸出についても、当該武器等の輸出に当たり、輸出先国又は提供先国政府等と我が国政府との間での国際約束等により、当該武器等の使用が国際連合憲章と両立するものでなければならないこと及び当該武器等が我が国政府の事前同意なく第三者に移転されないことを担保することを条件とすること

により、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよってたつ平和国家としての基本理念は確保されることとなる。

三 なお、政府としては、今後とも武器輸出三原則等に関しては、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念を維持していく考えである。