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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第4回日印エネルギー対話に係る日本国経済産業省とインド計画委員会との間の共同声明

[場所] ニュー・デリー
[年月日] 2010年4月30日
[出典] 経済産業省
[備考] 経済産業省仮訳
[全文]

 日本国経済産業省直嶋正行大臣とインド計画委員会モンテク・シン・アルワリア副委員長は、2010年4月30日、ニューデリーにおいて、日印間の閣僚級エネルギー政策対話の第4回会合を行った。

両大臣は2009年3月に日印エネルギー対話運営委員会及び省エネルギー、新エネルギー、石炭、電力の各ワーキンググループにおいて、日印双方の専門家による分野別の議論が進展したことを歓迎した。

また、両大臣は2009年9月にインドが国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)に正式に加盟したことに満足をもって言及し、省エネルギーの促進について二国間、多国間の協力が重要であることを確認した。

エネルギー対策が気候変動問題の解決にも貢献するとの認識の下、両大臣は、コペンハーゲン合意を歓迎した。両大臣は、成果が2010年にメキシコで開催予定の第16回締約国会議において採択されるよう、国連気候変動枠組条約の下での交渉において緊密に協力する決意を再確認した。

両大臣は、今回の会合において、共通の認識の具体化、及び環境・エネルギー分野における両国間の協力関係の構築のため、以下の(1)から(4)までの協力行うことを決定した。

(1)省エネルギー分野における協力

(i)両大臣は、第3回日印エネルギー対話の共同声明を踏まえ、地方省エネルギーセンタープロジェクトに関する議論の進展をレビューし、また、本プロジェクトが、インドにおける実務レベルでの省エネを推進するにあたっての重要性を再確認するとともに、電力省エネルギー効率局(BEE)、国家生産性評議会(NPC)及び新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の間におけるチェンナイの省エネセンター(REEC)設立のMOU署名を通じて、本プロジェクトを推進することを決定した。

現在の建設工事が終了し、研修用機器のセンターへの導入後、トレーナーの訓練や専門家の派遣等キャパシティビルディングが2010年末までに実施される。また、日本側は、具体的な提案を受けた上で、その他同様の取組に関しても、協力の可能性を検討することを表明した。

(ii)両大臣は、NEDOが実施中の商業規模のコークス乾式消火設備実証事業、ディーゼル発電設備燃料転換実証事業及び焼結クーラー排熱回収設備モデル事業の進捗を歓迎した。これらの事業実施により、年間約25万5千トンのCO2削減が見込まれる。これらの技術が大規模に普及すれば、温暖化対策に大きな貢献をするものと期待される。インド側は、Energy Efficiency ServiceLtd.(EESL)などのスキームを活用し、普及を図っていく。

(iii)両大臣は、NEDOによる、都市ビル建築へのヒートポンプ・蓄熱技術の適用可能性調査の進展を歓迎した。また、双方は当該技術を実証する本プロジェクトは有用であり、もしこの技術が都市地域に広く普及すればエネルギー利用の大きな削減につながることを認識した。また、これらの省エネルギー技術が省エネルギー推進のための包括的なビジネスモデルであるESCOとうまく協働していくことを期待する。

(iv)両大臣は、NEDOとBEEによるアジアESCO産業会議が1月、ニューデリーで開催されたことを歓迎。当該ESCO会議を通じて、アジア域内におけるESCOの普及が促進され、またインド市場への日本のESCO投資の更なる呼び込みにつながることを歓迎した。

(v)両大臣は、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)のフラッグシップ事業である。NEDOによるセメント産業及び鉄鋼分野における省エネ診断事業の実施を歓迎した。

(vi)インド側は、省エネルギー能力開発プログラムの一環として進展中の、(a)BEE及び地方政府に指定された省エネルギー機関からの研修生受入れ、(b)ESCOに関するインド省エネ政策関係者や関連企業を対象としたESCO研修、(c)インド中小企業における省エネルギーの小集団活動及びエネルギー管理マニュアル導入のための専門家派遣における日本側(省エネルギーセンター:ECCJ)の支援に感謝を表明し、本分野における日本のこれまでの協力はインドの「省エネ国家計画」に反映されたことに留意した。日本側は、受入研修・専門家派遣により引き続き本分野において協力する意向を表明した。

(vii)両大臣は、ECCJと石油資源節約研究協会(PCRA)との省エネ協力に関する覚書が延長されたことを歓迎した。本覚書の協力の下、専門家派遣及び受入研修を通じて産業分野における省エネ管理技術が移転され、さらに診断能力向上のための「繊維産業におけるエネルギー診断マニュアル作成プログラム」が始動した。本プログラム推進に向けて、インド側はPCRA及び関係産業団体による実施体制を確立し、日本側は引き続き専門家派遣及び受入研修を通じて協力することを確認した。

(viii)両大臣は、インドのエネルギー管理者育成を目的とした国際協力機構(JICA)の技術研修プログラムが極めて有用であることに満足の意を表明し、これらが引き続き重要な役割を果たすことを期待した。

(ix)インド側は、日印間の民間ベースでの技術移転やビジネスマッチングの機会増加を促進する観点から、日本貿易振興機構(JETRO)及び世界省エネルギー等ビジネス推進協議会による12月のインドエナジーテックEXPO及び2月のIETF国際工学技術展への参加を歓迎した。さらに、インド側は、インドが主催するデリー国際再生可能エネルギー会議展示会(DIREC)へのNEDOの出展を歓迎した。

(x)また、両大臣は、日本のODAローンプロジェクトであり、JICAからインド小規模産業開発銀行を通じて提供される「中小零細企業省エネルギープロジェクト」が、インド全土における省エネルギー活動を促進する金融手段に焦点を当てたJICAの技術訓練とも相まって、進展していることを歓迎した。

(2)電力・石炭分野での協力

(i)両大臣は、エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)において、日印両国が、2009年12月、「高効率で低排出な石炭技術に関する行動計画」を策定・完成したことを歓迎した。

(ii)インド国内での石炭の利用効率化と環境負荷低減のためのいくつかの技術移転の取り組みが進展している。両大臣は、インドの石炭の灰分を高効率な選炭により低減させる商業規模でのモデル事業について、NEDOと石炭省が基本協定書に署名し、施設の建設に向け工事が進展していることを歓迎した。両者は原料炭の選炭の分野において可能な協力についての議論を継続することを決定した。

(iii)日本側は、インドの石炭火力発電所の効率改善及び環境の改善を目的とした、専門家を派遣しての設備改修のための助言等の事業の実施に向けた事前調査を実施するとの決定を伝えた。両大臣は、石炭エネルギーセンター(JCOAL)とインド中央電力庁(CEA)がインドの石炭火力発電所の熱効率改善に係る当該調査に関する基本協定書に署名することを歓迎した。

(iv)両大臣は、クリーンコールテクノロジー(CCT)移転の研修が2001年度から継続されていること、2009年度までに総計92名のインドの研修生が日本に受け入れられたことを歓迎した。

(v)両大臣は、発電分野において、JICAによる火力発電技術の研修プログラムの進展、及びインド国営火力発電公社(NTPC)の火力発電所の運転効率向上のための調査の実施を歓迎した。

(vi)両大臣は、超臨界圧のボイラとタービン発電機の初の日印合弁の製造工場が近々稼働を開始することを歓迎すると共に、国際協力銀行(JBIC)から融資を受けた当該JVが、急拡大を続けるインドの電力需要とインドにおける発電技術の向上に大きく貢献するとの期待を表明した。

(vii)インド側は、日本が炭鉱保安に関する調査ミッションを本年2月、インドに派遣したことを歓迎した。インドにより提案された協力の分野は次のとおりである。(a)坑内通信システムの向上、(b)炭鉱ガス・火災の監視機器設置、(c)出水危険箇所の予知、(d)救護装置及び救護活動。

(viii)インド側は、インドで、今年中に、石炭火力発電所の低炭素化等の分野での日印協力をテーマとしたCCTセミナーを開催するとの日本側の提案を歓迎した。

(3)再生可能エネルギー分野における協力

(i)両大臣は、APPの再生可能エネルギー・分散型電源タスクフォースにおける活動の一環として、NEDOにより提案された太陽電池寿命評価技術に関する共同研究開発事業の進展を歓迎した。本事業は、同種複数の太陽光パネルを日本とインドに設置し、実負荷環境下での寿命評価を比較実施するもの。インド側の設備を設置し、実証を開始している。

(ii)両大臣はNEDOとインド工科大学がマイクログリッド、スマートグリッド技術導入による工業団地への安定電力供給システムの検討を共同事業として実施していることを歓迎した。

(iii)両大臣は、太陽光、スマートグリッド、スマート都市交通、水管理・リサイクル処理等の日本の環境システム技術、IT技術を活用し次世代エネルギーインフラを一体的に開発する「デリー・ムンバイ産業大動脈スマートコミュニティ構想」は、エネルギーの観点からも重要であることに言及した。両大臣は、このイニシアチブの下での進展を歓迎した。また、両大臣は、メガソーラーを活用したマイクログリッドの活用が同構想に基づくエネルギー協力の良い分野となり得ることに言及し、NEDOは、経済産業大臣の指示に基づき、実現可能性調査を実施する。

(iv)印側は、IEEJがインド政策関係者を対象とした新エネルギー研修を実施することを歓迎した。

(iv)印側は、IEEJがインド政策関係者を対象とした新エネルギー研修を実施することを歓迎した。

(4)石油・天然ガス分野における協力

(i)双方は、日本国経済産業省とインド石油天然ガス省との間で署名した共同声明、及びこれに基づき両国実施機関間において締結された6つの覚書の着実な実施を歓迎する。

(ii)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とONGCV ideshとの間で締結された覚書に基づき、インド及び第三国での探鉱協力に関する両機関間の会合が過去3回開催されるなど、両機関間の協力は着実に進展している。

(iii)JOGMECとインド炭化水素総局(DGH)との間で締結された覚書に基づき、メタンハイドレートに関する両機関間の第2回会合が東京にて開催され、両機関間の協力は着実に進展している。

(iv)日本国経済産業省とインド石油天然ガスとの間で締結された覚書に基づき、両国の備蓄実施機関であるJOGMECと石油産業開発委員会(OIDB)/インド石油戦略会社(ISPRL)とでニューデリーで石油備蓄技術セミナーが開催されるなど、両省間の協力は着実に進展している。

(v)両大臣は、IEEJと石油・天然ガス省石油計画分析機構(PPAC)が行った「原油価格変動によるアジア石油市場への影響及びアジアの石油価格メカニズムと石油備蓄整備動向等の現状と課題に関する研究」の結果を高く評価した。両大臣は、MOUの下での共同研究を含む協力活動が今後も進展し、アジアのエネルギー市場安定化に貢献することを期待する。

(vi)両大臣は、ECCJとPCRAとの間の覚え書きが延長され、これに基づき、専門家派遣等の協力が進展していることを歓迎した。

両大臣は、商業ベースでの二国間のエネルギー協力を拡大するため、両国の産業の間での協力を促進する必要性を認識した。この観点において、NEDOとTERIによる第3回日印エネルギーフォーラムが2010年2月にインドで成功裡に開催されたことに言及した。

両大臣は、2009年12月29日の両首脳による共同声明を踏まえ、原子力エネルギーが世界的なエネルギー需要の増大に対応するための安全かつ持続可能な、汚染のないエネルギー源として重要な役割を果たしうるという認識を改めて確認した。両大臣は、日印エネルギー対話の下に「原子力ワーキンググループ」を設置し、エネルギー・経済産業の観点から、各々の原子力エネルギー政策に関する見解と情報をやりとりすることを決定し、第1回原子力ワーキンググループが本エネルギー対話の直後に開催されることを歓迎した。

 両大臣は、日印エネルギー対話の枠組みの下での二国間協力は上記の活動に限定されるものではないことを強調し、ひき続き更なる深化を図る。両大臣は、第5回閣僚級会合を2011年の双方の望ましい時期に日本で開催することを決定した。

経済産業省

直嶋正行(経済産業大臣)

計画委員会

モンテク・シン・アルワリア(計画委員会副委員長)