データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるバンダラナイケ首相(スリ・ランカ)歓迎晩餐会における挨拶

[場所] 
[年月日] 1976年11月15日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,191−193頁.
[備考] 
[全文]

 バンダラナイケ首相閣下並びに御列席の皆様

 この度、スリ・ランカ共和国から、バンダラナイケ首相閣下御一行をお迎えし、今夕歓迎の晩餐会を開くことができましたことは、私の大きな喜びとし、かつ、光栄とするところであります。

 バンダラナイケ首相閣下は、傑出した政治家でおられた夫君故バンダラナイケ首相の遺志を継いで、一九六〇年、婦人として世界で最初の首相となられたことは、皆様御承知のとおりであります。この ように優れた婦人政治指導者である閣下をわが国にお招きすることは、わが国政府及び国民の長年の希望でありましたが、今回ようやくそれが実現できましたことは、特に喜ばしいかぎりであります。

 私は、ここに日本国政府及び国民を代表し、心から歓迎の意を表するものであります。

 閣下は、スリ・ラン力国内において、その国家建設のために日夜努力されているのみならず、さらに、国際舞台においても、従来から幅広くかつ精力的な活動を続けられております。本年八月にコロンボにおいて開催された第五回非同盟諸国首脳会議におきましては、貴国は、閣下の優れた指導力の下に、この会議を抽象的なイデオロギー論争から解きほぐし、時代の流れに沿った現実的な話し合いの場とするため建設的な役割を果たされましたが、この点特に私は閣下に深甚な敬意を払うものであります。

 美しい自然に恵まれ、「インド洋に輝く真珠」と形容されるスリ・ランカは、二千五百年に及ぶ古い歴史と文化を誇るアジアの仏教国として、また宝石の国として広く知られておりますが、「紅茶」といえば「セイロン」、「セイロン」といえば「紅茶」を直ぐ思い浮かべるほど、紅茶の国としても広くわが国民の間に親しまれております。

 貴国とわが国とは、長年にわたる交流をもち、伝統的に友好的かつ緊密な関係にあります。両国友好関係の歴史をふりかえってみますと、一九二一年には、今上天皇が皇太子でおられた頃貴国を訪問され、コロンボ市とキャンディー市において貴国民の暖かい歓迎を受けられました。また、その当時わが国から欧州へむかう船客は殆んどすべてコロンボに寄港し、貴国の美しい自然に旅愁をなぐさめられたと聞いております。一九五一年のサンフランシスコ講和会議において、貴国はわが国に対し極めて友好的かつ寛大な態度を示されましたが、そのことは、なおわが国民の心に深く刻みこまれております。その後、一九五二年の外交関係樹立以来、わが国とスリ・ランカとの関係は順調に進展し、現在、貿易、投資、経済技術協力、文化交流等諸分野において緊密な関係が維持されております。

 このような友好関係の背景としては、日本とスリ・ランカに多くの共通点のあることが指摘できます。すなわち、両国は、ともにアジアの国であり、ともに美しい自然に恵まれた島国であり、ともに仏教思想を基盤とした古くかつ豊かな文化をもっています。また両国は、天然資源にこそ恵まれておりませんが、国家の建設を進めるための勤勉で優れた人材を擁しております。更に、両国は、ともに平和を心から愛し、日夜国際社会における平和の確保のために努力を続けております。

 首相閣下、私は、この度の閣下の御来訪を契機として、このような共通点をもつ両国及び両国民が、いわゆる「友好と平和の絆」によって、更に一層固く結ばれ、両国の協力関係が益々発展することを確信するものであります。

 御列席の皆様、ここに、バンダラナイケ首相閣下の御健康を祝し、スリ・ランカ共和国の発展と繁栄、ならびに、わが国とスリ・ランカ共和国との末永き友好を祈って杯を上げたいと思います。