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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 2009年5月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国政府」という。)は、

 日本国とロシア連邦との間に存在する友好関係を強化することを希望し、

 原子力の平和的利用における日本国とロシア連邦との間の協力の拡大が友好関係及び相互理解の増進に寄与することを確信し、

 原子力の平和的利用の進展のために引き続き協力することを希望し、

 千九百九十一年四月十八日に作成された原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(以下「千九百九十一年の協定」という。)の下での原子力の平和的利用における日本国とロシア連邦との間の緊密な協力を考慮し、

 日本国及びロシア連邦の双方が千九百六十八年七月一日に作成された核兵器の不拡散に関する条約(以下「不拡散条約」という。)の当事国であることに留意し、

 日本国及びロシア連邦の双方が国際原子力機関の加盟国であることを認識し、

 原子力の平和的利用の進展のために効果的に協力することが両国にもたらす利益を認識し、

 原子力の平和的利用における日本国とロシア連邦との間の協力が行われる条件であって核不拡散に対する両締約国政府の誓約に適合するものを定めることを希望して、

 次のとおり協定した。

   第一条

 この協定の適用上、

(1)「認められた者」とは、日本国については日本国の管轄内にある個人又は団体及びロシア連邦についてはロシア連邦の管轄内にある法人であって、それぞれの政府により、この協定の下での協力(核物質、資材、設備及び技術を供給し、又は受領すること並びに役務を提供し、又は受領することを含む。)を行うことを認められたものをいう。ただし、両締約国政府を含まない。

(2)「核物質」とは、原料物質、特殊核分裂性物質及びプルトニウムのうちプルトニウム二三八の同位体濃度が八十パーセントを超えるものをいう。

  この(2)にいう「原料物質」とは、次の物質をいう。

 ウランの同位元素の天然の混合率から成るウラン

 同位元素ウラン二三五の劣化ウラン

 トリウム

 金属、合金、化合物又は高含有物の形状において前記のいずれかの物質を含有する物質

 その他の物質であって、千九百五十六年十月二十六日に作成された国際原子力機関憲章(以下「憲章」という。)第二十条に基づき国際原子力機関理事会が決定する含有率(その受入れを両締約国政府が書面により相互に通報するものに限る。)において前記の物質の一又は二以上を含有するもの

 憲章第二十条に基づき国際原子力機関理事会が決定する物質であって前記の物質以外のもの(その受入れを両締約国政府が書面により相互に通報するものに限る。)

この(2)にいう「特殊核分裂性物質」とは、次の物質をいい、原料物質を含まない。

 プルトニウム(プルトニウム二三八の同位体濃度が八十パーセントを超えるものを除く。)

 ウラン二三三

 同位元素ウラン二三三又は二三五の濃縮ウラン

 前記の物質の一又は二以上を含有する物質

 憲章第二十条に基づき国際原子力機関理事会が決定する物質であって前記の物質以外のもの(その受入れを両締約国政府が書面により相互に通報するものに限る。)

(3)「資材」とは、原子炉において使用する物質であってこの協定の附属書AのA部に掲げるものをいい、核物質を含まない。

(4)「設備」とは、原子力活動における使用のために特に設計し、又は製作した主要な機械、プラント若しくは器具又はこれらの主要な構成部分であって、この協定の附属書AのB部に掲げるものをいう。

(5)「技術」とは、核物質、資材又は設備の開発、生産又は使用のために必要とされる特定の情報をいう。ただし、そのような特定の情報であって公に利用可能であり、かつ、更に提供することが制限されていないもの並びにその他の特定の情報であって両締約国政府が書面によって特定し、及び合意したものを含まない。技術は、技術的資料の形式をとることができ、そのような形式には、青写真、計画書、図面、模型、数式、工学的な設計図及び仕様書、説明書並びに指示書であって、書面による又は他の媒体若しくは装置(ディスク、テープ、読取専用のメモリー等)に記録されたものを含む。また、技術は、技術援助の形式をとることができ、そのような形式には、指導、技能の養成、訓練、実用的な知識の提供及び諮問サービスを含む。

(6)(5)にいう「開発」とは、設計、設計の研究、設計の解析、設計の概念、試作体の組立て及び試験、試験生産に係る計画、設計用の資料、設計用の資料から製品化を検討する過程、外形的な設計、統合的な設計、配置計画等の生産前のすべての段階をいう。

(7)(5)及び(6)にいう「生産」とは、建設、生産工学、製造、統合、組立て(取付けを含む。)、検査、試験、品質保証等の核物質若しくは資材を生産し、又は設備を製作するためのすべての活動をいう。

(8)(5)にいう「使用」とは、運転、据付け(現場への据付けを含む。)、保守、点検、修理、整備及び補修をいう。

(9)「技術に基づく設備」とは、この協定に基づいて移転された技術を用いて製作されたものとして両締約国政府が合意する設備をいう。

(10)「回収され又は副産物として生産された核物質」とは、この協定に基づいて移転された核物質から得られた核物質、この協定に基づいて移転された資材又は設備を用いて行う一又は二以上の処理によって得られた核物質及びこの協定に基づいて移転された技術を用いて得られたものとして両締約国政府が合意する核物質をいう。

   第二条

1 両締約国政府は、日本国及びロシア連邦における原子力の平和的利用の進展のため、この協定及びそれぞれの国の法令に従い、次の方法によりこの協定の下での協力を行う。

(1)専門家を交換すること。

(2)両締約国政府の間、両締約国政府の認められた者の間又は一方の締約国政府の要請がある場合には当該一方の締約国政府と他方の締約国政府の認められた者との間の合意によって定める条件で、情報(原子力の安全に関するものを含むが、これに限定されない。)を交換すること。

(3)供給者と受領者との間の合意によって定める条件で、一方の締約国政府又はその認められた者から他方の締約国政府又はその認められた者に対し、核物質、資材、設備及び技術を供給すること。

(4)この協定の範囲内の事項について、提供者と受領者との間の合意によって定める条件で、一方の締約国政府又はその認められた者が役務を提供し、及び他方の締約国政府又はその認められた者がこれを受領すること。

2 1に規定する協力は、次の分野において行うことができる。

(1)ウラン資源の探鉱及び採掘

(2)軽水炉の設計、建設及び運転

(3)放射性廃棄物の処理及び管理

(4)原子力の安全(放射線防護及び環境の監視を含む。)

(5)放射性同位元素及び放射線の研究及び応用

(6)その他の分野であって両締約国政府の間の別個の書面による取極において合意するもの

3 1及び2の規定にかかわらず、ウランの濃縮、使用済核燃料の再処理及び資材(重水を含む。)の生産のための技術及び設備並びにプルトニウム(プルトニウム二三八の同位体濃度が八十パーセントを超えるものを除く。)は、この協定の下では移転されない。

   第三条

 前条に規定する両締約国政府の間の協力は、この協定及びそれぞれの国の法令に従うものとする。前条1(3)に掲げる方法による協力については、それぞれの締約国政府が国際原子力機関の保障措置の適用を受諾していることが必要とされるものとし、次の要件に従う。

(1)日本国政府又はその認められた者が受領者となる場合には、千九百九十八年十二月四日に作成された追加議定書により補足された千九百七十七年三月四日に作成された不拡散条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定(以下「日本国に関する保障措置協定」という。)が実施されていること。

(2)ロシア連邦政府又はその認められた者が受領者となる場合には、二千年三月二十二日に作成された追加議定書により補足された千九百八十五年二月二十一日に作成されたソヴィエト社会主義共和国連邦における保障措置の適用に関するソヴィエト社会主義共和国連邦と国際原子力機関との間の協定(以下「ロシア連邦に関する保障措置協定」という。)が実施されており、かつ、第五条の規定の実施を確保するため、ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している一又は二以上の施設が存在すること。

   第四条

1 この協定の下での協力は、平和的非爆発目的に限って行う。

2 この協定に基づいて移転された核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質は、いかなる核爆発装置のためにも、いかなる核爆発装置の研究又は開発のためにも、また、いかなる軍事的目的のためにも使用されない。

   第五条

 前条の規定に基づく義務の履行を確保するため、この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、

(1)日本国内においては、日本国に関する保障措置協定の適用を受ける。

(2)ロシア連邦内においては、

    原則として、ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設に置くものとする。このような施設は、この協定の附属書BのA部に掲げる。

    又は、ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置に関する補助的措置であって両締約国政府が書面により合意するものが適用されることを条件として、当該保障措置の適用上適格性を有するが国際原子力機関が選択していない施設に置くことができる。このような施設は、この協定の附属書BのB部に掲げる。

   第六条

 両締約国政府は、この協定の実施に当たり、千九百八十六年九月二十六日に採択された原子力事故の早期通報に関する条約、千九百八十六年九月二十六日に採択された原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約、千九百九十四年九月二十日に作成された原子力の安全に関する条約及び千九百九十七年九月五日に作成された使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約が遵守されることを確保する。

   第七条

1 この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質について、両締約国政府は、それぞれの採用した基準(少なくともこの協定の附属書Cに定める水準の防護を実現するものに限る。)に従って適切な防護の措置を維持する。

2 両締約国政府は、この協定の適用を受ける核物質の国際輸送について、千九百八十年三月三日に署名のために開放された核物質の防護に関する条約が遵守されることを確保する。

3 両締約国政府は、それぞれ、二千五年九月十四日に署名のために開放された核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約に従って適切な措置をとる。

   第八条

 この協定に基づいて移転された核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質は、供給締約国政府の書面による事前の同意が得られる場合を除くほか、受領締約国政府の国の管轄の外(供給締約国政府の国の管轄内を除く。)に移転され、又は再移転されない。

   第九条

 この協定の適用を受ける核物質は、供給締約国政府の書面による事前の同意を得ることなく、受領締約国政府の国の管轄内において、同位元素ウラン二三五の濃縮度が二十パーセント以上となるまで濃縮されず、又は再処理されない。

   第十条

 直接であると第三国を経由してであるとを問わず、日本国とロシア連邦との間において移転される核物質、資材、設備及び技術は、予定されるこれらの移転を供給締約国政府が受領締約国政府に対して書面により事前に通告した場合に限り、かつ、これらが受領締約国政府の国の管轄に入る時から、この協定の適用を受ける。供給締約国政府は、通告された核物質、資材、設備又は技術の移転に先立ち、移転される当該核物質、資材、設備又は技術がこの協定の適用を受けることとなること及び予定される受領者が受領締約国政府でない場合には当該受領者が受領締約国政府の認められた者であることの書面による確認を受領締約国政府から得る。

   第十一条

1 いずれの締約国政府も、商業上若しくは産業上の利益を追求するため、他方の締約国政府若しくはその認められた者の商業上若しくは産業上の利益を損なうため又は原子力の平和的利用の進展を妨げるためにこの協定の規定を利用してはならない。

2 転換、燃料加工、濃縮又は再処理の工程において他の核物質と混合されることにより、この協定の適用を受ける核物質の特定性が失われた場合又は失われたと認められる場合には、この協定の下での当該核物質の特定については、代替可能性の原則及び構成比率による比例の原則により行うことができるものとする。

   第十二条

 この協定の適用を受ける核物質、資材、設備及び技術は、次のいずれかの場合には、この協定の適用を受けないこととなるものとする。

(1)そのような核物質、資材又は設備がこの協定の関係する規定に従って受領締約国政府の国の管轄の外に移転された場合

(2)そのような核物質、資材、設備又は技術がこの協定の適用を受けないこととなることについて両締約国政府が合意する場合

(3)核物質について、国際原子力機関が、第三条に規定する関係する保障措置協定の保障措置の終了に係る規定に従い、当該核物質が消耗したこと、同機関の保障措置の適用が相当とされるいかなる原子力活動にも使用することができないような態様で希釈されたこと又は実際上回収不可能となったことを決定する場合

   第十三条

 日本国政府により秘密指定を受けている情報又はロシア連邦の法令に従って国家機密として指定されている情報は、この協定の下では交換されない。

   第十四条

1 この協定の解釈又は適用に関して問題が生じた場合には、両締約国政府は、いずれか一方の締約国政府の要請により、相互に協議を行う。

2 この協定の解釈又は適用から生ずる紛争が交渉、仲介、調停又は他の同様の手続によって解決されない場合には、当該紛争は、いずれか一方の締約国政府の要請により、この2の規定に従って選定される三人の仲裁裁判官によって構成される仲裁裁判所に付託される。各締約国政府は、一人の仲裁裁判官を指名し(自国民を指名することができる。)、指名された二人の仲裁裁判官は、裁判長となる第三国の国民である第三の仲裁裁判官を選任する。仲裁裁判の要請が行われてから三十日以内にいずれか一方の締約国政府が仲裁裁判官を指名しなかった場合には、いずれか一方の締約国政府は、国際司法裁判所長に対し、一人の仲裁裁判官を任命するよう要請することができる。第二の仲裁裁判官の指名又は任命が行われてから三十日以内に第三の仲裁裁判官が選任されなかった場合には、同様の手続が適用される。ただし、任命される第三の仲裁裁判官は、日本国又はロシア連邦の国民であってはならない。仲裁裁判には、仲裁裁判所の構成員の過半数が出席していなければならず、すべての決定には、過半数の仲裁裁判官の同意を必要とする。仲裁裁判の手続は、仲裁裁判所が定める。仲裁裁判所の決定は、両締約国政府を拘束する。

   第十五条

1 いずれか一方の締約国政府は、他方の締約国政府が次のいずれかに該当する場合には、この協定の下でのその後の協力の全部若しくは一部を停止し、又はこの協定を終了させ、並びにこの協定に基づいて移転された核物質、資材及び設備の返還を要求する権利を有する。

(1)第四条から第九条までのいずれかの規定又は前条に規定する仲裁裁判所の決定の遵守を確保しない場合

(2)第三条に規定する国際原子力機関との間の保障措置協定を終了させ、又はこれに対する重大な違反をする場合

2 ロシア連邦がこの協定に基づいて日本国から移転された核物質、資材、設備若しくは技術(直接移転されたものであるか第三国を経由して移転されたものであるかを問わない。)、技術に基づく設備又は回収され若しくは副産物として生産された核物質を用いて核爆発装置を爆発させる場合には、日本国政府は、1に規定する権利と同じ権利を有する。

3 日本国が核爆発装置を爆発させる場合には、ロシア連邦政府は、1に規定する権利と同じ権利を有する。

4 いずれか一方の締約国政府がこの協定の下での協力の全部若しくは一部を停止し、この協定を終了させ、又は1に規定する返還を要求する行動をとるに先立ち、両締約国政府は、他の適当な取極を行うことが必要となる場合のあることを考慮しつつ、是正措置をとることを目的として協議を行うものとし、適当な場合には、次の事項について慎重に検討する。

(1)当該行動の影響

(2)当該行動を検討することの原因となった事情が故意にもたらされたものであるか否か。

5 いずれか一方の締約国政府は、4に規定する協議の後適当な期間内に他方の締約国政府が是正措置をとらなかった場合に限り、この条の規定に基づく権利を行使するものとする。当該権利の行使に当たり、当該一方の締約国政府は、当該他方の締約国政府に対し、この協定の下での協力の全部若しくは一部を停止する日又はこの協定を終了させる日を書面により通告する。

6 この協定に基づいて移転された核物質、資材及び設備の返還を要求する権利をいずれか一方の締約国政府がこの条の規定に基づいて行使する場合には、当該一方の締約国政府は、それらの公正な市場価額について、他方の締約国政府又は関係者に対して補償を行う。

   第十六条

 両締約国政府は、この協定の下での協力に基づいて生じ、又は移転された知的財産及び技術の適切かつ効果的な保護を、日本国及びロシア連邦が当事国である関係する国際協定並びにそれぞれの国の法令に従って確保する。

   第十七条

 この協定の附属書は、この協定の不可分の一部を成す。この協定は、両締約国政府の書面による合意によって改正することができる。この協定の改正(この協定の附属書のみについての改正を除く。)は、各締約国政府により、当該改正に必要なそれぞれの国内手続に従って承認されるものとする。この協定の附属書のみについての改正は、両締約国政府の書面による合意のみを必要とする。

   第十八条

1 この協定は、両締約国政府がこの協定の効力発生に必要なそれぞれの国内手続を完了した旨を外交上の経路を通じて相互に通告した日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 この協定は、二十五年間効力を有するものとし、その後は、3の規定に従って終了する時まで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国政府も、第十五条5の規定の適用を妨げることなく、六箇月前に他方の締約国政府に対して書面による通告を与えることにより、最初の二十五年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。

4 千九百九十一年の協定は、この協定が効力を生ずる日に両締約国政府の間の関係において終了する。

5 この協定の下での協力の停止又はこの協定の終了の後においても、第一条、第四条から第九条まで、第十二条、第十四条及び第十五条の規定は、引き続き効力を有する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 二千九年五月十二日に東京で、ひとしく正文である日本語、ロシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

 日本国政府のために

  中曽根弘文

 ロシア連邦政府のために

  S・V・キリエンコ


   附属書A

  A部

1 重水素及び重水B部の1に規定する原子炉において使用する重水素、重水(酸化重水素)及び重水素原子と水素原子との比が一対五千を超える他の重水素化合物(いずれかの十二箇月の期間において重水素原子の量につき二百キログラムを超える量の供給を行う場合に限る。)

2 原子炉級黒鉛ほう素当量百万分の五の純度を超える純度及び一・五〇グラム毎立方センチメートルを超える密度を有する黒鉛であって、B部の1に規定する原子炉において使用するもの(いずれかの十二箇月の期間において三十メートル・トンを超える量の供給を行う場合に限る。)

  B部

1 原子炉 制御された自己維持的核分裂連鎖反応を維持する運転能力を有する原子炉(ゼロ出力炉を除く。ゼロ出力炉とは、設計上の最大プルトニウム生成量が年間百グラムを超えない炉をいう。)

2 原子炉容器 1に規定する原子炉の炉心及び8に規定する原子炉内装物を収納するために特に設計し、若しくは製作した金属容器又はその主要な工作部品

3 原子炉燃料交換機 1に規定する原子炉についての燃料の挿入又は取出しのために特に設計し、又は製作した操作用設備

4 原子炉制御棒及び原子炉制御設備 1に規定する原子炉における核分裂過程の制御のために特に設計し、若しくは製作した棒、その支持体若しくは懸架体、制御棒駆動機構又は制御棒案内管

5 原子炉圧力管 1に規定する原子炉の内部に燃料要素及び一次冷却材を五十気圧を超える運転圧力下において収容するために特に設計し、又は製作した管

6 ジルコニウム管 ジルコニウム金属若しくはジルコニウム合金の管又はこれらの管の集合体であって、1に規定する原子炉の内部において使用するために特に設計し、又は製作し、かつ、ハフニウムとジルコニウムとの重量比が一対五百未満のもの(いずれかの十二箇月の期間において五百キログラムを超える量の供給を行う場合に限る。)

7 一次冷却材ポンプ 1に規定する原子炉における一次冷却材の循環のために特に設計し、又は製作したポンプ

8 原子炉内装物 炉心支持柱、燃料チャネル、熱遮へい体、調節板、炉心格子板、拡散板等1に規定する原子炉の内部において使用するために特に設計し、又は製作した原子炉内装物

9 熱交換器 1に規定する原子炉の一次冷却材回路において使用するために特に設計し、又は製作した熱交換器(蒸気発生器)

10 中性子検出機器及び中性子計測機器 1に規定する原子炉の炉心内部の中性子束を測定するために特に設計し、又は製作した中性子検出機器及び中性子計測機器

11 原子炉燃料要素の加工プラント及び原子炉燃料要素の加工のために特に設計し、又は製作した設備

12 原子炉燃料要素の加工又はウラン同位元素の分離に使用するためのウラン及びプルトニウムの転換プラント並びに当該ウラン及びプルトニウムの転換のために特に設計し、又は製作した設備

   附属書B ロシア連邦における施設の一覧表

 A部 ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設

1 この協定に基づいてロシア連邦に移転された核物質、資材及び設備、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質が置かれる施設は、次のとおりとする。

  なし

2 この協定に基づいてロシア連邦に移転された技術が用いられる施設は、次のとおりとする。

  なし

 B部 ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上適格性を有するが国際原子力機関が選択していない施設

1 この協定に基づいてロシア連邦に移転された核物質、資材及び設備、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質が置かれる施設は、次のとおりとする。

  アンガルスク国際ウラン濃縮センター

2 この協定に基づいてロシア連邦に移転された技術が用いられる施設は、次のとおりとする。

  なし

   附属書C 防護の水準

第三群(付表の定義による。)

 使用及び貯蔵に当たっては、出入が規制されている区域内において行うこと。輸送に当たっては、特別の予防措置(荷送人、荷受人及び運送人の間の事前の取決め並びに国際輸送の場合にあっては供給国及び受領国それぞれの管轄権及び規制に服する者の間の事前の合意であって、輸送に係る責任の移転する日時、場所及び手続を明記したものを締結することを含む。)の下に行うこと。

第二群(付表の定義による。)

 使用及び貯蔵に当たっては、出入が規制されている防護区域(警備員又は電子装置により常時監視される区域であって、適切な管理の下にある限定された箇所においてのみ出入が可能な物理的障壁により囲い込まれたものをいう。)内において又は防護の水準がこれと同等の水準にある区域内において行うこと。

 輸送に当たっては、特別の予防措置(荷送人、荷受人及び運送人の間の事前の取決め並びに国際輸送の場合にあっては供給国及び受領国それぞれの管轄権及び規制に服する者の間の事前の合意であって、輸送に係る責任の移転する日時、場所及び手続を明記したものを締結することを含む。)の下に行うこと。

第一群(付表の定義による。)

 この群に属する核物質は、次に定める信頼性の高い方式により、許可なしに使用される危険から防護されるものとする。

 使用及び貯蔵に当たっては、高度に防護された区域(第二群に属する核物質について定める防護区域であって、さらに、信頼性につき確認を受けた者にのみ出入が許可され、かつ、適当な関係当局との緊密な連絡の下にある警備員により監視されるものをいう。)内において行うこと。この関連においてとられる具体的な措置は、攻撃、許可されない出入又は許可されない関係核物質の除去を探知し、及び防止することを、その目的とすべきものである。

 輸送に当たっては、第二群及び第三群に属する核物質の輸送について定める特別の予防措置の下において、さらに、護送者により常時監視され、及び適当な関係当局との緊密な連絡が確保される状況の下で行うこと。

 付表 核物質の区分

{表は省略}


(原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定第五条の実施に関する交換公文)

   (日本側書簡)

(訳文)

 書簡をもって啓上いたします。本大臣は、本日東京で署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定(以下「協定」という。)に言及するとともに、協定を締結するための交渉において到達した次の了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有します。

1 協定第五条に関し、両締約国政府は、協定の効果的な実施のため、協定の適用を受ける核物質、資材、設備及び技術の最新の在庫目録並びにロシア連邦政府については3(2)に規定する代替によって当該核物質と代わる核物質の最新の在庫目録を毎年交換することが確認される。

2 協定第五条に関し、それぞれの国の法令に従い、協定の適用を受けるすべての核物質を対象とする国内の核物質計量管理制度が確立されており、及びこれが維持されることが確認される。

3 協定第五条(2)に規定する補助的措置は、次のとおりであることが確認される。

(1)ロシア連邦政府は、日本国政府に対し、国際原子力機関による保障措置の適用について適格性を有する施設の一覧表及び保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設の一覧表を毎年提供する。

(2)核物質が協定の適用を受けることとなり、かつ、国際原子力機関による保障措置の適用上適格性を有するが国際原子力機関が選択していない施設(協定の附属書BのB部に掲げる施設)に置かれることとなる場合には、両締約国政府は、いずれか一方の締約国政府の要請に基づき、協議を通じて、かつ、当該核物質の移転に先立ち、双方が満足する措置(保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設にある同量の核物質であって核分裂性同位元素の含有量が同等以上のものによる代替を含む。)につき書面により合意する。

(3)ロシア連邦政府は、日本国政府及び国際原子力機関に対し、相互の取決めに従い、協定の適用を受ける核物質及びこれに代わる核物質の在庫、払出し及び受入れに関する報告書を施設ごとに一年単位で提供する。

(4)両締約国政府は、いずれか一方の締約国政府の要請に基づき、の規定に従って提供された報告書に関して協議し、及び当該報告書に関する問題を解決するために適切な措置をとる。

 本大臣は、更に、前記の了解がロシア連邦政府により受諾される場合には、この書簡及びその旨の閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなし、その合意が協定の効力発生の時に効力を生ずるものとすることを提案する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 二千九年五月十二日に東京で

    日本国外務大臣 中曽根弘文

国営公社「ロスアトム」

 社長S・V・キリエンコ閣下

   (ロシア側書簡)

(訳文)

 書簡をもって啓上いたします。本官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

  (日本側書簡)

 本官は、更に、ロシア連邦政府に代わって前記の了解を受諾することを確認するとともに、閣下の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成するものとみなし、その合意が協定の効力発生の時に効力を生ずるものとすることに同意する光栄を有します。

 本官は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 二千九年五月十二日に東京で

    国営公社「ロスアトム」社長 S・V・キリエンコ

日本国外務大臣 中曽根弘文閣下